ever green

neko12

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カルロの娘は、父の名と立場を知り、
相手の青年が――
かつて母エカテリーナが命を賭して守った領地の血であることを知る。

青年もまた、
彼女が「奪われなかった側」の血であることを理解する。

修道院の回廊。
あの時と同じ場所。

沈黙が、かつてよりも重い。

「……知ってしまいましたね」

先に言ったのは、彼女だった。

青年は頷く。

「それでも、
 ここに来たいと思った」

彼女は驚かない。
同じ気持ちだったから。



恋の深化 ―― 逃げないという選択

「やめるべきだと、思いますか」

彼女が問う。

青年は少し考えてから答える。

「やめる理由は、たくさんある」

そして、はっきりと言う。

「でも、
 やめたい理由は、一つもない」

その言葉に、
彼女は初めて、
胸の奥の恐怖を越える。

彼女は笑う。
それは、
母カテリーナが失ったはずのもの。

「……私もです」

二人は、
もう知らなかった頃には戻れない。

だからこそ、
自分で選ぶ。



本編・第九章

家という名の戦場

最終的対立

二人の関係は、すぐに露見する。

家同士の会議。
言葉は丁寧。
だが、その奥には刃がある。

「歴史を忘れるのか」

「血を軽んじるのか」

「この婚姻は、
 新たな火種になる」

若者たちは、
発言を許されない。

代わりに、
沈黙していた大人たちが立ち上がる。



母と父の決断

最初に口を開いたのは、
**エカテリーナ(母)**だった。

「火種は、
 私たちが作りました」

場が凍る。

「選ばせなかった。
 奪い、守り、黙らせた」

彼女は、
息子と少女を見る。

「だから今度は、
 奪わない」

次に、
カルロが続く。

「血を理由に止めるなら、
 我々はまた同じことを繰り返す」

彼は、
かつて自分が選ばなかった言葉を口にする。

「この二人が争いを生むなら、
 それは愛のせいではない。
 我々が臆病だからだ」



越える決断

沈黙の末、
条件が提示される。
• 領地の統合ではなく、同盟
• 血による支配ではなく、相互承認
• 婚姻は、本人たちの意思を最優先

それは、
前の世代には不可能だった選択。

若者たちは、
初めて“当事者”として問われる。

「それでも進むか」

二人は、
視線を交わす。

迷いはない。

「はい」



結びへの予兆

鐘が鳴る。

あの日と同じ修道院で。

だが今度は、
誰かを呼び戻す音ではない。

過去を知った上で、
それでも選ぶ者のための鐘。

母は笑わなかった。
父も、救われなかった。

けれど――
この恋は、悲恋で終わらせない。
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