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35.つまらない悲鳴の女
運よく生まれた時から金持ちだったから、シューバにとって嗜好を満たし続けることは簡単だった。
何を手放しても、自力では届かない何かを求める人間は後を絶たず、シューバは、金と交換に自ら壊されに来る人間に不自由しなかった。
そのシューバが、これまでの人生の中で聞いた最もつまらない悲鳴、それがメイのものだ。
外資のくせに本社をホゴラシュに構えた変わり者の神崎優のお気に入りだった女。
サーファ・カウルの手前表に出さなかっただけで、父親は優が嫌いだったから、シューバの妻にするといって、メイをさらうように買ってきたのには驚いた。
ただ、シューバ自身は、あの悲鳴を聞くまで、メイに特別な感情はなかったと思っている。
たまに父親がつつきまわしていたが、命の危険がないレベルにはうまくかわしていて、頭も身体能力も相当高いだろうということは分かった。
だからまぁ、特に結婚に反対する理由もなく、放っておいた。
そうしたら、どこからか入り込んだ男に襲われたそうだ。
特別な感情はないとは言っても、会話が成り立たない関係でもないのだから、助けを求めにくればいいものを。
メイは何の弁解もせずに引きずり出され、公開刑になった。
鞭打ちの場所で聞いたのは。
何も求めていない、何も訴えない、ただ痛覚のせいで軋んだ筋肉が押し出した音としか言いようのない悲鳴。
あの悲鳴に比べれば、罠にかかったトカゲの鳴き声の方が10倍は詩的だ。
うまく説明できないが、あまりのつまらなさに、感情が動いたのだと思う。
刑が終わったら、あれを取り返したいと、父親に言った。
父親は、嬉しそうに『わかるぞ』と返した。
ああいう娘を苦しみに屈服させて、つまらない藁に縋らせるのがたまらないのだ。
どんな苦しみに弱いのだろうか。どんな風に壊れるのだろうか。想像するだけで気分が高揚するものだな。お前は本当に私に似ているな、と。
それを聞いた途端、なんとなく興味がうすれて、シューバがそれ以上メイをねだることはなかった。
そのメイが、今、シューバの目の前に跪いている。
「ひさし、ぶりだな」
「はい」
「壊されにきたのか?」
「お願いがあってまいりました」
「言ってみろ」
「時期が来たら、サシャを、解放していただきたいのです」
「サシャ?」
「セジスタン区画の第一病院にゼルダ社がVIP扱いで保護している患者です。頭部銃創貫通で運ばれました。意識は戻っていないものの手術は成功したと聞いています」
「ああ。神崎優が残した唯一の完全なノウハウパーツ、という触れ込みのあれか?社のものが手放さないと思うぞ」
シューバはできない約束はしない。
「時期が来たら、で構いません。先に私が、サシャが唯一でないことを証明します。それまでは友人たちのお見舞いだけ許可していただければ充分です」
そんな証明ができるなら、意識が戻るかすら怪しい重病人を相手にするより数倍有利な取引だ。
「なるほど。言われてみればお前が一番優と近かった。お前のほうが上位のノウハウパーツなわけか。証明して交代すると?」
「はい」
メイがはっきりと言い切ったのを、シューバが興味深そうにのぞき込む。ゼルダにもシューバにも不利がない条件だが、メイに利がない。
「『うち』がどんなところか知っているよなぁ。ノウハウを吐いたからって無事では済まないぞ」
婚約者の立場ならまだいい。父親もシューバの顔色を窺ってそこまで酷い無茶はしなかった。だが、他の男と通じたと公開刑になった今、たとえシューバがかばったところでまともな妻扱いされるとは思えない。
「さきに、シューバ様が遊ぶ、という体裁も難しいでしょうか?」
「は?」
「私がノウハウを開示していく過程で、ゼルダ社での実施の障害がいくつも出て来ます。その障害の、最も効率的な排除方法は、サーファ・カウルが遺した工場の買収になります。引き継いだサーファ・デジュは工場を活用できていませんので格安で契約させます」
「医薬品工場か?お前が契約をとってくる気か?」
「はい。国内からは兵器転用を求める声が出ると思いますが、そちらに設備投資しても、国際条約に引っかかりまくって、外貨は得られません。また、ティールが狙っている磁力浮遊や落雷回避系は、ホゴラシュで実施したが最後、遮蔽困難で鉱脈ごと劣化します。ナノ磁石で医療系に進む分には、封じ込め設備はサーファ・カウルがもっていますし、排水処理はゼルダが強いので勝てます」
怒涛のような情報量に唖然とする。
こんな女だったのか。
よく初回の尋問で暴走しなかったな。
ああ、違うな、情報のしっぽを掴ませないように気を張り続けたから心臓が止まりかける程負荷がかかったのか。拷問慣れした父親が薬の耐性もわからない初回で殺しかけるなど意外だったが納得だ。
「まてまてまて。お前に事業の展望があることはよくわかったし、ノウハウに自信があるのだろうことも分かった。が、俺が言っているのはそういう話ではない」
お前、壊されるぞ。
「先に仕事をしたいだけで、最終的に壊れることについては、合意いたします」
まるで、危ないっつってるだろ、ときこえてきそうなシューバの行間に、メイの感情が少しだけ動く。心配してくれるわけか。本当に、割といい人、だな。
実際のところメイは、彼のことをよく知らない。
ただ、だれがみても頭が良くて、優が気に入っていた、それだけの知識。
今は近づけないけど、あのクソオヤジが死んだら仲よくしてみようね、メイはきっと良い友達になれるよ、と、優はメイにそう言ったのだ。
懐かしい気持ちがない訳ではないが、残念ながら今は、仲よくしたいわけではない。
メイからすれば、むしろさっさと壊れたいとさえ思う。
あかりにノウハウを伝えて保険は作ったが、メイは、秘匿をあきらめてはいない。
ノウハウを秘匿したまま目的を達成できるかは、五分五分だと思っている。
シューバはメイがサシャよりたくさんノウハウを知っていると信じる根拠があるし、検証する能力もあるから、メイがノウハウを実践して見せさえすればサシャとメイの交換に合意する。
だが一方で、サシャの解放、というカードを切れるのは現総帥のシューバの父で、交換の対価はシューバの父が払うことになる。
シューバの父は既に認知機能に障害が出ていて、意識も散漫だが、執着心だけは異常に強い。自分が対価を払ってメイを玩具にした場合、メイが壊れるまで自分で使おうとすると思う。
なんどか薬を打たれた経験で、高度な技術の原理や計算手法を、自白剤を使って引き出すことを考えた場合、引き出す側にも相当高度な技術知識と、自白誘導のスキルがいるのだなと理解した。
ただ仲間の名前を吐かせるような拷問とは必要とされるスキルが違うのだ。
正直、シューバなら、自白剤を使ってメイからすべてのノウハウを聞き出すことは可能だとおもう。だが、シューバの父には無理だ。
目的を達成までは契約に従ってシューバがサポートしてくれる。メイが対価を払う段になった時、シューバの父がメイを他人任せにせず、メイがさっさと壊れてしまえば、メイはノウハウを吐かずに済む。だから、五分五分。
「・・・責め殺されたいのか?ゼルダの名で契約交渉のアポとる位ならなんとでもしてやれる。が、ゼルダがセジスタンの病院に入れたVIP、の方は完全に父の管轄だ。そんな条件をだしたら、お前、好き勝手に切り刻まれるぞ」
「楽に死ねるならそれに越したことはありませんが、ひとり道連れにできるなら、最後にはこだわりません」
「だれだ?」
「サーファ・デジュ」
「さっきからよく出るな。サーファ・カウルの出来損ないの弟だよな?」
「はい。ただ、両腕から先と、両眼の角膜と虹彩、心臓と骨髄とその他いくつかは、サーファ・カウルからの移植なので、キメラ化してあちこちでカウルとしても活動しています」
まさに、吐きそう、という顔をしたシューバを見て、メイが少し口元をほころばせた。
「うぷ・・・なんで笑う」
「いえ、お父様が、シューバがサディストでと宣伝するたびに、優さんが『クソオヤジ!』と毒ついていたのを思い出しました」
やれやれ。何を言われていたことやら。
「神崎優は気の毒だったな。ご冥福をお祈りする」
無理に連れてこられたのでなければ、こいつが婚約者になった時に言いたかったな、とシューバは思う。
「ありがとうございます」
メイはシューバの目をみてから、深く頭を下げた。
さよならに、なるかな。
良い友達になれるよ、と、優が示した可能性の一つを、今、潰す。
何を手放しても、自力では届かない何かを求める人間は後を絶たず、シューバは、金と交換に自ら壊されに来る人間に不自由しなかった。
そのシューバが、これまでの人生の中で聞いた最もつまらない悲鳴、それがメイのものだ。
外資のくせに本社をホゴラシュに構えた変わり者の神崎優のお気に入りだった女。
サーファ・カウルの手前表に出さなかっただけで、父親は優が嫌いだったから、シューバの妻にするといって、メイをさらうように買ってきたのには驚いた。
ただ、シューバ自身は、あの悲鳴を聞くまで、メイに特別な感情はなかったと思っている。
たまに父親がつつきまわしていたが、命の危険がないレベルにはうまくかわしていて、頭も身体能力も相当高いだろうということは分かった。
だからまぁ、特に結婚に反対する理由もなく、放っておいた。
そうしたら、どこからか入り込んだ男に襲われたそうだ。
特別な感情はないとは言っても、会話が成り立たない関係でもないのだから、助けを求めにくればいいものを。
メイは何の弁解もせずに引きずり出され、公開刑になった。
鞭打ちの場所で聞いたのは。
何も求めていない、何も訴えない、ただ痛覚のせいで軋んだ筋肉が押し出した音としか言いようのない悲鳴。
あの悲鳴に比べれば、罠にかかったトカゲの鳴き声の方が10倍は詩的だ。
うまく説明できないが、あまりのつまらなさに、感情が動いたのだと思う。
刑が終わったら、あれを取り返したいと、父親に言った。
父親は、嬉しそうに『わかるぞ』と返した。
ああいう娘を苦しみに屈服させて、つまらない藁に縋らせるのがたまらないのだ。
どんな苦しみに弱いのだろうか。どんな風に壊れるのだろうか。想像するだけで気分が高揚するものだな。お前は本当に私に似ているな、と。
それを聞いた途端、なんとなく興味がうすれて、シューバがそれ以上メイをねだることはなかった。
そのメイが、今、シューバの目の前に跪いている。
「ひさし、ぶりだな」
「はい」
「壊されにきたのか?」
「お願いがあってまいりました」
「言ってみろ」
「時期が来たら、サシャを、解放していただきたいのです」
「サシャ?」
「セジスタン区画の第一病院にゼルダ社がVIP扱いで保護している患者です。頭部銃創貫通で運ばれました。意識は戻っていないものの手術は成功したと聞いています」
「ああ。神崎優が残した唯一の完全なノウハウパーツ、という触れ込みのあれか?社のものが手放さないと思うぞ」
シューバはできない約束はしない。
「時期が来たら、で構いません。先に私が、サシャが唯一でないことを証明します。それまでは友人たちのお見舞いだけ許可していただければ充分です」
そんな証明ができるなら、意識が戻るかすら怪しい重病人を相手にするより数倍有利な取引だ。
「なるほど。言われてみればお前が一番優と近かった。お前のほうが上位のノウハウパーツなわけか。証明して交代すると?」
「はい」
メイがはっきりと言い切ったのを、シューバが興味深そうにのぞき込む。ゼルダにもシューバにも不利がない条件だが、メイに利がない。
「『うち』がどんなところか知っているよなぁ。ノウハウを吐いたからって無事では済まないぞ」
婚約者の立場ならまだいい。父親もシューバの顔色を窺ってそこまで酷い無茶はしなかった。だが、他の男と通じたと公開刑になった今、たとえシューバがかばったところでまともな妻扱いされるとは思えない。
「さきに、シューバ様が遊ぶ、という体裁も難しいでしょうか?」
「は?」
「私がノウハウを開示していく過程で、ゼルダ社での実施の障害がいくつも出て来ます。その障害の、最も効率的な排除方法は、サーファ・カウルが遺した工場の買収になります。引き継いだサーファ・デジュは工場を活用できていませんので格安で契約させます」
「医薬品工場か?お前が契約をとってくる気か?」
「はい。国内からは兵器転用を求める声が出ると思いますが、そちらに設備投資しても、国際条約に引っかかりまくって、外貨は得られません。また、ティールが狙っている磁力浮遊や落雷回避系は、ホゴラシュで実施したが最後、遮蔽困難で鉱脈ごと劣化します。ナノ磁石で医療系に進む分には、封じ込め設備はサーファ・カウルがもっていますし、排水処理はゼルダが強いので勝てます」
怒涛のような情報量に唖然とする。
こんな女だったのか。
よく初回の尋問で暴走しなかったな。
ああ、違うな、情報のしっぽを掴ませないように気を張り続けたから心臓が止まりかける程負荷がかかったのか。拷問慣れした父親が薬の耐性もわからない初回で殺しかけるなど意外だったが納得だ。
「まてまてまて。お前に事業の展望があることはよくわかったし、ノウハウに自信があるのだろうことも分かった。が、俺が言っているのはそういう話ではない」
お前、壊されるぞ。
「先に仕事をしたいだけで、最終的に壊れることについては、合意いたします」
まるで、危ないっつってるだろ、ときこえてきそうなシューバの行間に、メイの感情が少しだけ動く。心配してくれるわけか。本当に、割といい人、だな。
実際のところメイは、彼のことをよく知らない。
ただ、だれがみても頭が良くて、優が気に入っていた、それだけの知識。
今は近づけないけど、あのクソオヤジが死んだら仲よくしてみようね、メイはきっと良い友達になれるよ、と、優はメイにそう言ったのだ。
懐かしい気持ちがない訳ではないが、残念ながら今は、仲よくしたいわけではない。
メイからすれば、むしろさっさと壊れたいとさえ思う。
あかりにノウハウを伝えて保険は作ったが、メイは、秘匿をあきらめてはいない。
ノウハウを秘匿したまま目的を達成できるかは、五分五分だと思っている。
シューバはメイがサシャよりたくさんノウハウを知っていると信じる根拠があるし、検証する能力もあるから、メイがノウハウを実践して見せさえすればサシャとメイの交換に合意する。
だが一方で、サシャの解放、というカードを切れるのは現総帥のシューバの父で、交換の対価はシューバの父が払うことになる。
シューバの父は既に認知機能に障害が出ていて、意識も散漫だが、執着心だけは異常に強い。自分が対価を払ってメイを玩具にした場合、メイが壊れるまで自分で使おうとすると思う。
なんどか薬を打たれた経験で、高度な技術の原理や計算手法を、自白剤を使って引き出すことを考えた場合、引き出す側にも相当高度な技術知識と、自白誘導のスキルがいるのだなと理解した。
ただ仲間の名前を吐かせるような拷問とは必要とされるスキルが違うのだ。
正直、シューバなら、自白剤を使ってメイからすべてのノウハウを聞き出すことは可能だとおもう。だが、シューバの父には無理だ。
目的を達成までは契約に従ってシューバがサポートしてくれる。メイが対価を払う段になった時、シューバの父がメイを他人任せにせず、メイがさっさと壊れてしまえば、メイはノウハウを吐かずに済む。だから、五分五分。
「・・・責め殺されたいのか?ゼルダの名で契約交渉のアポとる位ならなんとでもしてやれる。が、ゼルダがセジスタンの病院に入れたVIP、の方は完全に父の管轄だ。そんな条件をだしたら、お前、好き勝手に切り刻まれるぞ」
「楽に死ねるならそれに越したことはありませんが、ひとり道連れにできるなら、最後にはこだわりません」
「だれだ?」
「サーファ・デジュ」
「さっきからよく出るな。サーファ・カウルの出来損ないの弟だよな?」
「はい。ただ、両腕から先と、両眼の角膜と虹彩、心臓と骨髄とその他いくつかは、サーファ・カウルからの移植なので、キメラ化してあちこちでカウルとしても活動しています」
まさに、吐きそう、という顔をしたシューバを見て、メイが少し口元をほころばせた。
「うぷ・・・なんで笑う」
「いえ、お父様が、シューバがサディストでと宣伝するたびに、優さんが『クソオヤジ!』と毒ついていたのを思い出しました」
やれやれ。何を言われていたことやら。
「神崎優は気の毒だったな。ご冥福をお祈りする」
無理に連れてこられたのでなければ、こいつが婚約者になった時に言いたかったな、とシューバは思う。
「ありがとうございます」
メイはシューバの目をみてから、深く頭を下げた。
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