燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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十一

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「ゆっくりと息を吐け……」
 暴走していた自分を、すんでのところでかろうじて抑えて、ディオメデスは低く命じた。
 壊してはいけない。なるべく苦痛を減らして、快楽だけをあたえてやりたかった。
 その想いは、今まで抱いた女性に対して礼儀的にしめした配慮とはまったく違う感情だった。金でもてあそんだ妓女妓童ぎじょぎどうや娼婦男娼に対しても、特に痛めつけたいと思ったこともなかったが、心から優しくしてやりたいと望んだことは一度もなかった。
 欲望のはけ口にするなら、なるべく美しい器であればよく、美しい器であるならば、傷をつければ持ち主が怒るだろうし、後でふっかけられれば面倒だから、という程度の想いで相手にしてきたのだ。
 だが、腕のなかで燃える麗人への想いは、これまでの性の相手にたいして抱いた気持ちとは、まったく違っていた。
 今、ディオメデスは、初めて、床を共にする相手を心からよろこばせ、優しくしてやりたいと思っていた。
「動くなよ。しっかりと俺につかまっていろ」
「ああ……!」
 リィウスは素直にディオメデスの首に手をまわしてきた。
「入れるぞ」
「うう……」
 太腿ふとももを下から抱きあげるような形で支え、おのれの分身の上にリィウスの身体を落とす。
「はっ……! あっ、ああああ!」
 ゆっくりと手をはなすと、自重によって、リィウス身体が下がり、潤んでいた蕾が、いともたやすく肉のさおを受け入れていく。
「はぁっ! あっ、ああっ、ああっ、だ、駄目、駄目だ、ディオメデス、やめ、やめて!」
 名前を呼ばれて、いっそうディオメデスは興奮した。
 昨夜、命なき青銅の馬を相手に悶えたときよりも、感じているのだと思いたい。
 あのときリィウスがあれほどに声をあげたのは、羞恥と屈辱の痛みが、はげしく官能を刺激したからだ。今リィウスの身体を熱くさせているのは、まぎれもなく命と熱を持ったディオメデスの若い肉体と激しい情熱だ。
「ああ! ディオメデス、どうしよう! む、無理だ! ああ!」
 無我夢中になっているようで、リィウスは細い腕をディオメデスの背に伸ばし、下肢への責めから逃れようともがいている。そんなことをしたら、いっそうディオメデスの情欲の火を激しくさせることに気づいていない。
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