燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「こんなことをして、恥をさらしているのは、おまえの方だぞ! 淫売!」
 エリニュスは黄金きんの眉をかすかに動かした。
「ふん、この期におよんでも偉そうね。ほら、」
「うぐっ!」
 女は、指戯に長けているいるらしく、巧妙に指を動かして、トュラクスを喘がせる。
 それでもトュラクスは、かなり意地と気骨を見せた。
 エリニュスの執拗な性技にあらがい、息を吐き、おさえつけられた四肢をふるわせ、なんとか必死に抵抗した。敵は女の指でもあり、トュラクス自身の昂りでもある。彼は必死にその敵と戦っているのだ。見ている若い兵士が頬を染めて息を吐く音がリィウスの耳に響く。
 だが、どれほど必死に戦ったところで、勝負は見えていた。
 ねっとりとした時がながれて、いつしかトュラクスの口から熱をふくんだ喘ぎがこぼれだした。
「ほら、ここは? どう?」
「うう……」
 逞しい体躯とそれにふさわしい熱情を秘めた身体は、どうあっても女の手管から逃れられない。トュラクスの陥落を、リィウスは哀しい想いで見つめていた。
「ううっ、うううっ、うぐっ、はぅっ!」
「ふふふふふ。感じだしてきたわね。どう、トュラクス? おまえは今、女に後ろの園を犯されて……こんなに感じているのよ」
「殺生ですよ、エリニュス。ご覧なさい、汗びっしょりじゃないですか。そろそろ楽にしてやっては?」
「駄目よ。この生意気な奴隷にちゃんと主人が誰かを教えてやらないと」
「おいおい、言っておくが、トュラクスは私の奴隷なのだよ」
 観客然として傍観していたウリュクセスが、口をはさんだ。どこまで本気なのか、その顔は不満そうだ。
「あら、私のものでもあるのよ。最初にトュラクスを捕らえるよう進言したのは私よ」
「人や金を使って、その望みを果たしてやったのは、この私だぞ。だからこそ、この誇りたかきローマ屈指の戦士が、こうやって君の前で尻をさらけだして、君の指でよがっているんじゃないか」
 トュラクスの横顔が無念そうに歪むのを、リィウスは切なく見ているしかない。
「まぁ、そうね。でも、忘れないで、トュラクス、おまえを飼っているのはウリュクセスだけれど、私だっておまえの主なのよ。主人に向かって無礼な真似をするなら、こうやって、おしおきよ。ほら」
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