煉獄の歌 

文月 沙織

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「は、はなせ!」
 敬は死にもの狂いでもがいたが、二人の黒服はこういった荒事に慣れているようで、武道や格闘技の経験もあるらしく、驚くほどの剛力で敬の四肢をしっかりと抑えこんでしまう。
「は、はなせ! はなせよ! 下種ども!」
 むしろ、敬があらがえばあらがうほどに、薄い筋肉が蠱惑こわく的にうねり、観客たちの欲望を煽っていくようで、広い室内が熱っぽくなっていく。
「可愛いですね。まだ無垢なのでしょう」
 事実は違うが、だが肉体はある程度慣らされていても、敬の心はまだまだ無垢だった。
 この異常な状況を受け入れられず、命がけで逃れようとするさまは、まさしく罠にかかった狼の仔のようで、残忍な男たちの情欲を否が応にも煽る。
 勿体ぶった司会者の手が、ゆっくりと、敬の身体を守る最後の布きれをひっぱる。
「や、やめろ!」
 処女のように真っ青になったり、赤くなったりして叫ぶ敬は、高級酒を楽しむ客たちにとっていいさかなだった。
「どれどれ。ワンちゃんの身体はどうなっているのかな?」
「い、いやだ! は、なせよ!」
 淫猥で残忍で下劣な見世物は、生贄の声を無視してくりひろげられていく。
 男の手が、下着を引っ張っていく。敬は頬が熱くなるのを自覚した。
「あっ! ああ!」
 裸に剝かれ、女のように悲鳴をあげてしまう自分を敬は内心恥じたが、本能的な羞恥はどうしょうもない。
(くそ、くそ、くそ!)
 男たちの失笑が敬の神経を引っかく。
 司会者の手によって敬の全てがあらわにされた。
「ご覧ください、皆様。芸術品のような美しき裸体を!」
 敬は壇上で、まるではりつけにされるように、二人の男たちによって両手を広げる形で立たされた。
 身体を折って身を隠そうにも、かなわず、あますところなく観客たちの目に晒されてしまう。
 敬は、刃物のような視線の集中攻撃に神経がずたずたにされていくのを感じる。
 いたたまれなさに、つい脚をすくめてしまうと、女のように内股の形になり、それがいっそう悔しく、羞恥の痛みがたかぶる。
「どうです? 色といい、形といい、綺麗なものです。初々しいですねぇ」
 まばらな嘲笑が客席から響く。
「うっ!」
 敬は思わず身をよじった。
 司会者の持つ鞭の先が、敬の一番繊細な箇所を突いたのだ。
 屈辱と恥辱に気が遠くなりそうになった。
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