燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 やがて、永遠とも思える須臾しゅゆの時間が過ぎて、リィウスが苦しげに声を上げた。
「はぁっ! あっ、ああああっ!」
 一瞬、空気が凍ったように静まり、やがてその場にいた全員が熱い吐息をはなった。

 そのあともエリニュスの悪戯は終わることがなく、次々とリィウスとトュラクスに無理難題を押し付け、二人が悔し泣きする様子を笑いものにした。
 一度ではゆるされぞ、その後も二人は惨めきわまりない行為を強要された。
「ああっ、も、もうっ、もうっ、」
 許容できない快楽と屈辱の波のなかで、リィウスとトュラクスは互いの背後を押し付けあっていた。憎い敵がのぞむ姿を晒していることに、もはや屈辱を感じる余裕も今の彼らにはない。
 このときの二人は、損得も愛憎も吹っ飛び、生身の若い男の肉体を持っただけの存在になっていた。
「すごいわ、象牙の柄の部分が消えていくわ」
 エリニュスの感嘆に二人とも羞恥を強めた。
 リィウスの方は、もはや発狂寸前である。
「あっ、ああっ、あああっ、も、もう……!」
 啜り泣くリィウスの手を、背後で背を合わせている男が握った。
 泣くな……。男の想いが握られて振れあっている相手の肌と血潮の熱さが伝えてくる。
 リィウスは無意識で手を握りかえしていた。
 地獄の時間が過ぎゆくなかで、リィウスは握られた手からほのかな暖かみを感じ、それだけが生きている証しのように思え、その暖かみがあるおかげで生きていられるのだと後になって振り返った。

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