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40.フェネックでも抱いておけ
「何をしてるんだ?」
あかりが周辺国の動物保護団体・・野犬狩りもするので保護だけではないが・・に寄付をして、人なれの良い子猫か子犬がいたら欲しいと相談し始めたのを見て、さとるが尋ねる。
襲撃が減ったからって、ここでペット飼う気か?
「ごめん、ごめん、誰もアレルギーないわよね。1匹だけ!」
そういって双発機で出かけたくせに、なぜか仔犬が2匹と成犬1匹。あかりは合わせて3匹も持って帰ってきた。
その犬たちたるや、日本の感覚で言うと、ぼろぼろ。
可愛いふわふわの里子を連れてくると思っていたわけではないが、元気がない上に、瞼も腫れてしまって、毛が剥げている。大丈夫かコレ。
「元気ないのに、まだ摂取時期じゃないのに、外に出す前の規則だっていって狂犬病のワクチン打たれたの!死んじゃったらどうしよう!!」
久しぶりに慌てるあかりをみた。
「ちょっと、さとる、あんた、メイを甘々のデロデロにして2時間部屋から出さないで!シューバ君呼ぶ!」
「シューバ?なんで?」
「もともと、優さんの遺言だから、彼に飼わせようと思ってたし、カウルさんのアカウントに紐づいてた医療ジェットとそこの医者の話もあるから!」
医療ジェット?なんの話だ?
因果関係が全然見えないが、こいつは医療ジェットで仔犬看る気なんだろうか。
返す刀ですでに、シューバに電話している。
いつ直通の番号をゲットしたんだ、まったく。
「シューバ君!シューバ君!車出して迎えに来て!あんたの犬が死んじゃう!」
☆
あー、うん。
皮膚病のフェネックでも抱かせとけって、やっぱりそういう意味だよね。
庇護対象にしがみつかれるのが好きなだけ。
優さん語だし、分かってたけど、いくら何でもてきめんすぎないか。
あかりは、お湯の温度を調節しながらシューバを見る。
「ふぎゃん、きゅぅ」
毛のはげた子犬は、かなりひどい真菌症だ。
獣医の看板など見たことのないホゴラシュで真菌症を治療しようと思ったら、基本はきれいな水かお湯で洗浄を、ということになる。
既に何度か風呂を経験済みだからか。
水音を聞いた子犬は、ヒザラガイかと突っ込みたくなるほど、ぎゅうとシューバにしがみついた。
「助けを求めてもムダだぞ。サディストを喜ばすだけだ」
いや、サディストって、爪立てられて、血が出てるのはあんたの方だって。
仔犬の鼻をちょんとつついたシューバは、なんというか、もう完全に瞳孔が開いている。
「はいはい。良かったですね、役割期待と自己認識が一致して」
シャンプー一滴を、大量の水でごくごく薄くして、子犬用の洗浄剤を作ってやりながら、あかりが答える。
「・・・非難しないのか?」
「なんで?」
「震えて泣かれて喜んでいる」
仔犬をしがみつかせたまま、少ない毛をゆっくり洗い、自分毎シャワーを浴びて、毛に挟まったかさぶたともふけとも見える細かい汚れを流していく。
「洗浄の必要がない母犬の方は、無理にお風呂に入れたりしないじゃない」
子犬2匹はいまだに皮膚が赤く腫れて、かさぶたに毛がもっていかれてしまっている。
母犬の方は真菌症のほうはごく軽く、純粋な外傷が主だったので、最初の汚れを落とすためにしか風呂には入れていない。
「あいつは、まだ手足の怪我が治ってないのに、僕のベッドに上がろうとするから、叱ってやった」
「たたいた?」
「そんなことしなくても泣かせられる」
自慢げな顔で返してくるが、使用人からは、ベッドの前に柵を立てたら、母犬にきゅんきゅん鳴かれ、結局シューバはここ数日、自分がベッドを降りて床に広げたマットに、3匹と一緒に寝ていると聞いている。
どこらへんを自慢するつもりだったのだろう。
「シューバ君さぁ、無抵抗な生き物殴るの、嫌いでしょう」
「・・・精神的に服従させる方が好きなだけだ。こいつらは、好きなおやつで待てもするし、昨日なんて仕事で散歩の時間が遅れたら、排泄も待ってたんだぞ」
「あ、うん、トイレトレーニングうまくいったんだ、良かったね」
これは優さん、気になったろうなぁ、とあかりは思う。
14で学位2つもちって、頭はいいだろうけど、幼少期から親が相当無理させた可能性が高い。母親はシューバの幼児期にほぼ殺されたに近い状態で他界したと聞いている。
さらに思春期に入ろうというときには、父親は完全に異常側に振り切れて、何が何でも自分とシューバを同一視しようとゆがんだ性癖を押し付けてくるとか相当だ。
シューバの女性に対する興味は極端に薄く、歪なほどだ。14~15才。年齢だけ考えれば、異性に興味がなくてもおかしいわけではないが、ホゴラシュほど男女差別が顕著なところで、男女差自体に頓着がないのは不自然だ。女性に興味がないという以前に、男女差の認識を拒否しているように見える。
あかりのようなちょっと斜めから見るタイプからすると、父親に、理解し合えないところがあるのは年齢だけのせいだと思わせるために、自力で成長を止めたか?と疑う。
多分優も似たようなことを感じたはずだ。
普通に考えたら精神的な虐待の被害者だと思うが、最小限の歪みで生き延びたわけだ。
無意識まで頭がいい、というのはおかしな表現だが、シューバの対処は才能というべきだろう。
あかりが周辺国の動物保護団体・・野犬狩りもするので保護だけではないが・・に寄付をして、人なれの良い子猫か子犬がいたら欲しいと相談し始めたのを見て、さとるが尋ねる。
襲撃が減ったからって、ここでペット飼う気か?
「ごめん、ごめん、誰もアレルギーないわよね。1匹だけ!」
そういって双発機で出かけたくせに、なぜか仔犬が2匹と成犬1匹。あかりは合わせて3匹も持って帰ってきた。
その犬たちたるや、日本の感覚で言うと、ぼろぼろ。
可愛いふわふわの里子を連れてくると思っていたわけではないが、元気がない上に、瞼も腫れてしまって、毛が剥げている。大丈夫かコレ。
「元気ないのに、まだ摂取時期じゃないのに、外に出す前の規則だっていって狂犬病のワクチン打たれたの!死んじゃったらどうしよう!!」
久しぶりに慌てるあかりをみた。
「ちょっと、さとる、あんた、メイを甘々のデロデロにして2時間部屋から出さないで!シューバ君呼ぶ!」
「シューバ?なんで?」
「もともと、優さんの遺言だから、彼に飼わせようと思ってたし、カウルさんのアカウントに紐づいてた医療ジェットとそこの医者の話もあるから!」
医療ジェット?なんの話だ?
因果関係が全然見えないが、こいつは医療ジェットで仔犬看る気なんだろうか。
返す刀ですでに、シューバに電話している。
いつ直通の番号をゲットしたんだ、まったく。
「シューバ君!シューバ君!車出して迎えに来て!あんたの犬が死んじゃう!」
☆
あー、うん。
皮膚病のフェネックでも抱かせとけって、やっぱりそういう意味だよね。
庇護対象にしがみつかれるのが好きなだけ。
優さん語だし、分かってたけど、いくら何でもてきめんすぎないか。
あかりは、お湯の温度を調節しながらシューバを見る。
「ふぎゃん、きゅぅ」
毛のはげた子犬は、かなりひどい真菌症だ。
獣医の看板など見たことのないホゴラシュで真菌症を治療しようと思ったら、基本はきれいな水かお湯で洗浄を、ということになる。
既に何度か風呂を経験済みだからか。
水音を聞いた子犬は、ヒザラガイかと突っ込みたくなるほど、ぎゅうとシューバにしがみついた。
「助けを求めてもムダだぞ。サディストを喜ばすだけだ」
いや、サディストって、爪立てられて、血が出てるのはあんたの方だって。
仔犬の鼻をちょんとつついたシューバは、なんというか、もう完全に瞳孔が開いている。
「はいはい。良かったですね、役割期待と自己認識が一致して」
シャンプー一滴を、大量の水でごくごく薄くして、子犬用の洗浄剤を作ってやりながら、あかりが答える。
「・・・非難しないのか?」
「なんで?」
「震えて泣かれて喜んでいる」
仔犬をしがみつかせたまま、少ない毛をゆっくり洗い、自分毎シャワーを浴びて、毛に挟まったかさぶたともふけとも見える細かい汚れを流していく。
「洗浄の必要がない母犬の方は、無理にお風呂に入れたりしないじゃない」
子犬2匹はいまだに皮膚が赤く腫れて、かさぶたに毛がもっていかれてしまっている。
母犬の方は真菌症のほうはごく軽く、純粋な外傷が主だったので、最初の汚れを落とすためにしか風呂には入れていない。
「あいつは、まだ手足の怪我が治ってないのに、僕のベッドに上がろうとするから、叱ってやった」
「たたいた?」
「そんなことしなくても泣かせられる」
自慢げな顔で返してくるが、使用人からは、ベッドの前に柵を立てたら、母犬にきゅんきゅん鳴かれ、結局シューバはここ数日、自分がベッドを降りて床に広げたマットに、3匹と一緒に寝ていると聞いている。
どこらへんを自慢するつもりだったのだろう。
「シューバ君さぁ、無抵抗な生き物殴るの、嫌いでしょう」
「・・・精神的に服従させる方が好きなだけだ。こいつらは、好きなおやつで待てもするし、昨日なんて仕事で散歩の時間が遅れたら、排泄も待ってたんだぞ」
「あ、うん、トイレトレーニングうまくいったんだ、良かったね」
これは優さん、気になったろうなぁ、とあかりは思う。
14で学位2つもちって、頭はいいだろうけど、幼少期から親が相当無理させた可能性が高い。母親はシューバの幼児期にほぼ殺されたに近い状態で他界したと聞いている。
さらに思春期に入ろうというときには、父親は完全に異常側に振り切れて、何が何でも自分とシューバを同一視しようとゆがんだ性癖を押し付けてくるとか相当だ。
シューバの女性に対する興味は極端に薄く、歪なほどだ。14~15才。年齢だけ考えれば、異性に興味がなくてもおかしいわけではないが、ホゴラシュほど男女差別が顕著なところで、男女差自体に頓着がないのは不自然だ。女性に興味がないという以前に、男女差の認識を拒否しているように見える。
あかりのようなちょっと斜めから見るタイプからすると、父親に、理解し合えないところがあるのは年齢だけのせいだと思わせるために、自力で成長を止めたか?と疑う。
多分優も似たようなことを感じたはずだ。
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