燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「そうだよ。僕はずっと昔から狂っていたんだ。でも、その理由は……僕を狂わせた一番の原因は、あんただよ、リイゥス兄さん。あんたが、僕をこんなふうに追い詰めたんだ」
「な、なぜ……」
 一瞬、ナルキッソスの碧の双眼にかげが見えたが、それはすぐに消え、代わりに淫蕩そうな熱が弾けた。
「さぁ、兄さん、楽しそうだけれど、そろそろお馬乗りは終わりだよ。そんな悲しそうな顔をしないで、僕がすぐ、もっと気持ちよくしてあげるからね」
「よ、よせ! さ、触るな!」
 激しく身体をゆさぶったせいで、リィウスの頭にかざられていた花冠が落ちてしまう。散らばった薔薇の花弁を、故意か偶然かナルキッソスが踏みにじる。
「ああ……」
 どれほど身をよじっても、伸びてきた細い手からリィウスはこれ以上逃げることはできなかった。
「うっ……!」
 胸の敏感な先端に、熱いねっとりとしたものが触れてきたのを感じて、リィウスは悲鳴をあげた。
「よ、よせ! やめろ、ナルキッソス! やめないか!」
 ナルキッソスの手で身体をおさえつけられ、そのまま燃えるような赤い舌の愛撫を身に受けることになった。
「ああ……」
 今の、この現状がどうしてもうつつのことだと思えず、リィウスは眩暈めまいに襲われながら必死に首を振った。
(嘘だ……、こんなこと……あっていいわけがない)
 柘榴荘で娼婦たちに調教を受けたときよりも、ディオメデスに抱かれた初夜の晩のときよりも、木馬乗りを強制されたときよりも、トュラクスの背に乗らされたときよりも、リィウスは絶望し、激しい恐怖と屈辱、怒りと羞恥に絶叫しそうになった。
 そのあいだにも、ナルキッソスの舌は遠慮なく兄の身体を這う。
 しかも、いまだにトュラクスの背に乗ったままだ。体内に食い込んでいる道具の存在もリィウスを追いつめる。
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