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四
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「あっ、あっ、待って、待ってくれ!」
だが、トュラクスはウリュクセスの命を優先させるしかない。
「おお、早い、早い」
げらげらと笑っていた観客たちも、かつては全ローマにその勇名を知られた希代の美丈夫の哀れきわまりない姿に、やがて陶然となった。
揶揄や嘲笑も盛りを過ぎ、いまや皆魅入られたようにトュラクスとリィウスの奇妙な共演に夢中になっている。
リィウスがいたたまれなさそうに伏せた顔を、切なげにかしげたり、堪らなさそうにのけぞって項を見せたりする様子のなんともいえない淫靡さと、あふれる官能美と、それでいて崩れることのない気品に、観客たちは息を飲んだ。これほど浅ましい姿をさらして、尚リィウスにはどこか清純なところがある。
さらに彼の下になって、不自由な身体で、まるで彼に奉仕するかのように全力を尽くすトュラクスの歪められた眉や猿ぐつわを噛みしめる顔の痛ましくも凛々しい様にも見る者は胸をかきむしられる。不様きわまりない姿となっても、耐える肉体の見せる鋼のごとき強靭さは人の心を打つ。
まったく趣は違うが、どちらも美しい青年であり、どちらも苦悶に染まった顔から、その自尊心の高さが感じられ、見る者の胸を打つ。そして、いっそうの嗜虐心を引き立てるのだ。
トュラクスの激しい動きに合わせて、リィウスも自然に身体を前後に動かすようになっていた。足先は少し膝を外に曲げるかたちで石床についており、その姿は淫猥そのものだ。それを自覚したリィウスは頬をこれ以上ないほどに赤く燃やして悲鳴をあげる。
「ああっ、ああっ、あああああ!」
絶妙な刺激がトュラクスの背からリィウスの腰へと伝わってくる。
「ま、待って、待ってくれ、トュラクス……!」
咄嗟にリィウスは相手の名を呼んでいた。まるで情事のときに相手に縋るように。下のトュラクスが一瞬、動きを止めた。
「こら、止まるな!」
すかさずまたウリュクセスが叫ぶ。
ローマ最高の二体を己の玩具にして思うがままに自由に弄ぶこの悪魔は、残酷な遊戯にすっかり夢中になってしまっている。
だが、トュラクスはウリュクセスの命を優先させるしかない。
「おお、早い、早い」
げらげらと笑っていた観客たちも、かつては全ローマにその勇名を知られた希代の美丈夫の哀れきわまりない姿に、やがて陶然となった。
揶揄や嘲笑も盛りを過ぎ、いまや皆魅入られたようにトュラクスとリィウスの奇妙な共演に夢中になっている。
リィウスがいたたまれなさそうに伏せた顔を、切なげにかしげたり、堪らなさそうにのけぞって項を見せたりする様子のなんともいえない淫靡さと、あふれる官能美と、それでいて崩れることのない気品に、観客たちは息を飲んだ。これほど浅ましい姿をさらして、尚リィウスにはどこか清純なところがある。
さらに彼の下になって、不自由な身体で、まるで彼に奉仕するかのように全力を尽くすトュラクスの歪められた眉や猿ぐつわを噛みしめる顔の痛ましくも凛々しい様にも見る者は胸をかきむしられる。不様きわまりない姿となっても、耐える肉体の見せる鋼のごとき強靭さは人の心を打つ。
まったく趣は違うが、どちらも美しい青年であり、どちらも苦悶に染まった顔から、その自尊心の高さが感じられ、見る者の胸を打つ。そして、いっそうの嗜虐心を引き立てるのだ。
トュラクスの激しい動きに合わせて、リィウスも自然に身体を前後に動かすようになっていた。足先は少し膝を外に曲げるかたちで石床についており、その姿は淫猥そのものだ。それを自覚したリィウスは頬をこれ以上ないほどに赤く燃やして悲鳴をあげる。
「ああっ、ああっ、あああああ!」
絶妙な刺激がトュラクスの背からリィウスの腰へと伝わってくる。
「ま、待って、待ってくれ、トュラクス……!」
咄嗟にリィウスは相手の名を呼んでいた。まるで情事のときに相手に縋るように。下のトュラクスが一瞬、動きを止めた。
「こら、止まるな!」
すかさずまたウリュクセスが叫ぶ。
ローマ最高の二体を己の玩具にして思うがままに自由に弄ぶこの悪魔は、残酷な遊戯にすっかり夢中になってしまっている。
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