痛がり

白い靴下の猫

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49.当たりが出たらもう一枚

物置の中の会話は混迷を深めていく。
もう奴らの会話に、片っ端から脳内つっこみを入れずにはいられない。
『その、畑里あかりと、神崎さとるも、夫婦なのか?』
うちは一夫一妻制だ!
『いえ、友情関係だそうです。さとるさんはサボテンとも友情できる先進国人なので』
『誰の説明だ?』
畑里、おまえだろ!
『あかりさんです。シューバ様はひょっとしてあかりさんがお好きですか?』
『ああ、そうだな。本人に伝えたところ、お付き合いというものに進んだ。だがそこで問題がある。私がサディストなのを知っているのに、何も条件を付けずにOKするなど普通に考えたら危険だろう?畑里あかりは酷いことされると喜ぶ質なのか?触れても嫌がらないし・・』
『触れても・・』
『触れるって、ちょっとだぞっ。指先とか肩とかだ!』
ぎったんぎったん業界出身の畑里がそんなもんでビビるわけがないだろうが。
はっきり言って誰が見ても尻に敷かれているのはお前だ。前年比うん百パーセントアップみたいな利益出してる間は、会社の人間は何も言わないだろうけどな!
『うーん、うーん、参考になるかわかりませんが、こないだ、あかりさんに目薬を貸してっていわれたさとるさんが、横着して目薬を投げたんです。そうしたらあかりさんの頭にコツンしてしまって』
おい、メイ!ここで出す情報がそれか!
『なるほど。どうなった?!』
興味あるんかい!
『あかりさんは、食器用洗剤と、台拭きと、ウェットティッシュを連投して見事に命中させました』
『それはすごいな。まとめると、こういうことか。畑里あかりは、酷いことをされたいが、3倍返しが基本?』
どんな変態だ?!
『そう、なりますかねぇ?なんか違う気が・・直接聞いてみたほうが良くないですか?』
『直接聞いて、酷いことねだられたらどうする!私は、彼女に血を流させるなんて絶対に嫌だぞ?』
その段階でノーマルだと気づけ?
『さとるさんも、そんな感じなんでしょうか。私が鞭打たれているところとか、絶対見たくないそうです』
一緒にするなー!
『そうか。んー、痛く無くて、傷も残らなければOKか?我が家には多量の麻薬類がコレクションされていて、女性がものすごく気持ちよくなるものもあるらしい』
『害はないんですか?自白剤とかはすごくしんどかったですけど・・』
『オーバードーズしたら、どれでも害だろ。3倍返される覚悟で使うとすると、すくなくとも致死量の3分の1以下で効果が出ないとだめだな』
『私でためしますか?その、ものすごく気持ち良いとかの判断基準に自信はないですが、さとるさんの嫌がる流血にいたらず、嗜好にそぐう状態がわかるのであれば、試しがいがあるというか』
『なるほど。3倍打たれた時にどうなるかは私が試さないとだな。日を改めてうちに来るか?神崎さとるが外出をゆるせばだが』
許すわけねーだろー!!
『多分、大丈夫ではないかと』
『なぜそう思う?』
なんでそうおもうの?!
『私、下げ渡しが嫌でさとるさんから2度逃げてるんです。捨てられるのが嫌というより、捨てられたら壊れるって確信したほど彼に執着してると知られる位なら死んでしまいたい感じで』
『やりかねんな。お前、執着を隠すのに必死になり過ぎて、父にも付け込まれていたものな』
『ですよねー。でも、さとるさんは、私が自分の命と体を掛け金にしても、怒らないでいてくれました。すべてに折り合いがつく事故に会いたくて、私がもがいていたのも知っていたと思います。私が苦しんでると顔がつられちゃうくらい優しいんです。きっとまた許してくれる』
絶対にゆるしません、てば!
『甘えたいのか?親の愛情を試す幼子のように?あんなに執着を隠していたお前が?』
『ふふ。甘えて執着がばれるなら、それもいいかなって。あかりさんが、相手に好意を知られるのが恥ずかしくて隠すなんて、女の子は誰でもやるし、むしろかわいいと思うくらいだって、言うんです』
うっわ。はしょったな、畑里。普通そこに命のやり取りは介在しない。
『そうか。やはりお前は面白いな。とても有意義だった。次回も楽しみにしている』
『はい。戻りましょうか』

・・・ぐってり。
脱力しすぎて、無言で畑里にイヤホンを返す。
「ひでぇ。どうするよ?」
畑里ももう、顎が落ちてる。
「お互い、相手の思い込み放置してる間に、つじつまのあわなさがマックス?」
「男でいい思いしたことないくせに、セックスドラッグ試そうとかって正気か?」
「私だって、4つも年下のガキにヤク打たれて初体験した挙句、致死量のヤク打ち返すような関係をお付き合いと呼んだわけじゃないわよ」
そりゃ、そうだ。
「お前、あれと付き合うのか?根性あるな。素材はいいかもしれないがアンバランス感半端ないぞ」
「いいたかないけど、カウルさんにちょっと感じがにてるわよ」
「詰めの甘い遺伝上のうちの父か!」
イマイチダメな奴だとは思うが、フライトレコーダーの会話を聞いて、あー、こいつが親だわと腑に落ちた。デジュには絶対感じなかった符丁がざくざく。
「あんたさぁ。メイにガツンと執着全開にして不安解消できないの?メイが自分じゃなきゃ相手できないかもって納得するレベルに負荷かけりゃ納得するなら、『そういうご趣味』の内容が『体力3倍必要』とかでも行けるんじゃない?」
顔にヤッちまえと書いてある。おまえ確か処女だと豪語してたよなぁ?
「シューバにお前ノーマルだぞって、言った方が早くないか?」
「ほのめかしては見たけど無理だわね。ひよこの刷り込みレベルよ。なによ、自信ないの?乃愛ちゃんは、あんたのテクがすごくてどうのと、聞いてもないのに選挙運動に来てたけど?」
「乃愛、な。あれも軽くトラウマだぞ。ある日突然、あかりちゃんと続いてるなら別れる!って身に覚えのない三行半されて凹んでたら、本当に分かれたつもりでいたなんてひどい!ってもう一回振られたやつだ」
「私は今あんたの駄目さ加減を垣間見たわ」
「うるせーわ。それにないのは自信より別のもの」
「なによ」
「・・・コンドーム」
「ぶっ。もって無いの?!こないだ敦子さんから補給の小包送ってもらったでしょう?」
「姉貴に頼めるとおもうのか?!」
お前の心臓はストロマトライトか!
「へんなところ細やかなんだからもぉっ。今月号はどうかなぁ・・」
畑里はトートバックから、例の萌えっとした絵の雑誌を引っ張り出し、後ろ表紙の厚紙をべりっと裂いた。
内側から、懐かしい日本製の薄いコンドームのパッケージが1枚。
「はずれだわ・・・1枚じゃ納得させられない?」
「はずれ、ってソーダアイスか!ぜったい変だぞお前の会社っ」
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