鈴の鳴る夜に

文月 沙織

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淫ら絵 四

「ああ……くそぉ、くそ……!」
 女とみまごう顔をしていても、唇からもれる罵りの言葉はまぎれもなく男であり、その声にひそむ憎悪と気骨が、いっそういたぶる側の男の嗜虐しぎゃくをあおるようだ。喜々として小島は鈴希の哀れな姿を写真におさめた。
「も、もう充分だろう! 縄をほどけ!」
 涙に黒真珠の瞳をきらめかせ怒鳴る鈴希に、圧倒的強者の立場で鈴希は言いはなった。
「まだまだ、ですよ。せっかくですから鈴希様、もっと演出も考えてみましょうね。その方が川堀様も喜ばれることでしょう」
「な、なに?」
 鈴希は熱っぽい身体に氷水をかけられたように一気に青ざめ、目を見張った。
「お、おまえ、この写真を川堀に見せるつもりか?」
「当然でしょう? そのために撮っているんですから」
 しらっと小島は答えるや、小屋の隅に置いてある籠を取ってきた。
「ほら、鈴希様に似合うかと思って今朝庭から切り取ってきたんですよ」
 籠には青紫と純白の花の花弁もすがすがしげな杜若が盛られている。
「ああ、やっぱりあなたには青系の花が似合うな」
 短く切りとった花を鈴希の耳にかけた。
「ふざけるな!」
 鈴希が首を振ると、花は地面に落ちたが、かまわず小島は笑いながら花びらをちぎって鈴希の頭に落とす。
 幾枚かの青紫の花びらを、ふざけて鈴希の股間になすりつけるように貼り付ける。黒々とした繊毛のうえに薄紫の花びら――。鈴希はいたたまれなさそうに声をあげた。
「よ、よせ!」
 鈴希が腰をゆらすと花弁は落ちていくが、なかには落ちずにそのままくっついているものもあれば、太腿や膝にひっかかるものもある。なんとも滑稽な眺めであれば、幻想的でもある。強いられた淫らな痴戯ちぎに鈴希は頬を染めて抗議する。
「も、もうよせ! この変態! いい加減にしろ!」
 笑いながら小島は首からさげている写真機で鈴希を撮った。
「ああ……」
 悔し気にせつなそうに眉を寄せ、せめて横をむいて写真機から必死に顔をそむける鈴希のすがたは絶妙で、小島は満足そうに笑う。
「そんなに恥ずかしいですか?」
「あ、あたりまだろう!」
「じゃ、今度は後ろむきで撮りましょう。それなら恥ずかしくないでしょう」
「え? あっ!」
 言うや、小島はおどろくほどの手際の良さで、いったん鈴希の両手をしばっている縄をゆるめるや、鈴希が抵抗する暇もあたえず、柱に抱きつくような姿勢で縄をしばりなおしてしまう。
「う、うわ」
 あっという間に鈴希は後ろむきの体勢で戒められてしまった。
「くっ……」
 この体勢では、たしかに顔はかくせるが、その分、無防備な下肢が小島の自由になってしまう。そのうえ手をやや柱の下側に縛られているので、否応なしに鈴希は腰をさらすような姿勢をとられてしまっていた。いっそ膝を地面につけれた方がましかもしれないが、それもかなわず、これみよがしに臀部をつきだすという惨めきわまりない姿勢をとらされてしまったのだ。しかも小島は燕尾服の裾をたくしあげ、鈴希の臀部をいっそうあらわにする。
「あ、嫌だ!」
 あわてる鈴希をなだめるように、小島は白い尻を軽くはたいた。それこそ馬の尻でもたたくように
「どうどう。可愛い尻ですね」
 馬あつかいされたことに鈴希は怒りのあまり身体をふるわせた。
「小島、い、いい加減に」
「しっ。静かにしてください。ほら、ここも飾ってあげますよ」
 悪ふざけする子どものように小島は茎からちぎった杜若の花を、鈴希のつややかな白い臀部のほのかな薄紅のあたりに嵌める。
「あ!」
 なにをされているか悟ったのだろう、鈴希は必死に腰をよじって下肢をゆらし、それを振り落とそうとするが、それはまるで男の手をねだっているようで、ひどく浅ましげに見えるだけだった。臀部は哀れなほどに晒されながらも、脱がされことのないまま膝まで下げられた下穿きやキュロット、長靴ちょうかとの対照がおそろしく煽情的だ。
「なんとも可愛いお姿ですね。そっちの趣味の男に売ったらさぞ稼げるでしょうよ。さ、鈴希様、お写真を撮りますね」
「よ、よせ! やめろ!」
 鈴希の声は湿ってきていた。
「後ろむきでも嫌ですか?」
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