海月のこな

白い靴下の猫

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ひと段落

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その後、ルウイはパセルとの調整と称してレグラムを後にした。
アルトには良く便りが届いた。
ルウイは何度か追加の手術をしたそうだ。
本人曰く、傷跡を薄くするためのものだから、心配いらないという。
ミセルの医術は底が知れない。普通に考えて、この世界に、安全な手術などないし、アルトとしては、痛い思いもしてほしくないのだが。
伸びてきたルウイの髪の毛は金色だそうで、こっちが元らしい。
「髪の色を明るくする実験をしていたら、色が抜けて緑になっただけ。好みならいつでもやるよ」とも。
レグラムとパセルの交易はうまくいっている。
レグラムに流通する薬の量と質は格段にアップし、誰もが、パセルの王女との婚儀をのぞむ言葉を述べた。
王はちょっと惜しそうな顔をしたが反対はしなかった。もともと自分が一夫多妻を絶賛実践中なので正妃『候補』にすぎない段階では誰を入れようがゆるゆるなのだ。
晴れて婚約者となったルウイの輿が着き、祝福の言葉の中を、ルウイが歩いてくる。
金色の髪が広がる。月の色だ。まぶしかった。
ルウイがアルトに深く頭を下げて横に並ぶと、民衆の熱狂が吹き付けてきた。
にこやかに挨拶を終え、手を携えて城内に下がる。
城の壁と柱が観衆と二人の間を遮って隠すと、アルトはもう少しも待たなかった。
片手でルウイを抱きしめ、壁際に追いつめる。
我慢した時間が長すぎて、嫉妬に狂ったようなキスになった。
ルウイは抱きしめられたまま、アルトの肩を何度か叩いて、小さく抗議の声を上げた。
反撃してくるかと思ったのに、息ができる最小限の隙間を開けると、強引にうつむいた。らしくない反応に急に心配になる。
「どっか痛かったか?」
のぞき込むと、
「遠慮してよね!恥ずか死ぬ!」
真っ赤にゆだったルウイの顔が見えた。
アルトは脊髄反射で自分の頬にも血がかけ登るのがわかった。
人に薬盛って、篭絡したのは誰だ?
死にぞこなったくせに楽しかったとかぬかして、ひとを泣かせやがったのは誰だ?
赤い顔を見られたくなくて、上をむいてしどろもどろで応じる。
「・・・そういうのは、もちょっと初期段階でみせてくれ。人を好き勝手触り回しといて、今更そんな顔見せられても」
「のっぴきならないときしか触ってないでしょ!終日後宮で女狩り放題のあんたといっしょにしないでよっ」
あ、傷ついたぞ。
「のっぴき関係なく触りたくしてやる」
唇は、すぐそこだった。舌を絡めて、長く吸う。甘い。
震えるようなかすれた息遣いが、アルトに注ぎ込まれて、体中にしびれて広がる。
ルウイの力がぬけて崩れそうになって、抱きしめる手をきつくする。
逃がさない。首筋に唇を這わせる。
ルウイがしがみついてくるのが、たまらなく嬉しかった。
「ゆっとくけど、俺は後宮なんてもたないぞ。おんなじ部屋で暮らして、ひとりしか妃もたないからな。言いがかりを反省しやがれ」
耳に唇が触れると、ルウイは必死で身をよじろうとする。離さない。
「降参?」
「ばか、遊び人。そういう態度だから私に騙されるんだからね!」
好きなだけ騙してくれていいが、そんなことより。そろそろ降参してくれないと、ほんとに我慢できなくなると思うのだが。
ルウイを抱えるようにひきずって、アルトは一番近い空部屋に消えた。
セリナが笑った気がした。
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