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四
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目の前の、まだ女になり切れていないような子どもは、ディオメデスにはなんの関心も欲望も引きおこさない。それどころか、こんな子ども相手に欲情するメロペに内心うんざりした。
(もっとも俺も他人のことは言えないがな)
これから起こることを想像して、やっとディオメデスの身体は熱さを取りもどす。一刻もはやくリィウスの待つ室に向かいたい。
(そうだ。リィウスが俺を待っているのだ)
勿論、リィウスはまだ誰が自分を買うかも知らされず、ただ怯えながら、新婚初夜に夫をむかえる新妻の心境で未知の客を待っているのだろう。そんなリィウスを想像するとディオメデスははげしく興奮した。
(待っていろ! リィウス、今俺が行くぞ。俺がおまえの最初の客、最初の男になってやる)
高い、安いと言い合っているメロペとタルペイアに冷たい目を向けていたディオメデスは、しびれを切らした。
「おい、後にしろ。それよりも、早く室に案内してくれないか?」
「あら、まぁ、お急ぎで?」
「ああ」 ぶっきらぼうに告げた。
初体験をむかえる少年を見るようなタルペイアの目が気に入らない。いかなる状況であれ、ディオメデスは自分があなどられるのは我慢できない。いくら、今、焦って急いでいたとしても。
「そうだな。それはまた後の楽しみにしよう」
メロペもこれから始まることを想像して欲望に目を濁らせたようだ。
「それでは……お目当ての室にご案内しましょうか」
タルペイアが孔雀の羽でつくった扇で口元をかくすが、笑っているのは明らかだ。
「こちらへ」
細長い娼館の廊下を進みながら、タルペイアはすこし真面目な顔を見せた。
「リィウス相手に三人で遊ぶのは、今日はまだ少し早いかと思いますので、ディオメデス様一人、ということにしては? なんといっても今宵がはじめてなんですし」
「おい、今更、それは困るぞ!」
叫んだのは勿論メロペで、アウルスはむっつりした顔のままだ。まだ迷いがあるのだろう。それほど嫌なら来なければいいではないか、とディオメデスは嗜虐的な気分で笑った。
(もっとも俺も他人のことは言えないがな)
これから起こることを想像して、やっとディオメデスの身体は熱さを取りもどす。一刻もはやくリィウスの待つ室に向かいたい。
(そうだ。リィウスが俺を待っているのだ)
勿論、リィウスはまだ誰が自分を買うかも知らされず、ただ怯えながら、新婚初夜に夫をむかえる新妻の心境で未知の客を待っているのだろう。そんなリィウスを想像するとディオメデスははげしく興奮した。
(待っていろ! リィウス、今俺が行くぞ。俺がおまえの最初の客、最初の男になってやる)
高い、安いと言い合っているメロペとタルペイアに冷たい目を向けていたディオメデスは、しびれを切らした。
「おい、後にしろ。それよりも、早く室に案内してくれないか?」
「あら、まぁ、お急ぎで?」
「ああ」 ぶっきらぼうに告げた。
初体験をむかえる少年を見るようなタルペイアの目が気に入らない。いかなる状況であれ、ディオメデスは自分があなどられるのは我慢できない。いくら、今、焦って急いでいたとしても。
「そうだな。それはまた後の楽しみにしよう」
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「それでは……お目当ての室にご案内しましょうか」
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