37 / 77
37.メイはサーファと真っ向勝負
さとるは、シューバと連絡を取ろうと四苦八苦していた。
敦子経由、ゼルダ経由、ティール経由。
片っ端から試しているときに、本人から連絡があった。
「私に連絡を取ろうとしているのはお前か?メイの件か?」
「そうだ。連絡に感謝する。メイはどうしている?」
「まだ、生きてはいる。お前たちは、サーファ・デジュに含むところがあるか?」
「デジュ?ああ、確かに確執があるが、そっちは今どうでもよくて・・」
「メイにとってはどうでもよくはないようだ」
「デジュとけりをつけに行ったのか?!」
「刺し違えるつもりのようだが、生きて戻ったらなお最悪だ。私と父に自分を切り刻ませる約束を対価にした。私が言うことではないが、逃がせるなら逃がせ」
「場所は?!」
「カウルがもっていた医薬品工場だ。ジャケットについていたイヤホンマイクはそちらで聞けるのか?」
さとるは医薬品工場の位置を検索しながら、武器を詰めながら移動を開始する。
「メイが元電源を切った。入れてくれたとしても、時間的に充電切れだ」
「充電はこちらでした。元電源も入れておいたが役に立つか」
「ありがたい!それなら遠隔でも起動できる」
「私の助言は聞かなかった。仲間の助言で引き返すことを祈っているが・・・こちらの手におちた時にはもうどうにもならない。父は拷問用の別荘だけで周辺国を含めて10以上持っている。奪還は無理だ。恨むなよ」
距離から計算して、メイが自分で引き返さない限り、逃げるのは無理だ。わかるよな?
言外にそう圧力をかけて、シューバからの電話は切られた。
冷たい汗が背中を流れる。
さとるは端末でメイのイヤホンマイクとの接続を探りながら、遠すぎることを知りながらも車を出した。
☆
サーファ・デジュとの交渉アポを入れてもらって、メイは出かけて行った。
どうせ、デジュにはメイの正体がばれて、待ち伏せされている。
こそこそしたところで無駄だ。
案の定、話し合いどころか、建物に入った瞬間から、頭痛がひどい。
部屋の空気にも露骨に薬がまぜられているのがわかる。
「メイ!聞こえるか?屋敷に戻れ!逃げてこい!」
聞こえるはずのない、さとるの声が、耳元で騒ぐ。
あれ?奥襟のイヤホンマイクはもう使えないはず。幻聴、だろうか。
まぁ、どちらでも、良い。
メイはもどるどころかスピードを上げて突入して行く。
「逃げろつってんだ、このバカ娘!迎えに行くから、せめてとまれ!」
答えは、ない。
「メイ、返事しろ、メイッ!」
マイクから、メイの呼吸が異様に乱れていくのがわかった。
どれくらい経っただろう。
マイクからサーファの声が流れた。
「こっちだ、メイ」
さとるの背筋が凍りつく。
「どうした。私だ、さとるだ。」
「さとるさん?」
「そうだ。めまいがひどくてわからないのか?かわいそうに。こっちに来い。楽にしてやる。」
「すみません、あれ?契約を・・大事な時に、」
「大事なこと?大したことは何もないだろう?お前は私に会いに来ただけだ」
「そう、でしたっけ。そう、ですね」
メイ?
語尾が定まらない。意識レベルが下がっているのがわかる。
幻覚幻聴の類だろうか。サーファはまるで自分がさとるであるようにメイに刷り込み、主導権を握っていく。
「起きろ!メイ!そいつに近づくな!」
さとるは必死でマイクに呼びかける。
「はい。いえ。めまいは大丈夫です」
何が大丈夫だ!問題はめまいじゃない!
サーファは片方の眉毛をキュッと上げると、自分からメイに近づいた。襟元のイヤフォンマイクに気づいてむしり取る。
「これか?相変わらず優の道具は高価だな」
そしてマイクに口を近づけていった。
「聞いているのはさとるか?状況の説明がいらないように、これはしばらく壊さないでおいてやる。メイのノウハウは私がもらう。ああ、シューバには契約書はサイン済をすでに郵送したから心配するなと伝えろ。このお荷物な工場を引き取ってくれるなら御の字だ」
体が冷えていく。
ここから何分かかるだろうか。直線距離でも数十キロ。しかも建物に入れば、何重もの防御シャッターがあるだろう。サーファの余裕がそれを物語っている。
さとるが通信をシャットアウトできないのをあざ笑うように、サーファはこれみよがしにメイを翻弄した。
「ほら、遅いぞ」
バシっ
薬のせいでペン先が見られないメイを殴りつけて下を向かせる。
「うっ」
「さぁ、ノウハウピースを吐き出せ。もともとお前には荷が勝ちすぎた。優の失敗だ。俺に返すんだ」
「嫌・・です」
続けざまに打たれて、メイが膝をつく。
「俺は誰だ?」
「さとる、さん」
「そうだ。俺に逆らうな。優より俺を取れ」
そう言いながら。黒い布をメイの顔に巻きつける。
「生き埋めにされた時を思い出すか?母親は随分苦しんだろう。ペンの先を見るのとどっちが苦しい?」
「あ、ぐ」
サーファが布の上からメイの口を抑える。
「償え。お前自身を償うんだ。ノウハウを吐けば、許してやる」
メイの体が硬直する。
サーファはメイの口から手を離し、メイにささやく。
「暗闇で反省するか?お前のせいで死んだ者たちをおもいだせ。ますみも同じ目にあわせてやろうか?」
「さとるさん、やめて・・」
「なれなれしく呼ぶな。やくたたず。夫には様をつけろ」
「さとる・・さま」
「そうだ、やればできるじゃないか。」
サーファは黒い布をほどいた。そして、冷や汗にまみれて目の焦点が合わないメイの耳元に、打って変わって優しげな声で囁く。
「さとるに捨てられたくないんだろう?早く役に立つところを見せろ」
メイの髪の毛を乱暴に引き絞って上を向かせ、キスをする。
「ん・・」
「いい子だ。役に立てばそばに置いてやる」
メイが首を何度も縦にふる。
「そばに。一緒に・・」
サーファはニヤリと口の端を上げた。
「お前次第だ」
メイは、這うように机に体を上げ、震える声でいった。
「万年筆を、にぎらせてください。それから、もう一度、触れて・・」
「いいとも」
サーファはメイの持参したペンを握らせ、メイに覆いかぶさった。
その瞬間、バスッと太い弦が切れるような音がした。
サーファの首にえぐりこむようにペンが埋め込まれる。
にじむ血の色の中に、見開かれた目が二つ。
突き出たペンの柄と、メイの顔を信じられないと言いたげに何度も往復する。
そのままサーファとメイは、抱き合うように倒れた。
敦子経由、ゼルダ経由、ティール経由。
片っ端から試しているときに、本人から連絡があった。
「私に連絡を取ろうとしているのはお前か?メイの件か?」
「そうだ。連絡に感謝する。メイはどうしている?」
「まだ、生きてはいる。お前たちは、サーファ・デジュに含むところがあるか?」
「デジュ?ああ、確かに確執があるが、そっちは今どうでもよくて・・」
「メイにとってはどうでもよくはないようだ」
「デジュとけりをつけに行ったのか?!」
「刺し違えるつもりのようだが、生きて戻ったらなお最悪だ。私と父に自分を切り刻ませる約束を対価にした。私が言うことではないが、逃がせるなら逃がせ」
「場所は?!」
「カウルがもっていた医薬品工場だ。ジャケットについていたイヤホンマイクはそちらで聞けるのか?」
さとるは医薬品工場の位置を検索しながら、武器を詰めながら移動を開始する。
「メイが元電源を切った。入れてくれたとしても、時間的に充電切れだ」
「充電はこちらでした。元電源も入れておいたが役に立つか」
「ありがたい!それなら遠隔でも起動できる」
「私の助言は聞かなかった。仲間の助言で引き返すことを祈っているが・・・こちらの手におちた時にはもうどうにもならない。父は拷問用の別荘だけで周辺国を含めて10以上持っている。奪還は無理だ。恨むなよ」
距離から計算して、メイが自分で引き返さない限り、逃げるのは無理だ。わかるよな?
言外にそう圧力をかけて、シューバからの電話は切られた。
冷たい汗が背中を流れる。
さとるは端末でメイのイヤホンマイクとの接続を探りながら、遠すぎることを知りながらも車を出した。
☆
サーファ・デジュとの交渉アポを入れてもらって、メイは出かけて行った。
どうせ、デジュにはメイの正体がばれて、待ち伏せされている。
こそこそしたところで無駄だ。
案の定、話し合いどころか、建物に入った瞬間から、頭痛がひどい。
部屋の空気にも露骨に薬がまぜられているのがわかる。
「メイ!聞こえるか?屋敷に戻れ!逃げてこい!」
聞こえるはずのない、さとるの声が、耳元で騒ぐ。
あれ?奥襟のイヤホンマイクはもう使えないはず。幻聴、だろうか。
まぁ、どちらでも、良い。
メイはもどるどころかスピードを上げて突入して行く。
「逃げろつってんだ、このバカ娘!迎えに行くから、せめてとまれ!」
答えは、ない。
「メイ、返事しろ、メイッ!」
マイクから、メイの呼吸が異様に乱れていくのがわかった。
どれくらい経っただろう。
マイクからサーファの声が流れた。
「こっちだ、メイ」
さとるの背筋が凍りつく。
「どうした。私だ、さとるだ。」
「さとるさん?」
「そうだ。めまいがひどくてわからないのか?かわいそうに。こっちに来い。楽にしてやる。」
「すみません、あれ?契約を・・大事な時に、」
「大事なこと?大したことは何もないだろう?お前は私に会いに来ただけだ」
「そう、でしたっけ。そう、ですね」
メイ?
語尾が定まらない。意識レベルが下がっているのがわかる。
幻覚幻聴の類だろうか。サーファはまるで自分がさとるであるようにメイに刷り込み、主導権を握っていく。
「起きろ!メイ!そいつに近づくな!」
さとるは必死でマイクに呼びかける。
「はい。いえ。めまいは大丈夫です」
何が大丈夫だ!問題はめまいじゃない!
サーファは片方の眉毛をキュッと上げると、自分からメイに近づいた。襟元のイヤフォンマイクに気づいてむしり取る。
「これか?相変わらず優の道具は高価だな」
そしてマイクに口を近づけていった。
「聞いているのはさとるか?状況の説明がいらないように、これはしばらく壊さないでおいてやる。メイのノウハウは私がもらう。ああ、シューバには契約書はサイン済をすでに郵送したから心配するなと伝えろ。このお荷物な工場を引き取ってくれるなら御の字だ」
体が冷えていく。
ここから何分かかるだろうか。直線距離でも数十キロ。しかも建物に入れば、何重もの防御シャッターがあるだろう。サーファの余裕がそれを物語っている。
さとるが通信をシャットアウトできないのをあざ笑うように、サーファはこれみよがしにメイを翻弄した。
「ほら、遅いぞ」
バシっ
薬のせいでペン先が見られないメイを殴りつけて下を向かせる。
「うっ」
「さぁ、ノウハウピースを吐き出せ。もともとお前には荷が勝ちすぎた。優の失敗だ。俺に返すんだ」
「嫌・・です」
続けざまに打たれて、メイが膝をつく。
「俺は誰だ?」
「さとる、さん」
「そうだ。俺に逆らうな。優より俺を取れ」
そう言いながら。黒い布をメイの顔に巻きつける。
「生き埋めにされた時を思い出すか?母親は随分苦しんだろう。ペンの先を見るのとどっちが苦しい?」
「あ、ぐ」
サーファが布の上からメイの口を抑える。
「償え。お前自身を償うんだ。ノウハウを吐けば、許してやる」
メイの体が硬直する。
サーファはメイの口から手を離し、メイにささやく。
「暗闇で反省するか?お前のせいで死んだ者たちをおもいだせ。ますみも同じ目にあわせてやろうか?」
「さとるさん、やめて・・」
「なれなれしく呼ぶな。やくたたず。夫には様をつけろ」
「さとる・・さま」
「そうだ、やればできるじゃないか。」
サーファは黒い布をほどいた。そして、冷や汗にまみれて目の焦点が合わないメイの耳元に、打って変わって優しげな声で囁く。
「さとるに捨てられたくないんだろう?早く役に立つところを見せろ」
メイの髪の毛を乱暴に引き絞って上を向かせ、キスをする。
「ん・・」
「いい子だ。役に立てばそばに置いてやる」
メイが首を何度も縦にふる。
「そばに。一緒に・・」
サーファはニヤリと口の端を上げた。
「お前次第だ」
メイは、這うように机に体を上げ、震える声でいった。
「万年筆を、にぎらせてください。それから、もう一度、触れて・・」
「いいとも」
サーファはメイの持参したペンを握らせ、メイに覆いかぶさった。
その瞬間、バスッと太い弦が切れるような音がした。
サーファの首にえぐりこむようにペンが埋め込まれる。
にじむ血の色の中に、見開かれた目が二つ。
突き出たペンの柄と、メイの顔を信じられないと言いたげに何度も往復する。
そのままサーファとメイは、抱き合うように倒れた。
あなたにおすすめの小説
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
月弥総合病院
僕君・御月様
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
番外編更新中です!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。