燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 赤い麻紐を、トュラクス自身にからみつかせ、根本で軽く縛ってやると、トュラクスは狼狽し、身体をふるわせる。
 飴色にねっとり光る全身と、燃える真紅の紐の対比は、地下牢に素晴らしい芸術作品を生みだした。
 しかも臀部には相変わらず異形の物体を装着されており、なめし革の黒帯が存在感を放っている。
 前後を真紅と漆黒の戒めに飾られたトュラクスからは、男の悲哀が匂いたつようだ。
 しばしエリニュスとともにトュラクスの屈辱に震える姿を鑑賞したマヌグスは、敏感そうなトュラクス自身を掌につつみこむ。
「ほう……。あんまり大きくないな」
 わざとトュラクスに聞こえるように、わざとらしく驚いた口調で言ってみる。
 トュラクスの頬が恥辱に燃え、マヌグスを満足させてくれる。
 実際、トュラクスの身体つきに比べると、それは細身ともいえるが、そこからまた言いようのない被虐美があふれだし、意外な清潔感ともあいまってマヌグスの加虐の欲望をいっそう煽る。
 トュラクスの背後で、やはり苦しそうに喘いでいる青年貴族も文句なく美しいが、トュラクスのような男が羞恥と恥辱におののく様子は、滅多に見られるものではない。そう思うとマヌグスは否応なしに興奮した。
 おそらく、この先二度と、このトュラクスほどに強く誇りたかく美しい戦士は世に出ないだろう。すくなくとも、自分が出会うことはないだろう。マヌグスは一瞬、もの悲しい苦しさすら覚えて、ついトュラクスを握っている手に力を入れていた。
「うううっ!」
 かすかな圧力だったが、相手にとっては苦痛のようで、トュラクスは苦しそうに首を横に振る。
「は、放せ! た、たのむ、手を、は、はなしくれて」
(おっと、いけない)
 思っていた以上に手に力を込めていたようだ。
 すぐに力を抜き、しばらく待ってから、ゆっくりと手を動かした。
「ああ……!」
 トュラクスが絶望と諦めの吐息を放つ。
 マヌグスは手の動きを少し早めてみる。そして緩め、トュラクスの呼吸がおさまるまで待ってやったりもする。だが、手の動きを完全に止めることはない。
「も、もう、よせ!」

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