燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「ふん、偉そうに! 売女はおまえでしょうが。売女の身体がどうなっているか、じっくり検分してやるわ」
 恥など知らない女は、トュラクスの尻の先に手をかけた。
「ふふふふ。男の蕾を鑑賞させてもらうとするわ」
「やめろぉ!」
 我慢も限界に達したトュラクスが腕を振りあげる素振りをしめした。あわてて男たちが駆けつけ、彼をおさえつける。
 足には重しがつなげられているので、激しく動くこともできず、トュラクスはさらに加わった兵士たちによって、完全に動きを封じられてしまう。どのみち逃げることなど出来ないとわかっているが、抑えきれない羞恥の感情と恥辱の怒りが彼を突き動かしたのだ。
「そこに抑えつけておくのよ」
 床に這いつくばらせられたトュラクスの無念のあまりの呻き声は、見ているリィウスの方が胸をかきむしられるほどに凄まじいものだった。
(ああ……、私に力があれば)
 どれほどリィウスがこの非道に怒り悲しんでも、できることは何ひとつない。誰もトュラクスを助けてはくれない。
 エリニュスは膝を付いて身をかがめると、面白そうにトュラクスの張りつめた臀部を撫であげ、臀列でんれつのはざまを、意外にも優しげな手つきでさぐる。
「うう……! さ、触るな! や、やめろぉ!」
 繊細な花弁を分け開くように、エリニュスは丁寧な、だが妙にねちっこい仕草でトュラクスの秘密の場所を鑑賞する。
「うう……!」 
「……あら、けっこう綺麗な色をしているわね」
 揶揄ではなく、本気で感嘆しているようだ。リィウスは目の前で繰り広げられる異様な展開に声を殺し、息をすることすら忘れた。
「ふふふふ。可憐な薄紅色よ。咲きめの薔薇の蕾のようね」
 わざとらしく下品な仕草でエリニュスはおのれの右手の指二本をくわえ、みずからの舌でぬめりをつける。湿った音が響いてきそうだ。
「ほうら……。どう? ここを女に、それも殺しても飽き足りない女にいじられる感想は?」
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