今度は、私の番です。

宵森みなと

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第五十四話 支える者たちの誇り

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サミエルとの濃密な魔道具設計の打ち合わせを終え、ようやく少し息をつく余裕ができた私は、静かに呼び鈴を鳴らした。応えてやって来たのは、局長室付きの侍女、マリアだった。彼女は物腰が柔らかく、いつも笑顔を絶やさない女性だが、その穏やかな表情の奥には、静かな強さが宿っている。

マリアは元騎士団員を夫に持ち、数年前、その夫を任務中に亡くしている。まだ小さな子どもを抱え、途方に暮れていた頃の話を、レオナが騎士団への聞き取り調査の際に耳にしてくれたのだ。

「お茶をお持ちしました。今日はマスカットの香りにしてみました。卒業と局長就任、本当におめでとうございます」

マリアは丁寧にお盆を置きながら、そう言ってにこやかに頭を下げた。

「ありがとう、マリア。今日は早番だったの? お子さんの具合はどう? 昨日、風邪をひいたって言ってたけれど」

「はい。熱も下がって、今朝はおかゆをちゃんと食べてくれました。託児所の隣に常駐している医師の先生も見に行ってくださって、大丈夫でしょうとのことでした」

「それは良かったわ。こじらせたら長引くものね……お母さんも少しは安心できたでしょう?」

私が微笑むと、マリアは胸に手をあてて深く頭を下げた。その目には、じわりと光るものがあった。

「主人が亡くなってからというもの、どうすれば生きていけるか、何を拠り所にすれば良いか分からず、ただ泣いてばかりでした。せめて働き口を探そうと、慰労金の受け取りに訪れた騎士団でお願いしていた時に、レオナ様が声をかけてくださって……こうして後方支援局で働かせていただき、子どもまで見ていただける環境まで整えてくださって……」

彼女の声が震えた。

「本当に、ありがとうございます。このご恩を返す術は、もうセレスティア様のおそばでお仕えする以外にありません。未熟者ではございますが、これからも全力でお仕えいたします」

その言葉に、胸がじんと熱くなる。

「マリア、それはね、私一人の力じゃないの。レオナやシオン、そして局員のみんな、陛下や行政、騎士団や軍部が手を差し伸べてくれたからこそ実現したこと。だからあなたは、もう“与えられる側”ではないの。今は“与える側”よ」

そう伝えると、マリアの目にぽろりと涙がこぼれた。

「あなたの働きが、これから同じような境遇の誰かを支える力になる。それこそが、後方支援局の意味。あなたは立派に、その一員としての役割を果たしているのよ。だから、胸を張って、自分の人生を誇りに思ってほしいわ」

マリアは泣き笑いの顔で、「はい……誇りを持ちます」と小さく頷いた。

その様子を扉の外から覗いていた他の侍女たちが、鼻をすする音を隠しきれずにいたのを私は聞き逃さなかった。ふっと笑みを浮かべながら、扉を開け、声をかけた。

「こっそり覗いていないで、お祝いがてら皆でお茶にしましょう。今日はめでたい日だから」

その言葉に、年齢も様々な侍女たちがぱあっと笑顔を浮かべ、一人、また一人と控えめに部屋へと入ってくる。丁寧に座り、お茶を受け取るその手には、どこか母のような温もりと、凛とした誇りがあった。

若き才能と、人生の厚みを知る者たちが、こうして一つ屋根の下で交わる場所。――それが、後方支援局という組織なのだと、改めて心に刻んだ。
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