燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

文字の大きさ
246 / 360

しおりを挟む
 リィウスは恥辱に震えながら、やっと自由にさせてくれたエリニュスを睨むこともできず、とうとう、おのれを弾けさせた。
「ううーっ、あっ、あうっ!」
 耐えた時間の長さと、屈辱の痛みの深さに比例するような、すさまじい快楽がリィウスを襲う。
(あっ、こ、こんな……こんな、すごい……)
 全身にいかづちが走ったような錯覚に、リィウスは五体が砕ける予想をし、怯えた。
(ああっ、ああっ、あああっ!)
 とめどなく涙が頬を伝うが、認めないわけにはいかない。そこには苦痛をしのぐ、得体の知れない甘美さがまじっていた。
(ああ、もう駄目……だ)
 女が言うような言葉が頭のなかで響く。気づいてさらに恥じ入り、身をおののかせた。
 トュラクスをまたぐ格好で、あられもなく開かせられている両足が、ぶるぶると震える。
 頭上で縛り上げられている手も、胸も胴も、嵐の夜に咲く白薔薇のようにいたましげに揺れる。リィウスの肉体のみならず、魂が、おびえて震えているようだ。
 そんなリィウスのいじらしい様子を見て、エリニュスはまた笑った。
「ほほほほほほ。すさまじい格好ね。良かったわよ。ご覧、客たちも大喜びよ」
 言われるまでもなく、観客たちの熱をふくんだ視線を感じて、リィウスはまた怯えた。 
 客のなかには、今宵の宴の見せ物となっている哀れな麗人が何者であるかにすでに気づいている者もいるだろう。けっしてリィウスの思い過ごしではなく、見たことのある顔もあった。父の知人の貴族だ。
 相手はリィウスと目が合うと、あわてて目を逸らしはしたが、この場を去ることはなく、最後まで欲望のこもった目でリィウスの痴態を見物していた。後にこの夜のことを誰かに漏らさないとは言えない。いや、きっと話すだろう。リィウスの名誉は地に墜ちていく。
「ああ、本当に可愛いわぁ」
 うっとりとしたように恍惚に濡れて光る目で、嬲るようにリィウスを見下ろしていたエリニュスは、身をかがめると、リィウスの唇に己の唇をかさねた。
「んっ……!」
 リィウスは不快感と嫌悪に、あらがって、身をよじり、女の手と唇をふりほどく。
 汚らわしい、という想いを隠すこともなく、唾棄だきしてみせた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...