燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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十二

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(賢いはずなのに、こんなときは本当に子どものようだな)
 内心苦笑しながらも、相手の幼稚な仕草や反応にますます欲を引き出され、完全に後戻りできないところまでディオメデスは来ていた。たんに、身体だけではなく、心も、もはや後戻りできなくなっていた。
「いい子だ。な? 俺のに……こすりつけるようにしてみろ」
 腕のなかで発火するのではないかと思うほどに、これ以上ないほどにリィウスの頬が赤くなる。昨夜、無理やりあたえられた以上の羞恥に身を焦がしていることがディオメデスは妙にうれしかった。
「む、無理だ! そ、そんなこと……! そんなこと、出来ない……」
 最後の言葉は消え入るようにねやに響く。もし誰かが、この会話や、甘く溶けていくようなリィウスの声を聞いたのならば、相愛の恋人同士の睦言むつごとととったろう。
 ディオメデスは声を出して笑っていた。
「何を言っている? 初めての夜のときも、したではないか? あれは可愛かったぞ」
 火を吹きそうなほどに赤くなった顔は、汗と涙に濡れて、ほんのり輝いている。
「あ、あれは……あのときは、あれは……、ちがう」
「なにがちがうのだ? ほら、やってみろ」
 ディオメデスは、一途なほどに性悪になっていた。自分でもへそ曲がりな性分であることは承知しているが、そんなひねくれた一面がまた出てきた。 
 大人になれない悪童は、本能のままに相手を苛めぬかねば気がすまない。今まで受けてきた教育や、貴族の子弟としてまがりなりにも習得してきた教養など、すべて忘れていた。
「ほら、やってみろ」
 囁くように命じると、相手は涙目になって自分を見上げる。
「うう……無理だ。で、できない……」
 いや、いや、と首を横にふる仕草もあどけなくいじらしく、否が応にもディオメデスの嗜虐心をあおる。
「無理なものか。ほら、」
 太腿をせかすように下から軽くたたくと、可哀想に怜悧な貴公子は啜り泣いた。今のリィウスは知的な秀才でも完璧な貴族の子弟でもなく、ディオメデスの愛技に心身をとろかされつつある晩生おくてな男娼だった。
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