黄金郷の夢

文月 沙織

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調教開始 三

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 手のなかの乳首を見つめたまま、王は空いている左手を無造作に振り上げる。すると、側にいた宦官二人がそれぞれアベルの両手をねじりあげる。
「な、なにをする! うわ! よせ、はなせ!」
 天井から鉄の鎖の輪が下がってきた。広間の天井にそんな仕掛けがあることに驚愕する暇もなく、アベルは両手の枷をあらたな鎖の輪につなげられ、動きを封じられてしまう。
 ギリギリギリ――という、天井の滑車が不気味な音をたてると同時に、アベルの両手は吊りあげられ、膝立ちの姿勢をとらされる。
「アルベニス伯爵、いや、妻よ、正直に言え。ここを男に触らせたことがあるか?」
 人差し指で右の乳首をつつきながら王は無表情で問う。アベルは悔しさに身をよじったが、鎖はびくともせず、いたずらに手首を痛めつけるだけだった。
「うう……!」
「訊いておるのじゃ。誰かに触らせたか?」
「な、ない。そんなことは……一度もない」
「ふうむ……。では、女には?」
 背後で成り行きを見守っている客たちの下卑た目を痛いほどに背に感じながら、アベルは答えをしぼりだした。
「な、ない」
「……女に身体を触らせたことはないのか?」
 アベルは唇を噛みしめてから、答えを吐きだした。
「……一度もない!」
「ほう」
 軽いざわめき、感嘆の吐息、嘲笑。アベルは目を閉じてこの苦悶と屈辱の嵐が止むのをひたすら待つしかない。
「ふうむ……。まずは、ここだ」
「ひっ!」
 痛いほどに、今度は左胸の先端を摘ままれ、アベルは短い悲鳴をあげていた。
「今宵はここを徹底的に鍛えてやろうに。そして、つぎは、」
「うわぁ!」
 客たちがどよめく。
 下帯をまくりあげられて、アベルは叫ばずにいられない。
「は、はなせ!」
「くくくく。ここを、そうじゃな……、三日ぐらいかけて鍛えてやろうに」
 固い指が、てのひらが臀部をまさぐっているのだ。はだけられた白い秘部は、背後の客たちの目にも晒されている。羞恥のあまり、無意識に、アベルはこの辱しめを与えている張本人の胸に顔をうずめてしまった。
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