燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 くじけた心や、完全にくだけそうになった一歩手前の自尊心を揺さぶったのか。
「ち、ちがう!」
「こら……」
 ディオメデスは苦笑した。
 完全に不利なこの状況で、尚も自分にあらがおうという膝の上の愚かで可憐な男娼が愛しくてならない。そう、ディオメデスはリィウスを愛しい、と思っているのだ。だが、そのことに当人は気づいていなかった。
「は、放せ!」
「おい」
 無我夢中で抗ってくる相手を強く抱きしめ、抑え込んだ。まったく油断ならない。
 逃げることは許さない。すでに、許せないところまできているのだ。
「はなせ!」
「ここまでして逃がすか」
「ああ、いや!」
 ぐっ、と腕の内に抑えこんだ相手を、さらに深く穿うがつようにすると、相手は無念の悲鳴をあげた。
「はぁぁぁぁぁっ……」
 すでに限界寸前まできていたのは二人とも同じだ。
 ディオメデスはおのれの動きに合わせて、リィウスのまだ初心な象徴に右手で愛撫をほどこす。
「はぁっ、ああっ、あああっ」
 死にものぐるいでリィウスの身体がしなる。それをまた力をこめて抑えこみながら、ディオメデスはおのれの腰にいっそう力を入れる。
「いいか? いくぞ」
「いや、いや! いやぁぁぁぁ!」
 女のように悲しい悲鳴をあげて、リィウスが首を横にふる。いじらしい、という想いと欲しい、という想いにディオメデスは発火しそうだった。
「駄目だ。いくぞ」
 これ以上は到底もたない。
「あああああ!」
 リィウスが絶望的な声をはなった瞬間、ディオメデスはそのうなじに顔をうずめていた。
 甘い匂いに酔いそうになった。


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