燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 リィウスが息を飲んだのと、青銅のシンバルが鳴り響き、人々の注目を集めたのはほとんど同時だった。
 先ほどの小人の一人が、中央に小走りに出てきた。その手には銀の盆がある。
 わざと滑稽な、おどけた仕草で盆上のものを取り上げ、観客に見えるように示す。
 失笑が響いた。
 小人の手には、黒いなめし革の帯のようなものがあり、さらにその先には奇妙なものがぶら下がっていた。
 リィウスは目を凝らし、次に羞恥に頬が熱くなるのを感じた。
 揺れているのは、男性器をかたどった象牙の道具だ。すでにリィウスもそれがなんの目的のためにあるのかは、柘榴荘で身に染みるほどに教えこまれている。だが、革帯に取りつけられているのを見るのは初めてだった。
 小人がそれを振りまわし、人々はつられて笑った。ひとしきり笑いがすむと、小人は笑いながら、トュラクスの側にまた小走りでちかづく。
 何をするのか……? 不気味に思って見ているリィウスの前で、小人はその珍妙な道具を、トュラクスの腰あたりに巻きつけていく。
 我知らず、リィウスは再びちいさく息を飲み、唇を噛みしめていた。
 人々の嘲笑が聞こえてくる。
 トュラクスが身じろぎし、不自由な体勢でどうにかして逃れようともがいているのがリィウスにもわかる。だが手足の自由を封じこめられている哀れな虜囚には、逆らうすべも逃れる道もなく、小男の手によって、世にも淫猥なその道具を腰に取り付けられてしまう。
 見ていてリィウスは泣きたくなってきた。
 四つん這いになっているトュラクスの臀部の上に、おぞましい茸が生えたように、性具が巻きつかれている。
 嘲笑の波がさらに高まる。リィウスは目を閉じ、両耳を手でふさぎたかったが、恐ろしいことに、目はどうしてもこの異常な光景を追ってしまう。
「ううっ、ううっ、うううううっ!」
 トュラクスはどうにかしてこの常軌を越した辱しめから逃れようとしているが、脚に巻かれた綱の果てにある石がそれを許してはくれない。
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