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影花満開 六
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「写真に撮っておきたいな。写真機があればなぁ」
ハサピスが心から残念そうに呟き、つづけた。
「実を言うとな、あんたの写真、ちょっとばかり横流しさせてもらったんだ」
屈辱に朦朧としだしてきたアレクサンダーの耳にも、その言葉は聞き捨てできない。
「内緒だぜ。宮殿の使用人のなかには、こっそり館内で撮影したフィルムやネガを横流しして、観光客に売ったりする奴がいてな。まぁ、ちょっとした小遣い稼ぎだ」
「で、おまえもそれに一枚噛んだというわけか?」
ヴルブナがにんまり笑う。
「今更言うなよ。おまえにもやったろう?」
そもそも、二人が知り合ったきっかけは、酒場でハサピスが声をかけてきて、館の秘密の写真を売ろうとしたことだった。ハサピスはそのネガを使用人から買ったという。
「そ、そんな真似をよくも……」
額に汗をきらめかせながらも、アレクサンダーは言わずにいられない。
見知らぬ観光客たちが自分の恥ずかしい写真を買っているのかと思うといたたまれない。見知らぬ外国人たちであることが唯一の救いか。
だが、もし同国人で、万が一にも……、万が一にも、自分を知っている人間の手にわたったら、と思うだけで熱に充たされている身体が冷えてきそうだ。
「そんな顔するなよ。どこでもあることだぜ。帝国の軍内でも横流しなんて皆やってるぜ。そうでもしないと下っ端なんてなんの楽しみもない」
「ひ、卑怯者! 恥知らず! おまえは帝国軍の恥だ!」
打ちのめされそうになりながらも、アレクサンダーは怒りの言葉を吐きだした。
アレクサンダーの捨て身の反撃を、ヴルブナは鼻で笑った。
「ふん。そんな恥ずかしい格好を晒していて、よく言えるな。ほら、卵が出そうだぞ。もっとしっかり呑みこんでいろ」
「ああっ!」
身をかがめていたハサピスが指で押し入れたのだ。
「すごいな。蜜が垂れまくっているぞ。これは見かけによらずなかなか強かだな。ほら、落とすなよ」
「ううっ、うううっ……」
ハサピスが心から残念そうに呟き、つづけた。
「実を言うとな、あんたの写真、ちょっとばかり横流しさせてもらったんだ」
屈辱に朦朧としだしてきたアレクサンダーの耳にも、その言葉は聞き捨てできない。
「内緒だぜ。宮殿の使用人のなかには、こっそり館内で撮影したフィルムやネガを横流しして、観光客に売ったりする奴がいてな。まぁ、ちょっとした小遣い稼ぎだ」
「で、おまえもそれに一枚噛んだというわけか?」
ヴルブナがにんまり笑う。
「今更言うなよ。おまえにもやったろう?」
そもそも、二人が知り合ったきっかけは、酒場でハサピスが声をかけてきて、館の秘密の写真を売ろうとしたことだった。ハサピスはそのネガを使用人から買ったという。
「そ、そんな真似をよくも……」
額に汗をきらめかせながらも、アレクサンダーは言わずにいられない。
見知らぬ観光客たちが自分の恥ずかしい写真を買っているのかと思うといたたまれない。見知らぬ外国人たちであることが唯一の救いか。
だが、もし同国人で、万が一にも……、万が一にも、自分を知っている人間の手にわたったら、と思うだけで熱に充たされている身体が冷えてきそうだ。
「そんな顔するなよ。どこでもあることだぜ。帝国の軍内でも横流しなんて皆やってるぜ。そうでもしないと下っ端なんてなんの楽しみもない」
「ひ、卑怯者! 恥知らず! おまえは帝国軍の恥だ!」
打ちのめされそうになりながらも、アレクサンダーは怒りの言葉を吐きだした。
アレクサンダーの捨て身の反撃を、ヴルブナは鼻で笑った。
「ふん。そんな恥ずかしい格好を晒していて、よく言えるな。ほら、卵が出そうだぞ。もっとしっかり呑みこんでいろ」
「ああっ!」
身をかがめていたハサピスが指で押し入れたのだ。
「すごいな。蜜が垂れまくっているぞ。これは見かけによらずなかなか強かだな。ほら、落とすなよ」
「ううっ、うううっ……」
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