燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 いつもの金満家の粋人すいじんらしく余裕のある態度を振り捨て、どろどろとした欲望に満ちた姿を客たちの前に恥もなく晒している。彼はリィウスたちを見せ物にして喜んでいるが、彼自身も見世物になっていることに果たして気づいているのか。
(気づいてやっているんでしょうね)
 タルペイアは少し距離を取ったところで、リィウスとトュラクス、そしてウリュクセスの淫らな姿を見ていた。
 ウリュクセスほど頭の良い男が、今の己の醜態に気づかないわけはないのだ。だが、敢えて自らも淫猥な見世物の一部になることを承知で、覚悟のうえで客たちの前で卑しい凌辱者の役を演じているのだ。
「あっ、ああっ、ああっ、やめ、やめてくれ! 動かないで、ああ、動かないでくれ!」
 リィウスは泣きじゃくって首を左右に振っていた。
「おお、おお、もうすっかり入ってしまっているぞ。どうです、皆さん、この世にも麗しい美青年は、とんだ淫乱だ」
 ふたたび嘲笑のさざ波がたつ。
 一瞬、リィウスとウリュクセスの美と淫の共演かつ競演に魅入られていた客たちも、ウリュクセスのひやかしに笑った。幻想世界のふしぎな夢の生き物が、血と肉を持った生身の人間だということを思い出したように。
 そのとき、シンバルが鳴り響き、場に奇妙な緊張をあたえたかと思うと、一人の影が中央の三人に向かって進み出た。
「おお、これは今宵のヴィーナスのお出ましだ」
 進み出てきたのは、美しい貴婦人だった。
 失神寸前だったリィウスは、その女人の出現に意識を引き戻され、あわてた。
 すぐ側に立つ彼女の存在に、恐怖にも似た羞恥に襲われ、背を丸めそうになったが、すぐに左右の男たちに腕を引きあげられ、逆に胸をそらす姿勢を取らされてしまう。女の目に、あられもない姿を晒す屈辱に、リィウスの方がつつましやかな令夫人のように恥じらいにおののき、女の方が一向に平気な様子で、その異常な様子の男たち三人の前に立っている。
「ああ……」
 羞恥に泣くリィウスの下になっているトュラクスの反応はさらに激しかった。彼に連られて身体を揺さぶられたリィウスは、このときやっと目の前に立つ女人が、エリニュス、復讐の女神と呼ばれる女だということに気づいた。
 トュラクスを罠に嵌めた張本人である。
「ほほほほほ、どうしたの、トュラクス、そんな怖い顔をして?」

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