解放

かひけつ

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第3章 ~よう

■③

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《sideメハ
私は頭に小さな爆弾を抱えていた。比喩でしかなくて、大したことないって言われたらそれで終わりの、大好きな日々に潜む小さな地雷。

 [ずっと家族のように思ってた]

『母』なんて言ったら、グルバン様に怒られるし、ケイト様に申し訳なくなるから言ってはいけない。本当はそんなこと思うだけでも、ダメなんだって頭では分かっていた。けど、あえて答えを出さなかった。割り切らない方がいいような気がしたから…。そして、もやもやしたこの想いを無下にできなかった。そんな中途半端な想いはあっけなく見破られてしまう。

 「どうか、したの?」

 「えっと…、なにが?」

 「…悩んで、そう」

そう、リンは簡単に見透かしてきたのだ。初めての時は特に驚いた。

 「そ、そんなことないよ。リンと遊べて私も嬉しいし、リンも嬉しい。ね?もうこれ以上なにも求めてなんていないよ」

弱さを隠そうとしていた。自分がただの機械で、リンとの間にある絶対的な壁は壊すことは愚か、触ることすら拒んでいた。事実に目を向ければ、耐え難い絶望がある。それはリンが悪いわけじゃない。ましてや、私が不運と言えるわけでもない。だって、答えは決まっていた。

 「私は、リンに逢えただけで満足だよ」

そう。これほど恵まれているのにこれ以上何を欲するとしているのだと自分に𠮟責する。

 「違う…よ」

 「…」

 「メハは…私にとって、家族、なんだよ」

 <止めてよ>

全身が悲鳴を上げる。それが悲しいなのか、愚かにも嬉しいなのか、私にはそれも分からなかった。ただ、叫んでいた。

 「壁なんて、思い込みだよ」

 「あるんだよ…現実には」

 「ないよ。わたしと、メハに…壁なんて、必要、ない」

 <止めてよ…>

 「……私は機械なんだよ…」

 「関係ない。家族に、血の繋がりも、人間である必要も、ない」

 <止めてよ……。こんなバグみたいに感情が溢れ出ちゃうのは、私がおかしいからだ。そうに決まってる。機械に心なんて!>

 「メハは、おかしくない。メハの良い所なんだよ。だから、わたしの、傍にいてよ」

あの時は泣いて、リンに抱き着いていた。泣いて泣いて、甘えさせてもらったと言っていい。私は勝手に甘やかしたり、手を引いてるつもりでも、リンの包容力に負けることはそこそこあった

 <こんなんじゃ、どっちが甘えてるか分かんないや……>

リンの性格で全部の思い出がダイヤモンドのように輝いていた。

 巡りめぐる季節のように一瞬だった。

自然であるもの自然の摂理を受け入れながら、それを人の努力で抗うのも尊重していたり、私との想いを大事にしたりするリンは、矛盾を自覚していたと思う。

 <でも、それがリンの良さだから…>

優しい気持ちになる。思い出に存分に浸った。どれもこれも濃さと量を秘めており、何度読み返しても深みは増していき心が彩られていく。そして、2周3周とした辺りで気づく…。

 <再起動されない?>

辺りはいつの間にか真っ暗になっており、光源は目の前に私が作り出した画面だけだった。もう、今さら命に執着しないが、足掻こうにも手段がないことを優秀すぎる演算スキルが答えを出していた。

 <あれ…見よう…かな……>

正直、気が進まなかった。アピスから送られた。アピスの人生、神子との歴史。それは人間性を蔑ろにした残虐で狡猾な略奪の物語。見るだけで精神が蝕まれていくようなものだ。勇気を振り絞って記憶領域から引っ張る》
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