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光なき朝 一

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 だるく熱っぽい身体をもてあまし、リィウスはどうにか上半身を起こした。
「水、飲む?」
 コリンナの気づかわしげな声にうなずく。
「初めての仕事って、辛いね……」
 杯半分ほどの水を飲み干したころを見計らって、そんな声が耳に入ってくる。大人びた口調に苦笑しつつも、もしかしたら彼女の方が自分より大人なのかと思いつつ、リィウスは息を吐く。
「ああ……。これほどとは思わなかった」
 初めての勤め、というか、初めて身体の交わりを終えて、リィウスは翌日熱を出してしまった。
 無理もない。ディオメデスは一度では許してくれず、そのあともどれだけリィウスが泣いて嫌がっても、行為を強いられた。
 覚悟して選んだ仕事だが、まさか初めての客がかつての学友だったとは。しかもお互いに競争意識を燃やし、嫌いあっていた相手だけに、あまりにも衝撃で、肉体的には勿論、精神的にもかなりこたえた。
「三人の人と……だったの?」
 それが気になるのだろう。コリンナの翡翠色の瞳が暗い。
「いや……」
 リィウスはふたたび息を吐く。
 リィウスもあのとき、ディオメデスが満足すれば他の二人の相手をさせられるのかと恐れたが、幸い、といっていいのかどうか、ディオメデスはリィウスをはなすことはなく、夜明けまでかかって凌辱され、二人の相手をすることはなかった。メロペの方は、未練がましくリィウスを欲していたが、ディオメデスが許さなかったのだ。
 だが、自分は男娼だ。
 この先、求められれば、メロペやアウルスにも身体を開かねばならなくなるのだろう。
「お兄さん……、リィウス、泣かないで」
 言われてはじめてリィウスは自分が頬を涙で濡らしていることに気づいた。自分を見上げるコリンナの瞳も濡れている。
 コリンナの小さな手が自分の手を取る。
「あ、ああ、すまない、つい」
 年下の少女にいたわられている自分が恥ずかしくもあるが、コリンナの手は暖かく、それが今のリィウスにとっては唯一の慰めだった。
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