昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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終末の夏 四

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 体制派であるべき華族や、上流階級の青年のなかにも、稀にこういった、今の時代では反社会的と呼ばれる集団に、敢えて入っていく者も、少ないがいた。
 そして、警察の捜査は姉のところまで及び、姉は取り調べを受けることになった。まだ憲兵がこないだけましだったのかもしれない。
 それは寒い冬の朝で、両親はあわてふためいたが、二週間ほどの留置で姉は釈放された。両親のまえに、姉は二度とA氏と会うことも、教会の活動に参加することもないと誓ったのだった。
 姉の目には、絶望と悲哀に満ちていて、痛ましかった。
 そして、警察から帰ってきて両親のまえに謝罪した、まさにその夜、姉は自室で首を吊った。
 あの夜の、姉をみつけたときの女中の悲鳴と母の叫び声は忘れられない。雪が降りそうな寒い夜のことだ。
 屋敷じゅうが大騒ぎだった。
 だが、幸いなことに姉は息を吹き返した。
 これは奇跡だった。
 医者が呼ばれて、蘇生措置をいろいろほどこした挙句、もはや駄目だと首を横に振った直後のことである。
 まるで千年の眠りから覚めたおとぎ話のお姫様のように、姉はゆったりと優雅に身を起こしたのだ。
「ああ……よく寝たわ。あら、みんな、どうしたの?」
 無邪気にそう言った姉を見て、僕も両親も仰天した。
 医者も腰を抜かさんばかりに驚き、幾度となく奇跡だと呟いていた。
 だが「奇跡だ」と何度もつぶやく医者の顔は、感動しているというよりも、まるで恐ろしいものでも見ているようだった。
 涙を流してよろこぶ両親を見つめる姉の目は……、奇妙なことだが、ひどく大人びて、まるで千年を生きた老婆のようでいて、それでいて以前の姉にはなかったふしぎな活力と魅力があった。
 その魅力とは、明るさというのか、華やぎというのか、ふと人を惹きつける……色気、というものだろうか。以前の姉にはなかったものだったが。
 それからの姉は、文字どおり生まれ変わったように人が変わった。
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