燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

文字の大きさ
170 / 360

しおりを挟む
(これだけ恵まれた立場なのに、なぜ、それがわからないのだろう)
 ディオメデスは、リィウスとちがって、望めばこれからのローマの国政にかかわり、発展に尽力できるのだ。
(ローマをささえることができるというのに……)
 ローマ。この世界最大の文明国の都民として、国政にたずさわれるほどの至福があるだろうか。
 リィウスの願いは、この帝都の一臣民としてローマの繁栄と幸福に貢献することだった。
 家運がかたむくことなく、貴族の子弟として何不自由なく順調に育っていたなら、かならずや、一命を賭す覚悟で、文字どおり命がけでローマ発展のために尽くしたろう。それが、ローマの特権階級に生まれた男子の本命だと信じていた。
 それなのに、ディオメデスはせっかく生まれながらにそれが叶う幸運の星のもとに生まれたというのに、その恩恵をただしく使おうとしないのだ。
 そのことがひどくリィウスを苛立たせる。それが、そもそもリィウスがディオメデスを嫌った一番の理由だった。
 今も、娼館でこうして惰眠だみんをむさぼっている。こうしているあいだにも、他の貴族の子弟たちは後見人にならって政治学の研鑽を積んだり、騎士として武芸に励んだり、属国統治のために遠征しているというのに。
 リィウスの怒りと不快さが伝わったのだろう。
「なんだ? その不満そうな顔は」
 ディオメデスは寝転がったまま、頭の後ろで腕をくんで、笑いながら訊く。その笑顔はやんちゃな悪童そのもので、無邪気とさえいえる。
「こんなところでいつまでも油を売っていていいのか?」
 声がつっけんどんになるのは仕方ない。いっそ怒ってディオメデスが出ていってくれれば、と願う。タルペイアは怒るだろうが、ここでこのまま色と酒に溺れていていいわけがない。
 リィウスは自分がディオメデスの将来を心配していることを自覚していなかった。
「何がおかしいのだ? 笑うな!」
 ディオメデスの楽しげな声が閨にひびく。
「いや、すまん。おまえの怒った顔がおもしろくて」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

少年達は吊るされた姿で甘く残酷に躾けられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...