手負いですが恋愛してみせます ~ 痛がり2 ~

白い靴下の猫

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24 船幽霊とクルラ

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3年前、シューバの周りは、船幽霊の白い手でいっぱいだった。
ラノンの遺志を継げ、姻戚関係を結んで民族問題のバランスをとれ。
ホゴラシュに繫栄を、ゼルダに外貨を。
あかりと別れろ、外資と離れろ。

勝手な要求を押し付けてくるだけの、シューバの自由を奪うだけの、白い手。

あかりは、『日本の船幽霊の対処法は、渡す柄杓の底を抜いとくのよ!』と教えてくれた。彼女の説明によると、日本の船幽霊は、柄杓を貸してやった恩を、船に海水入れてくるとかふざけた仇で返してくるのだそうだ。

シューバのもとに問答無用で送り付けられてきた女性はもはや、二桁にのる。
一族や社員を、大事に思っていないわけではないが、自分で自分が抑えられない時がある。

14才までは、海外で多くを過ごしたし、あかりさえいれば、自分はどこでも生きていける。
全てひっくり返して、あかりと一緒にこの国から出て行こうと、何度も思った。

そのたびにあかりは、私の頬やら耳やら鼻やらを、むにっとつまんで言うのだ。
「まぁ、そう言わないで。私のおーさま?」
そして彼女は私を甘えたいだけ甘えさせ、大丈夫だと繰り返した。

対症的なその場しのぎが増えていく。以前は、住み込ませていた使用人を、通いに変えさせた。そうでもしなければ、毎日のように屋敷にキュニ人の女を送り込まされそうだったし、どうやってもあかりとの時間が取れなかったから。

そんな時期に、レノから呼び出しがあった。
キュニの長老で、部族長の世話役。
父のラノンと趣味があっていたようで、タキュとキュニとは思えない程交流があった。

レノにとってのシューバは、昔と変わらず小型のラノンで、性的な異常者であるらしい。

まともな発達段階を辿ったとは思えない小さな女を引っ張り出してきて、クルラですよ、覚えていますか?と聞いた。
それから、クルラは鞭で打たれるのを喜ぶのだといいながら、シューバの前で実践し、懐かしいでしょう、シューバにあげましょうね、と笑う。

クルラはキュニ人だから、シューバの手がつけばみんな喜びますよ、と嫌な笑い方をされた意味が解らないわけではなかったが、クルラは、昔馴染みだった。

ラノンとレノの、そして、シューバの被害者。
あの暗闇を、どんな思いで生き延びたのかを考えると、とてもおいてくる気にはなれなかった。



シューバが抱えて来た女性が小さな声で『クルラです』と挨拶をするのを聞いて、あかりは呼吸を飲み込んだ。
あかりは、クルラという名を知っていたし、彼女を探してすらいた。

シューバは、クルラを、自分の父親であるラノン達がとてつもない迷惑をかけた女性だと説明した。
生き延びたのが奇跡に思える環境だったはずで、とても置いてくることができなかった、と。

意味は分かる。
ラノン達、要するに、権力をたらふく持った加虐系の異常者だ。
何人も殺している。

クルラ自身は、ますみと同年代とは思えない程華奢だが、顔立ちとしては可愛い。
ぱっと見は、虐待のサバイバーという感じはしないし、薬物中毒という感じもしないが、表情は乏しく、ほとんどしゃべらない。
シューバの陰から出ても来ない。

「すまない。父の悪行には、私も加担した。クルラが生き延びたなら、あの闇から出さなきゃと、思って、だな」

シューバの言は、現恋人に、世間が勝手に用意した嫁候補を紹介するには、いささか痛みにまみれている。

シューバの心は、父親に薬を盛ったことを、後悔もできず、肯定もできず、未消化のままだ。

父親の記憶とリンクが多いクルラは、多分シューバのメンタルをひっかきまくるだろうに。
少なくとも、恋人が自宅に女性をお持ち帰りしてきた、という状況の数倍は危険だと思う。

ふぅ。
軽く気合いの深呼吸。
「うん、えらい。よく連れて帰って来た。クルラも偉い。よくついて来た。シューバの縁談除け、と思って、シューバとクルラがいちゃいちゃしても怒らないことにするから、安全第一で、ここに馴染んで」
3年前、あかりはそういってクルラを受け入れた。
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