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カルロの娘は、父の名と立場を知り、
相手の青年が――
かつて母エカテリーナが命を賭して守った領地の血であることを知る。
青年もまた、
彼女が「奪われなかった側」の血であることを理解する。
修道院の回廊。
あの時と同じ場所。
沈黙が、かつてよりも重い。
「……知ってしまいましたね」
先に言ったのは、彼女だった。
青年は頷く。
「それでも、
ここに来たいと思った」
彼女は驚かない。
同じ気持ちだったから。
⸻
恋の深化 ―― 逃げないという選択
「やめるべきだと、思いますか」
彼女が問う。
青年は少し考えてから答える。
「やめる理由は、たくさんある」
そして、はっきりと言う。
「でも、
やめたい理由は、一つもない」
その言葉に、
彼女は初めて、
胸の奥の恐怖を越える。
彼女は笑う。
それは、
母カテリーナが失ったはずのもの。
「……私もです」
二人は、
もう知らなかった頃には戻れない。
だからこそ、
自分で選ぶ。
⸻
本編・第九章
家という名の戦場
最終的対立
二人の関係は、すぐに露見する。
家同士の会議。
言葉は丁寧。
だが、その奥には刃がある。
「歴史を忘れるのか」
「血を軽んじるのか」
「この婚姻は、
新たな火種になる」
若者たちは、
発言を許されない。
代わりに、
沈黙していた大人たちが立ち上がる。
⸻
母と父の決断
最初に口を開いたのは、
**エカテリーナ(母)**だった。
「火種は、
私たちが作りました」
場が凍る。
「選ばせなかった。
奪い、守り、黙らせた」
彼女は、
息子と少女を見る。
「だから今度は、
奪わない」
次に、
カルロが続く。
「血を理由に止めるなら、
我々はまた同じことを繰り返す」
彼は、
かつて自分が選ばなかった言葉を口にする。
「この二人が争いを生むなら、
それは愛のせいではない。
我々が臆病だからだ」
⸻
越える決断
沈黙の末、
条件が提示される。
• 領地の統合ではなく、同盟
• 血による支配ではなく、相互承認
• 婚姻は、本人たちの意思を最優先
それは、
前の世代には不可能だった選択。
若者たちは、
初めて“当事者”として問われる。
「それでも進むか」
二人は、
視線を交わす。
迷いはない。
「はい」
⸻
結びへの予兆
鐘が鳴る。
あの日と同じ修道院で。
だが今度は、
誰かを呼び戻す音ではない。
過去を知った上で、
それでも選ぶ者のための鐘。
母は笑わなかった。
父も、救われなかった。
けれど――
この恋は、悲恋で終わらせない。
相手の青年が――
かつて母エカテリーナが命を賭して守った領地の血であることを知る。
青年もまた、
彼女が「奪われなかった側」の血であることを理解する。
修道院の回廊。
あの時と同じ場所。
沈黙が、かつてよりも重い。
「……知ってしまいましたね」
先に言ったのは、彼女だった。
青年は頷く。
「それでも、
ここに来たいと思った」
彼女は驚かない。
同じ気持ちだったから。
⸻
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青年は少し考えてから答える。
「やめる理由は、たくさんある」
そして、はっきりと言う。
「でも、
やめたい理由は、一つもない」
その言葉に、
彼女は初めて、
胸の奥の恐怖を越える。
彼女は笑う。
それは、
母カテリーナが失ったはずのもの。
「……私もです」
二人は、
もう知らなかった頃には戻れない。
だからこそ、
自分で選ぶ。
⸻
本編・第九章
家という名の戦場
最終的対立
二人の関係は、すぐに露見する。
家同士の会議。
言葉は丁寧。
だが、その奥には刃がある。
「歴史を忘れるのか」
「血を軽んじるのか」
「この婚姻は、
新たな火種になる」
若者たちは、
発言を許されない。
代わりに、
沈黙していた大人たちが立ち上がる。
⸻
母と父の決断
最初に口を開いたのは、
**エカテリーナ(母)**だった。
「火種は、
私たちが作りました」
場が凍る。
「選ばせなかった。
奪い、守り、黙らせた」
彼女は、
息子と少女を見る。
「だから今度は、
奪わない」
次に、
カルロが続く。
「血を理由に止めるなら、
我々はまた同じことを繰り返す」
彼は、
かつて自分が選ばなかった言葉を口にする。
「この二人が争いを生むなら、
それは愛のせいではない。
我々が臆病だからだ」
⸻
越える決断
沈黙の末、
条件が提示される。
• 領地の統合ではなく、同盟
• 血による支配ではなく、相互承認
• 婚姻は、本人たちの意思を最優先
それは、
前の世代には不可能だった選択。
若者たちは、
初めて“当事者”として問われる。
「それでも進むか」
二人は、
視線を交わす。
迷いはない。
「はい」
⸻
結びへの予兆
鐘が鳴る。
あの日と同じ修道院で。
だが今度は、
誰かを呼び戻す音ではない。
過去を知った上で、
それでも選ぶ者のための鐘。
母は笑わなかった。
父も、救われなかった。
けれど――
この恋は、悲恋で終わらせない。
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