燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「おい! 抗うな! おまえが嫌がるなら、おまえの可愛いミュラが苛められるんだぞ!」
 そんな声とともに、小人がてのひらでトュラクスの臀部を、まるで聞き分けない幼児をしつけるようにたたいた。それを見ていた観客はまた笑う。
 リィウスは唇を噛みしめた。
 トュラクスが耐えがたい侮辱に顔を真っ赤にしているのが、リィウスにもわかる。恋人を人質に取られていては、どうにもならないのだ。
 だが、同情した次の瞬間、ふしぎな感情がリィウスの胸にわく。
 トュラクスの男らしい横顔が、これ以上ないほどに自尊心を傷つけられてまた歪むのが、ふしぎなほどに凛々しく見え、こんなときだというのに、リィウスは胸が高鳴る。
 ふと気づくと、観客たちのなかには、笑いながらも頬を染め、女人などは羽扇で顔をかくしながらも目をうっとりと潤ませている者もちらほらいる。
 いたぶられ貶められているトュラクスの全身から、妖しい体臭のようなものが流れてきて、場を満たしていくようだ。
「うう……」
 かろうじてトュラクスの腰にまとわりついていた襤褸ぼろ布の端を小人がおもしろそうに引っ張る。最後の羞恥の砦をつつかれて、美丈夫があわて悶える様子がこのうえなく嗜虐的でまた観客の胸を突く。
 リィウスは頬が熱くなり、胸が燃え、股間の芯のところに小さな火が灯るのを感じてうろたえた。
(わ、私はどうしたというのだ……?)
 こんな状況で、トュラクスが酷いいたぶりを受けているのを目にし、あろうことかリィウスは己のなかにかつて経験したことのなかった春情が芽生えたのを、おぼろげながらも自覚し、衝撃をおぼえた。
 リィウスは他の同年代の男性にくらべれば自分はいたって淡泊な方だと自認していた。異性同性にもさして興味を覚えたことはなく、勉学に耽って青春を過ごすことに充分満足していた。家が没落して柘榴荘で否応なしに性の相手を強いられ、無理やり青い蕾を開花されつつあるが、それはあくまでも強制されてのことで、リィウス自身は己のなかにまだ残っている自分の清廉さをやはり信じていた。
 無理やり与えられた快楽に、たしかに肉体は負けたが、精神はまだ負けてはいない……とその想いに縋っていたのだ。
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