燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 トュラクスが獣のようなうなり声をたてる。彼の身体の震えがそのままリィウスをも震わせる。
「あっ、はぁ……!」
 トュラクスの屈辱とたかぶりは、そのままリィウスの屈辱と昂りである。このとき二人はほとんど一心同体となっていた。
 リィウスはのけぞった。
「あぁっ! あっ! ああ……!」 
 だが、もうあと一歩、というところで、先ほどリィウスをもてあそんだように、エリニュスは手をゆるめ、生殺しの辛い時間をトュラクスに与える。リィウスもともに絶望の吐息を吐く。
 トュラクスは本当に獣になったように手足をひねって声を放つ。罠にとらわれた獅子がもがいているようだ。
「ううう……、うう、ううう……」
 痛みや侮辱には耐えれても、いや、耐えざるを得なくとも、このもどかしい責めはトュラクスの神経を切りきざんでいくようだ。激しく疲弊ひへいした唸りが響く。
「ふぅっ、ううううっ!」
 のたうつトュラクスを眺め、エリニュスは満足の笑みをこぼす。
「ほほほほほ。面白いわぁ。趣きのちがう美男二人をこうしていじめるのは。ねぇ、最高ではない ウリュクセス? これからこの二人をつがいにして見世物の目玉にするのはどうかしら?」
 魔女の口から信じられないようなおぞましい暴言が出る。
「それは面白い。さぞ客が沸くだろう」
 ウリュクセスも心底おもしろそうに応える。
「もう少し楽しみたいけれど、このままでは見ている客もしんどいでしょう。さぁ、二人とももう一度励んでごらん。これで終わりにしてやるわ」
 終わりに向かう時間は長かった。
 いったん下火になった火勢をふたたび上げさせられ、二人は汗を散らしながら、ともに同じ目的のために動いた。
 トュラクスの腰や背の動きに合わせて、リィウスも恥をおさえて、己なかにある異物が、目当ての箇所に当たるように精一杯腰を動かす。その仕草はよっぽど淫靡だったらしく、観客たちを激しく興奮させ声をあげさせた。嘲りをふくんだ歓声に神経が麻痺していくが、それでも身体は動くことを止めれない。
(ああ、欲しい!)
 欲しい、欲しい、とリィウスのなかに生まれた炎が、獣が叫ぶのだ。
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