サファヴィア秘話 ー闇に咲く花ー

文月 沙織

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野獣の群れ 三

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「立たせろ」
 護衛の兵士がラオシンの両腕をひっぱって立たせるや、ディリオスはラオシンの腰紐をほどいた。
「あっ……」
 咄嗟に身をかがめようとしたが、さらに背後からひっぱられるようにされ、ラオシンはディリオスのまえに生まれたままの姿をさらすはめになってしまう。獣のような男の目が、針となってラオシンの中心に突き刺さる。
「くぅ……」
 昨夜の女たちから受けた手酷てひどい辱しめを思い出し、ラオシンは頬を屈辱に燃やして身をよじるが、多勢に無勢でのがれようがない。
「後ろは、もう開発ずみか?」
 ディリオスの問いにマーメイが首をふる。
「少しだけよ。なんといっても王子様ですからね。ゆっくりと少しずつ、傷つけないように、という指示なのよ。まぁ、それでも昨夜は初日で、細目の道具ならなんとかこなせたわ」
 聞いているラオシンの背に汗がしたたる。
「ふうむ……。ドド、そこの戸棚から刃物をとってこい」
 ラオシンは身体が震えるのを必死におさえた。
「傷はつけないでよ」
「安心しろ。少しばかりお仕置きをするだけだ」
 さらに部下になにやら指示を出したディリオスは、手にやや黒ずんだ乳白色の塊をもっていた。慣れた仕草でそれをこねるようにすると、乳白色のしたたりが手からこぼれる。
「羊の脂に木灰をまぜて作ったものだ。これを塗るとやりやすくなるのだ」
「な、なにをする?」
 問うラオシンの言葉の語尾はふるえていた。
「言ったろう、ちょっとばかり、やんちゃな殿下にお仕置きをするのだ。足を開け」
「は、はなせ!」
 壁をくりぬくように造られた置き棚にともる蝋燭の光に、その銀の刃は燃えるように光り、ラオシンから勇気をけずりとっていく。ラオシンは怯えをかくすこともできなくなり、恐怖に身体を震わせていた。
「殿下に十歳ほど若返ってもらうだけだ」
「怪我させないように気をつけてよ」
 ディリオスに案じるような声をかけるマーメイに、ぎゃくにディリオスは浴場を出るように言う。
「どうしてよ?」
「見ろ、おまえがいると殿下は恥ずかしくてふるえていらっしゃる。女の目があると緊張されるんだろう。下手したら大変なことになるから、おまえ先に部屋に戻っていろ」
 昨夜、マーメイが娘たちに言ったのと同じようなことを、今度はディリオスがマーメイに言っているのだ。マーメイは苦笑するしかない。
「あらあら、今度はわたしが邪魔者ということね」
「わかったら広間で待っていろ。他の女たちといっしょにな」
 そこでディリオスは意味深な笑みを浮かべ、マーメイはうなずいた。
「仕方ないわね。では、先に行っているわ。あまり待たせないでよ」
 マーメイが去っていくと、ディリオスは刃物を見せびらかすようにしてラオシンに命じた。
「さ、殿下、邪魔な女はもういない。男ばかりだからもう恥ずかしくないだろう? 足を開けられろ」
 ラオシンは無言で首をふる。目は光る刃からはなせないでいた。その銀の閃光せんこうに魂まで切り刻まれそうな恐怖に呼吸がせりあがる。
「おい、おまえら、足を開けさせる」
 ラオシンの両側に立ち彼の自由をうばっている男たちが、それぞれの手をラオシンの脚にかけ、主の望むような姿勢を取らせようとした。
「な、なにをする!」
 精一杯あらがってはみても、かなうわけもなく、怯えているラオシンのまえでディリオスは刃物に乳白色の液体をなすりつけ、ゆっくりとした動作で刃をラオシンの股間にちかづけた。
「う、うう……ああ、よせ、やめろ」
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