燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「ふふふふふ。それに私には素晴らしい参謀がいるのよ。いえ、師と呼ぶべきかしら。ねぇ、サガナ」
 リィウスの視界で黒っぽいものが揺れた。
 エリニュスのしもべらしい女が一歩出て、頷いたのだ。彼女まとっている黒衣がかすかに揺れて、初めて存在感が出た。それまでは、そこにいたことすら忘れていた、というよりリィウスは気づかなかった。
「ねぇ、ご覧、サガナ。こんなお綺麗な顔をして、こんな道具を持っているのよ」
 サガナが顔を伏せる。あえて目を合わさないようにする仕草に、かえってリィウスは羞恥をあおられ泣いた。 
 今の自分はあまりにも惨めで哀れだ。リィウスの心が伝わったのか、この苦痛を共有しているトュラクスが、下で身じろいだ。
「ううううううっ―!」
 獣じみた叫びを、近くに来たサガナと呼ばれた女に向けている。彼女もまたトュラクスにとっては憎い仇の一味なのだろう。
「はぁ……!」
 トュラクスの動きは、リィウスにいてもたってもいられない刺激を送りこみ、その微妙な身体の揺れから生まれた官能の波にリィウスは我をうしないそうになる。
「あ、あ……、トュラクス、駄目だ……動かないでくれ……」
 まるで、トュラクスに責められているような、犯されているような、不思議な錯覚にリィウスは酔いしれていく。
 理性では必死に拒絶しているというのに、先刻からさんざんに焦らされあおられ、今も憎い女の手のなかで若芽は、否応なしにはぐくまれてしまい、どうにもならなくなってしまっている。
 エリニュスは老練な娼婦の手管を持っているようで、リィウスを執拗にいたぶり、責め、なだめ、甘やかす。生まれながらの淫婦のようなエリニュスの手腕にかかれば、リィウスなど文字どおり赤子のようなもので、感嘆に手をひねられてしまう。
「ほほほほほ。サガナ、よく見るといいわ。こんなお上品な貴族の若様でも、ここは庶民の男とおなじで欲望には正直なものよ」
「はぁ……! よ、よせ!」
 悔しいが、エリニュスの言っていることは真実だ。貴族であろうが奴隷であろうが、急所をいじられると男は自己抑制できない。すくなくとも健康な身体の男は、エリニュスの手に抗うことなどできない。
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