燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「ううっ! あうっ、ああっ! ……うう、いい!」
 つくづく、ナルキッソスがリィウスのかわりに柘榴荘で客を取れば良かったのだと思う。彼なら喜んで客たちの相手をしたろう。
 そんな侮蔑の想いを知ってから知らずか、ナルキッソスは極めたらしく、全身を心地良さそうにふるわせた。
「はぁー」
 声には満足感がこもっている。
「満足されましたか?」
 皮肉げに響かないよう注意したつもりだが、ナルキッソスは不快そうに黄金きんの眉をしかめた。
「……足りない。まだ……、こんなんじゃ、全然足りない!」
 床に張型が投げ捨てられた。石床の上をころがる道具はひどく滑稽で惨めなものに思える。
 アンキセウスは数秒、床を見つめてから、ナルキッソスに視線を移した。
 ナルキッソスは不満に頬をふくらませ、次の瞬間、碧の瞳にこぼれんばかりの切なさを滲ませた。
「ああ、いいな、兄さんは、あんな気持ち良いことをしたんだから」
 正気だろうか? と疑ったが、おそらくそれがナルキッソスの本音なのだろう。
「あんな、皆のまえで辱しめられて、いや、いやって泣いて、最後にはよがるんだから。ずるいや、一人で良い想いして楽しんで」
 ナルキッソスには、リィウスが喜んであの行為をしていると見えるのだろうか。アンキセウスは口を開きかけたが、あわてて閉じた。
 自分が口出しすることではないのだ。……だが。
「ああ! 僕も、いっぺんでいいからあんな想いをしてみたい」
 ナルキッソスの顔には不満と羨望が混じっている。自分が得られぬ悦楽をきわめた義兄にたいする妬みに、溜息をつく。
 碧の双眼は潤みを帯びてきた。
「ああ、僕もあんなことしてみたい。数人のまえで苛められて、あんな……人前で道具に乗せられて、責めたてられて、恥ずかしがって、辛がって、でも、最後は自分で動いて、皆に見られてくなんて……。なんで兄さんばかり良い想いができるんだろう。ああ、思い出すだけで、ここがジンジンする」
 言うや、恥もなく薄物一枚下の、みずからの分身に手を伸ばし、アンキセウスの前もはばからず、ふたたび手を動かす。
「……リィウス様はお辛い想いをされていると思うのですが」
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