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第1話 これは……転生ってやつか?
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「……あるある転生って、こんな感じで気づくものなのかしら?」
重厚なカーテンが揺れる静かな部屋の中、セリーヌは深々とソファに沈み込み、茫然とした。ついさっきまで純白のドレスを着て、絢爛な結婚式を終えたばかりのはずなのに、今の彼女の心境は穏やかとは程遠い。
「何でこのタイミングで思い出すのよ…」
鏡を見た瞬間に、フラッシュバックのように一気に蘇った記憶。事故でも高熱でも異世界召喚でもなく、ただの着替え中。なんの前触れもなく、バチンとスイッチが入った。
そして最悪なことに、前世の自分はどう考えても男だった。
セリーヌは両手で顔を覆った。別にBLが嫌いなわけじゃない。ただ人の好みにとやかく言う事がないだけで、偏見はない。だが、自分が当事者になるのは話が違う。この場合は、今自分は女性なんだが、今までの記憶に前世男性の記憶も交じり込んだ形だ。
「まだ、混乱中なのに……これから初夜…無理だわ……詰んだわ……」
震える指先でスカートの裾をギュッと掴む。逃げ場もなければ、選択肢もない。何より問題なのは、今になって思い出したことだ。もっと早く気づけていれば、まだ逃げ出す余地もあったはずなのに。初夜目前のこのタイミングで記憶が戻るとか、どんな罰ゲームだ。先程までの、ライナルトへの恋心や切ない気持ち、不安感が吹っ飛び、乙女心よりも、現実問題が急務すぎた。
ガチャリ。
ノックと共に扉の向こうから声がした。
「セリーヌ様、旦那様のご用意が整いました」
その瞬間、彼女の背筋が凍った。ゆっくりと扉を開けると、立っていたのはこの屋敷の侍女長。品のある女性だが、その笑みは――あまりにも優しく、あまりにも無慈悲だった。
「セリーヌ様、ご心配なく。旦那様に全てお任せになれば、きっと幸せになれますわ」
(それ、死亡フラグにしか聞こえないんだけど……!)
セリーヌは震える声で縋った。
「ふ、不安で……今日じゃなくても、良いのでは……その……別の日にでも……」
(お願いだから、今日は勘弁して欲しい……現実問題、男性だった記憶が処理しきれない……!)
「大丈夫です。明日の朝には、幸せに包まれておりますよ。さあ、参りましょう」
にっこり微笑んだ侍女長に、セリーヌは引きずられるようにして、屋敷の主であり、夫となったライナルトの部屋へと連れて行かれた。
ガウン姿の自分を見下ろし、視線がとまる。
(……え、これ、レース? 白の……うそ! これ……どう見ても“どうぞご自由に召し上がれ”なヤツ……)
とどめを刺すように、扉の奥からゆっくりと男が立ち上がった。
「――終わった……」
セリーヌの脳内で鐘が鳴った。
だが。
ライナルトは静かに歩み寄ると、ぺこりと頭を下げ、淡々と言った。
「……すまない。俺には、すでに想い人がいる。君のことを抱くことはできない。だから、白い結婚を望みたい。三年後には、正式に離縁を――」
「……うっっっ!!!!」
思わず涙がぶわっと込み上げた。何だこの救済展開!?
神、いた。いやマジでいた。転生してまで絶望ルート確定かと思ったのに、まさかの白紙契約とは。セリーヌは震える手で口元を押さえながら、声を振り絞った。
「ラ、ライナルト様……頭を上げてください。わたくし、承知いたしました……ので、部屋に、戻ります……」
そう言って立ち上がろうとしたが、――足が言うことを聞かなかった。
あまりの緊張と解放の落差に、完全に脚の力が抜けていた。涙が止まらない。ふらふらとよろめきながら、なんとか部屋を後にした。
侍女長が廊下で待っていた。
「セリーヌ様!? どうされました!?」
心配する彼女に、セリーヌは言った。
「……ライナルト様には……お好きな方が、いらっしゃるそうです……白い結婚を、と……」
その瞬間、膝から崩れ落ち、気を失った。
「セリーヌ様っ!」
遠のく意識の中、叫ぶ声だけが耳に残った――。
***
その夜、侍女長はライナルトを部屋に呼び出し、静かに、しかし確実に怒りを滲ませて言い放った。
「坊っちゃま……バカですか?」
「……え?」
「結婚式を終えたばかりの花嫁に、“好きな女がいる”だの、“三年後に離縁してくれ”だの、何を言ってらっしゃるのですか!? セリーヌ様がどんなに不安を押し殺して、勇気を出して部屋に向かわれたか、あなたは――」
ライナルトは黙って、それを聞いていた。さっきまで見せたセリーヌの震える身体。涙を見せながらも今にも崩れそうな足元。あれが、幸せな結婚だと信じ初夜を迎える花嫁の姿だったのかと――胸に痛みが走った。
そうして彼の“白い結婚”は、まさかの初日から波乱含みで幕を開けたのだった。
重厚なカーテンが揺れる静かな部屋の中、セリーヌは深々とソファに沈み込み、茫然とした。ついさっきまで純白のドレスを着て、絢爛な結婚式を終えたばかりのはずなのに、今の彼女の心境は穏やかとは程遠い。
「何でこのタイミングで思い出すのよ…」
鏡を見た瞬間に、フラッシュバックのように一気に蘇った記憶。事故でも高熱でも異世界召喚でもなく、ただの着替え中。なんの前触れもなく、バチンとスイッチが入った。
そして最悪なことに、前世の自分はどう考えても男だった。
セリーヌは両手で顔を覆った。別にBLが嫌いなわけじゃない。ただ人の好みにとやかく言う事がないだけで、偏見はない。だが、自分が当事者になるのは話が違う。この場合は、今自分は女性なんだが、今までの記憶に前世男性の記憶も交じり込んだ形だ。
「まだ、混乱中なのに……これから初夜…無理だわ……詰んだわ……」
震える指先でスカートの裾をギュッと掴む。逃げ場もなければ、選択肢もない。何より問題なのは、今になって思い出したことだ。もっと早く気づけていれば、まだ逃げ出す余地もあったはずなのに。初夜目前のこのタイミングで記憶が戻るとか、どんな罰ゲームだ。先程までの、ライナルトへの恋心や切ない気持ち、不安感が吹っ飛び、乙女心よりも、現実問題が急務すぎた。
ガチャリ。
ノックと共に扉の向こうから声がした。
「セリーヌ様、旦那様のご用意が整いました」
その瞬間、彼女の背筋が凍った。ゆっくりと扉を開けると、立っていたのはこの屋敷の侍女長。品のある女性だが、その笑みは――あまりにも優しく、あまりにも無慈悲だった。
「セリーヌ様、ご心配なく。旦那様に全てお任せになれば、きっと幸せになれますわ」
(それ、死亡フラグにしか聞こえないんだけど……!)
セリーヌは震える声で縋った。
「ふ、不安で……今日じゃなくても、良いのでは……その……別の日にでも……」
(お願いだから、今日は勘弁して欲しい……現実問題、男性だった記憶が処理しきれない……!)
「大丈夫です。明日の朝には、幸せに包まれておりますよ。さあ、参りましょう」
にっこり微笑んだ侍女長に、セリーヌは引きずられるようにして、屋敷の主であり、夫となったライナルトの部屋へと連れて行かれた。
ガウン姿の自分を見下ろし、視線がとまる。
(……え、これ、レース? 白の……うそ! これ……どう見ても“どうぞご自由に召し上がれ”なヤツ……)
とどめを刺すように、扉の奥からゆっくりと男が立ち上がった。
「――終わった……」
セリーヌの脳内で鐘が鳴った。
だが。
ライナルトは静かに歩み寄ると、ぺこりと頭を下げ、淡々と言った。
「……すまない。俺には、すでに想い人がいる。君のことを抱くことはできない。だから、白い結婚を望みたい。三年後には、正式に離縁を――」
「……うっっっ!!!!」
思わず涙がぶわっと込み上げた。何だこの救済展開!?
神、いた。いやマジでいた。転生してまで絶望ルート確定かと思ったのに、まさかの白紙契約とは。セリーヌは震える手で口元を押さえながら、声を振り絞った。
「ラ、ライナルト様……頭を上げてください。わたくし、承知いたしました……ので、部屋に、戻ります……」
そう言って立ち上がろうとしたが、――足が言うことを聞かなかった。
あまりの緊張と解放の落差に、完全に脚の力が抜けていた。涙が止まらない。ふらふらとよろめきながら、なんとか部屋を後にした。
侍女長が廊下で待っていた。
「セリーヌ様!? どうされました!?」
心配する彼女に、セリーヌは言った。
「……ライナルト様には……お好きな方が、いらっしゃるそうです……白い結婚を、と……」
その瞬間、膝から崩れ落ち、気を失った。
「セリーヌ様っ!」
遠のく意識の中、叫ぶ声だけが耳に残った――。
***
その夜、侍女長はライナルトを部屋に呼び出し、静かに、しかし確実に怒りを滲ませて言い放った。
「坊っちゃま……バカですか?」
「……え?」
「結婚式を終えたばかりの花嫁に、“好きな女がいる”だの、“三年後に離縁してくれ”だの、何を言ってらっしゃるのですか!? セリーヌ様がどんなに不安を押し殺して、勇気を出して部屋に向かわれたか、あなたは――」
ライナルトは黙って、それを聞いていた。さっきまで見せたセリーヌの震える身体。涙を見せながらも今にも崩れそうな足元。あれが、幸せな結婚だと信じ初夜を迎える花嫁の姿だったのかと――胸に痛みが走った。
そうして彼の“白い結婚”は、まさかの初日から波乱含みで幕を開けたのだった。
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