24 / 29
第23話 行き違いと、胸の棘
しおりを挟む
ランベル国の王族の一行が、ようやく帰国した。
喧騒に包まれていた王宮にも、ゆっくりと日常が戻り始める。
騎士団も通常勤務体制へと移行し、少しだけ息をつける時間が生まれた。
ライナルトは、そのわずかな隙間を縫って、リサエル公爵家の門をくぐった。
――どうしても、会っておきたかった。
応接間で出迎えたのは、公爵サミエルだった。
彼は、てっきりセリーヌからライナルトに話が通っていると思っていたからか、満足げに笑いながら口を開いた。
「いやぁ、ライナルト君も大変だったな。……セリーヌもだよ。社会見学のつもりだった外務大臣の補佐が、まさか接待まで任されるとはな。前日まで“務まるのかしら”と悩んでいたが……最後までやり遂げられたのは、君がいてくれたからだろうな。セリーヌも、もうすぐ帰ってくるはずだ。一緒に夕食でもどうだ?」
――その言葉に、ライナルトの表情が変わった。
「……外務大臣の、手伝い?」
声に怒りが滲んでいた。
「私は……そのような話、初耳でした。知ったのは謁見場で、セリーヌの姿を見かけたからです。セリーヌは……なぜ、黙っていたのですか?」
サミエルは目を瞬き、戸惑いの色を浮かべた。
「……いや……セリーヌが君には話してあると……。すまない、行き違いかもしれない。帰ってきたら、直接聞こう。」
そのとき、使用人が一礼しながら知らせた。
「セリーヌ様がご帰宅されました。」
その声に続いて、すぐに扉が開かれた。
「失礼いたします。お父様、ライナルト様。ただいま戻りました」
柔らかな微笑を浮かべて、セリーヌが姿を現す。
けれど、部屋の空気は、すでに緊張の色を孕んでいた。
「セリーヌ」
サミエルが静かに尋ねた。
「ライナルト君に、外務省の手伝いのことは話していないのか?」
セリーヌは小さく頷いた。
「……ええ。お忙しい方ですから、直接お会いするより先に、手紙でご連絡差し上げました。まず簡単に事情をお書きして、その後に詳細を書いた手紙と、王宮に通っている旨……そして、“お時間が合えばお会いしたい”と。最後には、ランベル国の接待をお受けしたこと、“頑張りますので見守ってください”と記して……合計3通、マデラン伯爵家にお届けしましたわ。それが……どうかされました?」
その無邪気な問いに、ライナルトが怒りを抑えきれず声を上げた。
「俺は……そのどれも知らなかった。セリーヌが外務大臣の補佐をしていたことも、ランベル国の接待のことも……全く知らなかった!」
彼の声が鋭く響く。
「……手紙が屋敷に届いたところで、あの時期、俺には帰宅する暇すらなかった。見れるわけがない。王宮に来ていたなら……なぜ、近衛騎士団の控室まで知らせに来なかった?」
言葉の棘が、セリーヌの胸を静かに刺した。
彼女は、ほんのわずかだけ目を伏せ、そして寂しげに笑った。
「……ライナルト様は……わたくしが、“伝える努力”を怠ったと、そうお思いなのですね。」
その一言に、ライナルトははっとした。
けれど、もう遅かった。
セリーヌは、ゆっくりと息を吐いて首を振った。
「……わたくし……貴方に伝えるのに、どれだけの手段を講じなければならないのでしょうね。」
その声には、疲労と、静かな悲しみが滲んでいた。
「お父様、ライナルト様……わたくし、本日は少し……疲れてしまいました。どうか、お先に休ませていただきます。」
深く頭を下げ、セリーヌは部屋を後にした。
ライナルトは、追いかけることも、止めることもできなかった。
――ただ、後悔だけが胸を蝕んでいた。
シモンとセリーヌ。
あの巻き戻る前の時代に、確かに見た、仲睦まじい姿。
それが再び重なりはじめているのではないか――そんな焦りが、彼を苛立たせ、言葉を粗くしたのだった。
「……リサエル公爵。……申し訳ありません。セリーヌを責めるつもりはなかったのです……。日を改めて、改めて話をさせてください。」
サミエルがゆっくりと頷く中、ライナルトは静かに応接間を後にした。
――
久しぶりに帰ったマデラン伯爵家の執務室。
溜まった書類の山、その隅に、封をされた手紙がいくつか積まれていた。
乱雑な手紙の束をかき分ける。
――あった。セリーヌの筆跡。
一通、二通、三通……確かに、彼女の言葉は、ここにあった。
手紙を読み進めるうちに、胸が締めつけられていく。
倒れていたシモンを介抱し、無理をしないよう補佐を頼まれた事。
ランベル国の接待役に選ばれ、緊張しながらも引き受けたこと。
そして、そのどの手紙にも書かれていた――
《ライナルト様。どうかお身体をご自愛くださいませ。無理は、なさらないでくださいね。》
ライナルトは、手紙を握りしめたまま、目を伏せた。
(……彼女なりに、俺に“伝えて”くれていた……)
(……それなのに、俺は……)
連絡一つ、寄せられなかったのは自分の方だった。
伝えようとする彼女の心に、気づこうとしなかった――自分こそが、彼女を遠ざけていたのだ。
――
翌朝、騎士団の詰所に向かうと、イクロンが声をかけてきた。
「おはようございます。副団長、昨夜……婚約者様と揉めたりしませんでした?」
「……“連絡一つ取るのに、どれだけの手段を講じなければならないのでしょう”とは言われたな……」
「やっぱり! うちのナリスティアにも言われましたよ。“王宮にいるなら、取り次ぎしてよ!”って。手紙もダメ、取り次ぎもダメ、もうどうしたらいいのよって怒ってました。」
「……取り次ぎもダメだったのか……?」
「ええ。あの時期、他国の王子が滞在してましたからね。機密事項で、文官たちが取り次ぎを断ってたみたいですよ。」
「……そうか……」
「まあ……副団長の婚約者は、外務大臣の補佐してたから、分かってたと思いますけどね」
そう言い残し、イクロンは訓練場へと向かって行った。
取り残されたライナルトは、何も言えず、ただ立ち尽くした。
(……もし、時を巻き戻せるのなら)
もう二度と後悔しないように。
彼女を大切にして、離さず、ちゃんと想いを伝えようと――そう、誓ったはずだった。
なのに。
昨夜のセリーヌの、あのため息。
まるで心が折れたかのような、あの目――
……それは、かつて離縁届にサインしたあの瞬間の、冷めた瞳と、よく似ていた。
――胸の奥が、ひやりと冷たくなる。
不意に、嫌な予感が、背筋を這い上がってきた。
喧騒に包まれていた王宮にも、ゆっくりと日常が戻り始める。
騎士団も通常勤務体制へと移行し、少しだけ息をつける時間が生まれた。
ライナルトは、そのわずかな隙間を縫って、リサエル公爵家の門をくぐった。
――どうしても、会っておきたかった。
応接間で出迎えたのは、公爵サミエルだった。
彼は、てっきりセリーヌからライナルトに話が通っていると思っていたからか、満足げに笑いながら口を開いた。
「いやぁ、ライナルト君も大変だったな。……セリーヌもだよ。社会見学のつもりだった外務大臣の補佐が、まさか接待まで任されるとはな。前日まで“務まるのかしら”と悩んでいたが……最後までやり遂げられたのは、君がいてくれたからだろうな。セリーヌも、もうすぐ帰ってくるはずだ。一緒に夕食でもどうだ?」
――その言葉に、ライナルトの表情が変わった。
「……外務大臣の、手伝い?」
声に怒りが滲んでいた。
「私は……そのような話、初耳でした。知ったのは謁見場で、セリーヌの姿を見かけたからです。セリーヌは……なぜ、黙っていたのですか?」
サミエルは目を瞬き、戸惑いの色を浮かべた。
「……いや……セリーヌが君には話してあると……。すまない、行き違いかもしれない。帰ってきたら、直接聞こう。」
そのとき、使用人が一礼しながら知らせた。
「セリーヌ様がご帰宅されました。」
その声に続いて、すぐに扉が開かれた。
「失礼いたします。お父様、ライナルト様。ただいま戻りました」
柔らかな微笑を浮かべて、セリーヌが姿を現す。
けれど、部屋の空気は、すでに緊張の色を孕んでいた。
「セリーヌ」
サミエルが静かに尋ねた。
「ライナルト君に、外務省の手伝いのことは話していないのか?」
セリーヌは小さく頷いた。
「……ええ。お忙しい方ですから、直接お会いするより先に、手紙でご連絡差し上げました。まず簡単に事情をお書きして、その後に詳細を書いた手紙と、王宮に通っている旨……そして、“お時間が合えばお会いしたい”と。最後には、ランベル国の接待をお受けしたこと、“頑張りますので見守ってください”と記して……合計3通、マデラン伯爵家にお届けしましたわ。それが……どうかされました?」
その無邪気な問いに、ライナルトが怒りを抑えきれず声を上げた。
「俺は……そのどれも知らなかった。セリーヌが外務大臣の補佐をしていたことも、ランベル国の接待のことも……全く知らなかった!」
彼の声が鋭く響く。
「……手紙が屋敷に届いたところで、あの時期、俺には帰宅する暇すらなかった。見れるわけがない。王宮に来ていたなら……なぜ、近衛騎士団の控室まで知らせに来なかった?」
言葉の棘が、セリーヌの胸を静かに刺した。
彼女は、ほんのわずかだけ目を伏せ、そして寂しげに笑った。
「……ライナルト様は……わたくしが、“伝える努力”を怠ったと、そうお思いなのですね。」
その一言に、ライナルトははっとした。
けれど、もう遅かった。
セリーヌは、ゆっくりと息を吐いて首を振った。
「……わたくし……貴方に伝えるのに、どれだけの手段を講じなければならないのでしょうね。」
その声には、疲労と、静かな悲しみが滲んでいた。
「お父様、ライナルト様……わたくし、本日は少し……疲れてしまいました。どうか、お先に休ませていただきます。」
深く頭を下げ、セリーヌは部屋を後にした。
ライナルトは、追いかけることも、止めることもできなかった。
――ただ、後悔だけが胸を蝕んでいた。
シモンとセリーヌ。
あの巻き戻る前の時代に、確かに見た、仲睦まじい姿。
それが再び重なりはじめているのではないか――そんな焦りが、彼を苛立たせ、言葉を粗くしたのだった。
「……リサエル公爵。……申し訳ありません。セリーヌを責めるつもりはなかったのです……。日を改めて、改めて話をさせてください。」
サミエルがゆっくりと頷く中、ライナルトは静かに応接間を後にした。
――
久しぶりに帰ったマデラン伯爵家の執務室。
溜まった書類の山、その隅に、封をされた手紙がいくつか積まれていた。
乱雑な手紙の束をかき分ける。
――あった。セリーヌの筆跡。
一通、二通、三通……確かに、彼女の言葉は、ここにあった。
手紙を読み進めるうちに、胸が締めつけられていく。
倒れていたシモンを介抱し、無理をしないよう補佐を頼まれた事。
ランベル国の接待役に選ばれ、緊張しながらも引き受けたこと。
そして、そのどの手紙にも書かれていた――
《ライナルト様。どうかお身体をご自愛くださいませ。無理は、なさらないでくださいね。》
ライナルトは、手紙を握りしめたまま、目を伏せた。
(……彼女なりに、俺に“伝えて”くれていた……)
(……それなのに、俺は……)
連絡一つ、寄せられなかったのは自分の方だった。
伝えようとする彼女の心に、気づこうとしなかった――自分こそが、彼女を遠ざけていたのだ。
――
翌朝、騎士団の詰所に向かうと、イクロンが声をかけてきた。
「おはようございます。副団長、昨夜……婚約者様と揉めたりしませんでした?」
「……“連絡一つ取るのに、どれだけの手段を講じなければならないのでしょう”とは言われたな……」
「やっぱり! うちのナリスティアにも言われましたよ。“王宮にいるなら、取り次ぎしてよ!”って。手紙もダメ、取り次ぎもダメ、もうどうしたらいいのよって怒ってました。」
「……取り次ぎもダメだったのか……?」
「ええ。あの時期、他国の王子が滞在してましたからね。機密事項で、文官たちが取り次ぎを断ってたみたいですよ。」
「……そうか……」
「まあ……副団長の婚約者は、外務大臣の補佐してたから、分かってたと思いますけどね」
そう言い残し、イクロンは訓練場へと向かって行った。
取り残されたライナルトは、何も言えず、ただ立ち尽くした。
(……もし、時を巻き戻せるのなら)
もう二度と後悔しないように。
彼女を大切にして、離さず、ちゃんと想いを伝えようと――そう、誓ったはずだった。
なのに。
昨夜のセリーヌの、あのため息。
まるで心が折れたかのような、あの目――
……それは、かつて離縁届にサインしたあの瞬間の、冷めた瞳と、よく似ていた。
――胸の奥が、ひやりと冷たくなる。
不意に、嫌な予感が、背筋を這い上がってきた。
557
あなたにおすすめの小説
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
王子様への置き手紙
あおた卵
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
私を追い出した後に後悔しても知りません
天宮有
恋愛
伯爵家の次女マイラは、結婚してすぐ夫ラドスに仕事を押しつけられてしまう。
ラドスは他国へ旅行に行って、その間マイラが働き成果を出していた。
1ヶ月後に戻ってきた夫は、マイラの姉ファゾラと結婚すると言い出す。
ラドスはファゾラと旅行するために、マイラを働かせていたようだ。
全て想定していたマイラは離婚を受け入れて、家族から勘当を言い渡されてしまう。
その後「妹より優秀」と話していたファゾラが、マイラより劣っていると判明する。
ラドスはマイラを連れ戻そうとするも、どこにいるのかわからなくなっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる