50 / 56
49、コレは羞恥プレイなのデスカ?!
しおりを挟む熱くて幸せな夜が明け、若干……かなりドキドキしながら黒瀬家に戻ると、黒瀬家の面々がダイニングテーブルに向かって勢揃いしていた。
「おお、帰ったか。早く席に着くがいい」
本当はホテルで遅めの朝食を……と思っていたのだけれど、朝になって琴子から透に『朝食は家に帰って来て食べるように』とメールが届いていたのに気付き、慌てて身支度を整え帰って来たのだ。
行きは振袖。帰りは新品のワンピース。
ううっ、気まずい事この上ない。
「ワオ、豪勢ですネ!」
テーブルには尾頭付きの鯛にお赤飯、ハマグリの味噌汁に野菜の煮物。紅白のなます漬けまである。
昨日は結納の後ですぐに出て来てしまったから、その代わりに今から祝い膳を……という事なのかも知れない。
大事な息子が婚約者を迎えたと思ったら、今日の午後にはニューヨークに行ってしまうのだ。
家族で募る話もあっただろうに……。
色欲に走ってしまった己を振り返り、なんだか申し訳なく思う。
「おっ、朝から赤飯って、珍しいな」
言いながら2人で並んで席に着くと、サキが目の前にコトリと煎茶を置きながら、フフッと含み笑いをした。
「ふふふっ、お祝いで御座いますよ」
ーーやはりっ!
「透様が朝帰りとは、成長されたもので御座いますね。 サキは感無量で御座いますよ」
エプロンの裾で目尻を拭いながら、キッチンへと戻って行く。
ーーんっ?
隣に座る透と顔を見合わせる。
「本当、あの朴念仁だった透が朝帰り出来るようになるなんてねぇ~。これはお祝いしなきゃってサキさんと話し合ってね」
「母さん?!」
「よし、男になったな、透」
「父さん!」
「ふむふむ、仲良きことは美しきかな」
「祖父さんまで?!」
ーーそっちのお祝いっ?!
腕を組みながらフムフムと頷いている定治を見るにあたって、コレはもう駄目だと声が出た。
「皆様、お許しを~!」
ーーコレは相当レベルの高い羞恥プレイ!!!
膝に手を置き項垂れると、一斉に家人の優しい眼差しが注がれる。
「ヨーコさん、恥ずかしがる事は無いのよ。あなたは既に黒瀬家の一員になったも同然。向こうでも透をよろしくお願いしますね」
「ヨーコさん、私たちは嬉しいんだよ。型にはまった行動しかせずに、自己主張を一切して来なかった透が、30歳を前にやんちゃ坊主になりおった。遅めの反抗期だな」
人間は反抗期を迎えて漸く一人前だ……と豪快に笑う定治を見て、やはり経済界の大物は、器も考え方も人一倍なのだと実感した。
気まずいながらも暖かい気持ちで鯛の身をほぐしていると、「あっ、そう言えば……」と透が口を開く。
「サキさん、振袖はクリーニングに出してあるから、家に届いたらニューヨークに送ってくれるかな。 向こうでも着る機会があるだろうから」
ーーなっ、何を言う!
「あらあら、まあまあ……」
キッチンの棚の向こうからヒョッコリ顔を出したサキさんとバッチリ目が合った。
「……承知致しましたよ。オホホホッ」
ーー羞恥プレイ第二弾! もう恥ずか死ぬしかない! 今度こそ切腹デス!
「そうだな、あっちはパーティーの機会も多い。 アメリカ人相手には着物を着て行った方が会話に花が咲くだろう」
「うん。綺麗なヨーコを見せびらかしたいんだ。絶対に触れさせはしないけどね」
「何を言っておる。向こうじゃ挨拶はハグが基本だろうに」
「そんな事させるかよっ! 指一本たりとも触らせるわけないだろ」
定治と透の会話に、お茶を注ぎに来たサキと琴子が目を合わせる。
「あらまあ、本当にゾッコンね」
「そうで御座いますね。本当に仲睦まじくて……」
2人から揃って生暖かい視線を向けられ、いたたまれなくなった。
「私……切腹して参りマス!」
テーブルに両手をついてガタン! と立ち上がると、透が箸をポロリと手から滑り落として、ヨーコの腕に取り縋った。
「ヨーコ、どうしたの?! お赤飯が苦手だった? ハマグリか? ハマグリなのか?!」
その姿を見て、黒瀬家の皆が、一斉に笑った。
この豪快で突拍子もなくて、厳しくも暖かい黒瀬家の一員に、もうすぐ自分もなるのだ……。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
清貧秘書はガラスの靴をぶん投げる
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「お前、頬を叩いた詫びに婚約者になれ」
上司で社長の彪夏と秘書の清子はお似合いのふたりだと社内でも評判。
御曹司でイケメンの彪夏は女子の憧れの的。
清子はどこぞのご令嬢と噂され、男女問わず視線を集めていた。
……しかし。
清子には誰もが知らない、秘密があったのです――。
それは。
大家族のド貧乏!
上は高校生、下は生まれたばかりの五人弟妹。
おっとりして頼りにならない義母。
そして父は常に行方不明。
そんな家族を支えるべく、奮闘している清子ですが。
とうとう、彪夏に貧乏がバレたまではよかったけれど。
子持ちと間違われてついひっぱたいてしまい、償いに婚約者のフリをする羽目に。
しかも貧乏バラすと言われたら断れない。
どうなる、清子!?
河守清子
かわもりさやこ 25歳
LCCチェリーエアライン 社長付秘書
清楚なお嬢様風な見た目
会社でもそんな感じで振る舞っている
努力家で頑張り屋
自分がしっかりしないといけないと常に気を張っている
甘えベタ
×
御子神彪夏
みこがみひゅうが 33歳
LCCチェリーエアライン 社長
日本二大航空会社桜花航空社長の息子
軽くパーマをかけた掻き上げビジネスショート
黒メタルツーポイント眼鏡
細身のイケメン
物腰が柔らかく好青年
実際は俺様
気に入った人間はとにかくかまい倒す
清子はいつまで、貧乏を隠し通せるのか!?
※河守家※
父 祥平 放浪の画家。ほぼ家にいない
母 真由 のんびり屋
長男 健太(高一・16歳)服作りが趣味
次男 巧(高一・15歳)弁護士になるのが目標
三男 真(小五・10歳)サッカー少年
四男 望(保育園年中・5歳)飛行機大好き
次女 美妃(保育園児・五ヶ月)未知数
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる