手負いですが恋愛してみせます ~ 痛がり2 ~

白い靴下の猫

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16 もんもんもん

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体調が落ち着いて、シューバの乱心をきいたあかりは、先延ばしにしていた大問題を自分に解禁した。

「あー。シューバ君、やべぇ。・・・も、アウトだわ。ちょっと対策かんがえてくる」
そういって、部屋にこもる。

もんもんもん。
我ながらやらかした。
3年前のシューバとの別れ方からして、なってないのに。

あの時は、恐怖の中身ではなくて、恐怖を感じる事を怖がっていたから、ノーキンに頼んで極端に感情の起伏がおこらない状態にしてもらっていた。ホワイト・プログラムで脳内にあちこちに隙間をあけて。

記憶はあるけれど、現実感がない感じで、シューバと大急ぎで別れた。感受性と共感能力の鈍磨。
相手が15才で恋愛経験がなくたって、あの別れ方がほめられたものではない位気づく。

拉致が起こる前から、少しずつシューバとの距離を取り始めてはいたが、あくまでも外向きの話。
生命維持と安全確保のためのやむなくの措置だったので、見えないところではちゃんとデロデロに甘やかしていた。
それでも、シューバはものすごく不満そうだったのに。

その状態から、記憶を切る前の、プログラム設計の間の数日で、鈍々にした頭のまま、大急ぎでさよならをしたのだ。
確実にざっくり傷つけたと思われる。

さらにホゴラシュに帰るなり、シューバには、あかりが記憶を切っていたことすら伝えていないのに、優しくしたくて仕方ないわ、忘れられていないのを確かめたいわ、また好きになってほしいわで、煩悩丸出しのアプローチ。

まったく、ばかなのかしら?
見ろ、シューバがゴテゴテに混乱してるじゃないの!

そして極めつけが今。どうしていいかわからないと来たもんだ。
どこから話すよ。
記憶切ったところから?

とりあえずシューバには、彼の母親周りの地雷を踏ませたくない。
レノとノーキン+マッドさんが戦って負けるとは思わないけれど、レノの洗脳スキル情報も、洗脳解除の準備に使える時間も、多いほどいいわけだし。

記憶消していたの、といえば、まず、なぜ?と聞かれる。シューバが洗脳されているからと答えるわけにはいかないから、拉致ダメージの回復、とか答える?

強姦・・と奴らが自覚しているかは知らないが、その手のことがあったことは、キュニでは有名だ。いずれはばれる。いや、シューバの口からもキュニの男が良かったのかとかなんとか文句がでたわけだから、半分はすでにばれている。おまけにどの拉致も毎度、シューバの側近が手伝っている。なんか全容知ったら私以上に、シューバが凹みそうな予感。
それなのに、心の傷がひどくて癒そうと記憶を切りましたとか、うそつくわけ?いやだわー。

ホワイト・プログラムの実験だったことに?
いや、そんな緊急性のないことで、シューバを「忘れる方」に入れたとか、私だったら、弄んでいるのかと切れるな。無理だわー。

実験中の事故だったことに?
そんな事故起こすような技術じゃ、『きゅーぶ』企画が潰れかねないじゃない!これで成功しないと半永久的にシューバと恋愛できないっつーのに。本末転倒だわー。

記憶がなかったことは黙っとく?
私はびびって、日本に逃げ帰っただけで、強くなったから、帰ってきたの、って。
ごめんもなく、傷つけたこともなかったことにして、なし崩しに落とす方向で?
無理だな。心情的にも嫌だし、シューバが賢すぎるし、なにより、ここ数日の私が煽り過ぎた。
昨日までの私と、今の私が違っていることは、間違いなくバレる。
なし崩せる気がしない!だめだわー。

もんもんもんもん。

うじうじ考えているうちに、軽く、うとうとしていたかもしれない。
ぷく、と記憶の泡が意識にうかんで、今と混ざる。

ごめん、シューバ。
私は諦めないし、自分が諦めないことを誰にも非難させない。
あなたが私を覚えているうちに、きっと帰って来て見せる。

あ、これ、三年前の私だ。

さとるが、あと10分早くあかりにたどり着くためなら、何人でも殺せたのにといったあの時。ケモルを食いちぎった後でちょうどよかったといって、口元をぬぐったのを覚えている。

強がりではなかった。

拉致のダメージは、無力感に溺れさせられそうになったせいでついただけだ。足の間から血がでたから、ではない。

だから。やられるままでなく、顔を食いちぎってやった記憶は、粘着包帯レベルの価値があるし、さとるに、ナイスタイミング、と言えたのだ。

拉致の『後遺症』がなかったわけではないが、あかりの認識では、ありがちな、羹に懲りてなますを吹いているだけの後遺症で、必ず回復する自信があった。時間の問題だ、と。

ただ、その時間を、状況が許さないだけ。
ちっこい傷ですぐ直るのに、あかりの傷からシューバの傷に菌がうつってしまうのが心配で触れないだけ。
シューバとの「お付き合い」だって、たまたまキュニとタキュの内戦が一触即発だから、断崖絶壁に追い込まれているだけ、だ。

たったそれだけなのに。
動けないとか。
くやしい。

タイミングが悪かったね、でしっぽを巻ける程、軽い想いじゃなかったよ、と。

鮮烈に思い出す。

あぁ。もんもんゆってる場合じゃなかったね。
シューバのところに、いかなきゃ。

とりあえず自分は、心身ともに健康の範疇だ。
レノに打たれた薬はまだ体に残っているのかもしれないが、シューバの洗脳だか催眠暗示だかのイニシエーターにならなければそれでいい。
記憶のない自分がそばに寄ってもシューバは大丈夫だった。
だから、シューバの側にいられるかどうかはあかりの問題であって、自分でどうにかできると言うことだ。

レノは、策に溺れがちだ。
あかりを拉致した時も、あかりを屈服させるのに時間をつかいすぎた。
あかりがシューバを捨てて、キュニの男に狂っているという体をつくりたくて。
たしかに、あかりが無様である程、扇動は簡単になるかもしれない。
だが、シューバの頭を乗っ取るという最優先課題に比べれば、あかりに無様をさらさせるなど所詮は副産物で。
それなのに、ぐずぐずとあかりを侮辱しているうちに敵の侵入を許したのだから無能だ。

一方のさとるは、メイが監禁された時の教訓を忘れていなかった。
メイがラノンの玩具にされた時、さとるは何カ月もメイの居場所を探した自分を無能だと断じた。メイの場所を探すのではなく、ラノンを殺すことを考えるべきだったと。

そしてさとるは今度こそ、あかりを奪還するために、人を殺すこともためらわなかった。
あかりを捕らえた功績を強調し、自分にもあかりを抱かせろとわめいていた男をなぶり殺し寸前にしながら情報をとり、考えうるかぎり最速、最短であかりにたどり着いた。
さとるがあかりに届いた時には、後ろにはまだ十数人も『待ち』が居たから、命が消えるところをリミットとするなら、充分に間に合ったことになる。
わが友は優秀だ。

ラノンとレノの洗脳技術に、マッドさんとノーキンのホワイト・プログラムは勝てるだろうか。
・・・かんがえるまでもないな。
絶対に勝てる。

3年前の障害物は、おおむね叩き壊した。
それなのに、当の私がシューバにやらかして気まずいです、とかうじうじなんて、われながらどんだけヘタレだ?
よし、行く。行くぞ。私はつよい子。
黒歴史を量産した気がするけれども、そのフォローは、まぁ、追い追いで!
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