燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 サラミスの白い肌は全体にうっすら桃色に染めあげられている。華奢に見えた身体だが、ほどよく肉はついており、胸も尻も豊かで、全身が緋色真珠のように輝いている。
 かつて、この柘榴荘に来たときリィウスを驚かせたヴィーナスの丘もあらわになり、リィウスはふたたび顔を伏せた。
「サラミスのやり方をよく見ているがいいわ」
 出来の悪い生徒を叱咤する女教師のように、タルペイアがリィウスに命じる。リィウスは頬が熱くなるのを感じながら伏せた顔をもどす。
 見たくない。見るのが恐ろしい。だが、見なければならない。自分の代わりに拷問台に向かう娘の後ろ姿は、リィウスには眩しい。
 アスクラは慣れているのか、指示されずとも壁際の箪笥を開けた。このころの箪笥は、衣類ではなく什器じゅうきや小道具をしまうためにあり、アスクラは中から何やら小瓶のようなものを取り出した。
 香油が入っていたようで、ほのかな微香がリィウスのところまで漂ってくる。リィウスが息をつめて見守るなか、アスクラはその液体を、馬の突起物にしたたらせた。
 別の細身の宦官が用意した踏み台に、ゆったりとした動作でサラミスが足をかける。
「補助をしてやるといいわ」
 アスクラと向かいあうように、細身の奴隷宦官が、馬の反対側に行き、二人でサラミスの胴をささえてやる。
「ああ……」
 ゆっくりと、ゆっくりと宦官たちはサラミスの白い肉体を馬の背に置く。
 香油の力を借りずとも、すでに、サラミスは潤っていたようだ。
 一瞬、金色の眉をしかめただけで、つぎには甘い吐息を唇から放つ。
 白い肉が、黒水晶の器物を呑み込んでいく。
「ああ……」
 リィウスは目を逸らしたいのをこらえて、サラミスの信じられないようななまめかしい姿態を凝視した。
「あっ……! うっ、うう……ん」
「本当に、この娘は好きね」
 タルペイアが呆れた声をはなつ。
「娘たちのなかには嫌がって泣く者もいるのだけれど、このサラミスは、喜んでやっているのよ」
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