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第19話
ジークエルとの再会の日、何故かシーラおば様とイザベルおば様に加え、カインとモーリスまでが揃って同行することになった。
指定していたレストランに到着すると、貸し切りの個室へと案内される。事前に広めの部屋へ変更をお願いしておいたものの、こちらは二人きりの予定が六人に増えているのだから、少々窮屈になるかと心配していた。ところが、相手方も人数が膨らんでいたようで、予想外に釣り合いが取れてしまった。
「テレンス子爵家の皆さま、本日はお待たせいたしました。わたくし、デュパール子爵家の娘マイラと申します。こちらは父のサイモンです。そして母方の叔母であり、エレンス王国マックエル伯爵夫人のイザベル様、そのご子息のカイン様。もう一人は、同じく母方の叔母でアジェルダ侯爵夫人のシーラ様と、そのご子息モーリス様でございます」
全員に軽く視線を送りながら席に着くと、テレンス子爵家の面々は揃って無骨な体躯と厳しい表情で固まっていた。おば様方も一瞬目を見張ったが、そこは経験豊かな淑女、驚きの色を表には出さない。対してカインとモーリスは、相手を値踏みするように険しい眼差しを向けていたが、敢えて言葉にはしなかった。
沈黙が長引く中、痺れを切らした父サイモンが「ガニエル、いつまで黙っている。自己紹介を」と促す。
すると相手方当主は頬を赤く染め、「す、すまない。女神が舞い降りたのかと……おば様方のあまりの美しさに見惚れていた」と真顔で告げた。その言葉に、女神と称された二人の頬も緩み、口元には満足げな笑みが浮かぶ。
改めて当主ガニエルが紹介を始める。「私がテレンス子爵家当主のガニエルだ。こちらが三男のジークエル、その隣が次男ミロワール、そして長男のアレックスだ」
父が視線で合図を送ってきた。
「本日はマイラの事情をお話しした上で、今後について相談できればと思っています。マイラ、話せるか?」
「はい、お父様。問題ございません」
マイラは姿勢を正し、落ち着いた口調で話し出す。
「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、わたくしは港町で『海辺書房兼・人生相談所』を営んでおります。表の顔はそこまでですが、裏では貴族向けに“役者”を派遣する『影の一座』を仕切っております。さらに王都には系列の海雪出版社、海風劇団があり、その経営も担っています。従業員の半数以上は孤児院の出身で、わたくし自身も孤児院育ちです。十歳で働き始め、十二歳で現在の事業形態を整えました。孤児院の第二の母であり、父サイモンの妻であるマリン様から事業名をいただき、母と祖母のご縁からおば様方やご親族とも繋がりを持てました。そしてサイモンと養子縁組を結び、親子となったのです。このたび、ジークエル様とお見合いをさせていただき、事情を受け入れていただけるようでしたら、お付き合いから始められればと考えております」
言い終えるや否や、ジークエルが勢いよく立ち上がり、「今のお話を聞いて、ますます惹かれました。ぜひお付き合いからお願いいたします!」と深々と頭を下げた。
すると次男のミロワールまでが立ち上がり、「本日は弟の相手を拝見するつもりでしたが……一目惚れしました。お付き合いからお願いします!」と告げる。
その直後、長男アレックスまで腰を浮かせようとしたところで、ガニエルが素早く羽交い締めにし、「言わせるか!弟の恋路を邪魔するな!」と次男の頭を軽く叩いた。場の空気が一瞬で崩れ、マイラはクスクスと笑い、おば様方も口元を押さえて上品に笑みを漏らす。警戒心を抱いていたカインとモーリスは、予想外の家族模様に唖然とした。
「ミロワール様、申し訳ありませんが、わたくしはジークエル様とお付き合いから始めさせていただきます」
その言葉に、ジークエルの目には滂沱の涙が溢れ、「おやじ、これは夢かもしれん。頬を叩いてくれ!」
「おうよ」――バチーン、と豪快な音が響く。長男と次男は不満げに弟を睨みつけるが、当の本人は頬を押さえつつも幸せそうだった。
イザベルとシーラは顔を見合わせ、「本当に面白いご家族だわ。マイラが言っていた通り、一緒にいれば毎日笑いが絶えなそう」「でも、まだ誰と結ばれるかは分からないわよ。お付き合いは自由なんだから」「ええ、最後に選ぶのはマイラ次第ね」と囁き合う。
それを耳にしたジークエルの瞳がわずかに揺れる。
「マイラ嬢、あの……」
「ジークエル様、今後は“ジーク”とお呼びしますので、わたくしのことは“マイラ”と呼んでくださいませ」
「マイラ……二人きりでデートがしたい!」
「では、ジークのお休みの日にでも」
「明日、休みです!」
「では明日で」
そのやり取りを聞いていた二人のおば様は、視線を交わしながら、そっと“明日の尾行計画”を練り始めていた。
指定していたレストランに到着すると、貸し切りの個室へと案内される。事前に広めの部屋へ変更をお願いしておいたものの、こちらは二人きりの予定が六人に増えているのだから、少々窮屈になるかと心配していた。ところが、相手方も人数が膨らんでいたようで、予想外に釣り合いが取れてしまった。
「テレンス子爵家の皆さま、本日はお待たせいたしました。わたくし、デュパール子爵家の娘マイラと申します。こちらは父のサイモンです。そして母方の叔母であり、エレンス王国マックエル伯爵夫人のイザベル様、そのご子息のカイン様。もう一人は、同じく母方の叔母でアジェルダ侯爵夫人のシーラ様と、そのご子息モーリス様でございます」
全員に軽く視線を送りながら席に着くと、テレンス子爵家の面々は揃って無骨な体躯と厳しい表情で固まっていた。おば様方も一瞬目を見張ったが、そこは経験豊かな淑女、驚きの色を表には出さない。対してカインとモーリスは、相手を値踏みするように険しい眼差しを向けていたが、敢えて言葉にはしなかった。
沈黙が長引く中、痺れを切らした父サイモンが「ガニエル、いつまで黙っている。自己紹介を」と促す。
すると相手方当主は頬を赤く染め、「す、すまない。女神が舞い降りたのかと……おば様方のあまりの美しさに見惚れていた」と真顔で告げた。その言葉に、女神と称された二人の頬も緩み、口元には満足げな笑みが浮かぶ。
改めて当主ガニエルが紹介を始める。「私がテレンス子爵家当主のガニエルだ。こちらが三男のジークエル、その隣が次男ミロワール、そして長男のアレックスだ」
父が視線で合図を送ってきた。
「本日はマイラの事情をお話しした上で、今後について相談できればと思っています。マイラ、話せるか?」
「はい、お父様。問題ございません」
マイラは姿勢を正し、落ち着いた口調で話し出す。
「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、わたくしは港町で『海辺書房兼・人生相談所』を営んでおります。表の顔はそこまでですが、裏では貴族向けに“役者”を派遣する『影の一座』を仕切っております。さらに王都には系列の海雪出版社、海風劇団があり、その経営も担っています。従業員の半数以上は孤児院の出身で、わたくし自身も孤児院育ちです。十歳で働き始め、十二歳で現在の事業形態を整えました。孤児院の第二の母であり、父サイモンの妻であるマリン様から事業名をいただき、母と祖母のご縁からおば様方やご親族とも繋がりを持てました。そしてサイモンと養子縁組を結び、親子となったのです。このたび、ジークエル様とお見合いをさせていただき、事情を受け入れていただけるようでしたら、お付き合いから始められればと考えております」
言い終えるや否や、ジークエルが勢いよく立ち上がり、「今のお話を聞いて、ますます惹かれました。ぜひお付き合いからお願いいたします!」と深々と頭を下げた。
すると次男のミロワールまでが立ち上がり、「本日は弟の相手を拝見するつもりでしたが……一目惚れしました。お付き合いからお願いします!」と告げる。
その直後、長男アレックスまで腰を浮かせようとしたところで、ガニエルが素早く羽交い締めにし、「言わせるか!弟の恋路を邪魔するな!」と次男の頭を軽く叩いた。場の空気が一瞬で崩れ、マイラはクスクスと笑い、おば様方も口元を押さえて上品に笑みを漏らす。警戒心を抱いていたカインとモーリスは、予想外の家族模様に唖然とした。
「ミロワール様、申し訳ありませんが、わたくしはジークエル様とお付き合いから始めさせていただきます」
その言葉に、ジークエルの目には滂沱の涙が溢れ、「おやじ、これは夢かもしれん。頬を叩いてくれ!」
「おうよ」――バチーン、と豪快な音が響く。長男と次男は不満げに弟を睨みつけるが、当の本人は頬を押さえつつも幸せそうだった。
イザベルとシーラは顔を見合わせ、「本当に面白いご家族だわ。マイラが言っていた通り、一緒にいれば毎日笑いが絶えなそう」「でも、まだ誰と結ばれるかは分からないわよ。お付き合いは自由なんだから」「ええ、最後に選ぶのはマイラ次第ね」と囁き合う。
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「マイラ嬢、あの……」
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