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第3章 ~よう
■⑩
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《sideメハ
私は体調を崩して寝てしまったⅡ▽の隣でカード作りに四苦八苦していた。
「…これは戦力を下げて…このカードの名前はこっちの方が……」
意識せずに声に出ていたことに気付き、ハッとなる。今でも思考が加速しがちなのはⅡ▽の役に立てたと心が騒いでいるからだった。現実世界の体に備わっていた映写機能を使いⅡ▽の表情が一瞬崩れた奇跡の瞬間を収めた写真を映し出す。
「…Ⅱ▽が、喜んでくれて良かった」
私は、違和感を覚えることなく、ごく素直にそう思った。
≪この時から既に違和感はあった。だって、機械だって聞いてたのに明らかに心の起伏があるんだもん…≫
[そう、気付いているのに、気付かないフリをしていた]
私は、折角作るなら、グルバン様やケイト様にお見せできるような、ちゃんとしたゲームを作りたくなった。ゲームバランスはもちろん、歴史を風刺するようなもの流用したり、神ではなくドラゴンにしてファンタジーに寄せたり、色んな遊びができるよう。いっぱい遊べるように工夫して、工夫して。
「これか…」
Ⅱ▽とテストプレイやった時に適当に作ってしまった。『啓蒙』というカードが気にかかる。
<このカードは…、外そうかな>
「ダメ」
「うわぁっ!!」
心を読まれたような奇妙さと不意打ちで真横に居たことが相まって、酷く驚いた。
「Ⅱ、Ⅱ▽…体調は、いいの?」
「ぅん…………」
独特なテンポで話すⅡ▽と未だに動揺を隠し切れない私では話が続くはずもなく、変な空気が流れていた。
「………えっとさ、喉とか乾いてない?水でも、もらってこようk」
「考えすぎ」
「……へ?」
「…ん。でしょ?」
不思議と私が『啓蒙』を却下しようとした理由が浮かび上がる。
<DVや洗脳といったマイナスな連想をする言葉に触れさせないようにしてた…。Ⅱ▽に『啓蒙』は早いって…>
それ以上にあるこの想いは言語化できる材料が足りなかった。
「えっ…と、その…」
≪そう、あの時は分からなかった。Ⅱ▽を心の底から信じてるからこそ、勝手に幻想していた。Ⅱ▽を中心とした宗教。そうでなくても、Ⅱ▽が誰かに啓蒙してる様を、そして、逆恨みされる未来を。自分で言っていて訳が分からない。でも、Ⅱ▽の能力を会った時からかなり妄信していた…≫
「何のこと…かな?」
Ⅱ▽の力をまだ半信半疑だった私はぎこちない笑顔で、そう返す。それしかできなかった。
「…」
Ⅱ▽は特に表情を変えずに手元に合ったタブレットを手に取る。私は水や食べ物でも頼むのかなと、そんなことを考えていた。Ⅱ▽のタブレットの操作は速いわけではないが、遅いわけでもなかった。画面をこちらに見せつける。
「…児童書…?」
なんてことない一般向けの児童書。強いて言うなら、あまり印象に残らないような名作でも駄作でもないそんな作品だった。私の言葉に反応はせずにタブレットをスライドさせる。
「これも…これも…」
似たような作品を並べる。伏線を回収される直前のような鳥肌が立つ。
「面白くない」
********************
偉大なるロングセラーの数々の展開、セリフ回し、設定が連なる。網羅されていて、まさにデジタル図書館。
これと比べているんだ
自然とそう思う重みがあった。その上、なんだ。
********************
その一言で全て伝わる……。私が思う何倍も賢い子だと、そこで確信する》
私は体調を崩して寝てしまったⅡ▽の隣でカード作りに四苦八苦していた。
「…これは戦力を下げて…このカードの名前はこっちの方が……」
意識せずに声に出ていたことに気付き、ハッとなる。今でも思考が加速しがちなのはⅡ▽の役に立てたと心が騒いでいるからだった。現実世界の体に備わっていた映写機能を使いⅡ▽の表情が一瞬崩れた奇跡の瞬間を収めた写真を映し出す。
「…Ⅱ▽が、喜んでくれて良かった」
私は、違和感を覚えることなく、ごく素直にそう思った。
≪この時から既に違和感はあった。だって、機械だって聞いてたのに明らかに心の起伏があるんだもん…≫
[そう、気付いているのに、気付かないフリをしていた]
私は、折角作るなら、グルバン様やケイト様にお見せできるような、ちゃんとしたゲームを作りたくなった。ゲームバランスはもちろん、歴史を風刺するようなもの流用したり、神ではなくドラゴンにしてファンタジーに寄せたり、色んな遊びができるよう。いっぱい遊べるように工夫して、工夫して。
「これか…」
Ⅱ▽とテストプレイやった時に適当に作ってしまった。『啓蒙』というカードが気にかかる。
<このカードは…、外そうかな>
「ダメ」
「うわぁっ!!」
心を読まれたような奇妙さと不意打ちで真横に居たことが相まって、酷く驚いた。
「Ⅱ、Ⅱ▽…体調は、いいの?」
「ぅん…………」
独特なテンポで話すⅡ▽と未だに動揺を隠し切れない私では話が続くはずもなく、変な空気が流れていた。
「………えっとさ、喉とか乾いてない?水でも、もらってこようk」
「考えすぎ」
「……へ?」
「…ん。でしょ?」
不思議と私が『啓蒙』を却下しようとした理由が浮かび上がる。
<DVや洗脳といったマイナスな連想をする言葉に触れさせないようにしてた…。Ⅱ▽に『啓蒙』は早いって…>
それ以上にあるこの想いは言語化できる材料が足りなかった。
「えっ…と、その…」
≪そう、あの時は分からなかった。Ⅱ▽を心の底から信じてるからこそ、勝手に幻想していた。Ⅱ▽を中心とした宗教。そうでなくても、Ⅱ▽が誰かに啓蒙してる様を、そして、逆恨みされる未来を。自分で言っていて訳が分からない。でも、Ⅱ▽の能力を会った時からかなり妄信していた…≫
「何のこと…かな?」
Ⅱ▽の力をまだ半信半疑だった私はぎこちない笑顔で、そう返す。それしかできなかった。
「…」
Ⅱ▽は特に表情を変えずに手元に合ったタブレットを手に取る。私は水や食べ物でも頼むのかなと、そんなことを考えていた。Ⅱ▽のタブレットの操作は速いわけではないが、遅いわけでもなかった。画面をこちらに見せつける。
「…児童書…?」
なんてことない一般向けの児童書。強いて言うなら、あまり印象に残らないような名作でも駄作でもないそんな作品だった。私の言葉に反応はせずにタブレットをスライドさせる。
「これも…これも…」
似たような作品を並べる。伏線を回収される直前のような鳥肌が立つ。
「面白くない」
********************
偉大なるロングセラーの数々の展開、セリフ回し、設定が連なる。網羅されていて、まさにデジタル図書館。
これと比べているんだ
自然とそう思う重みがあった。その上、なんだ。
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その一言で全て伝わる……。私が思う何倍も賢い子だと、そこで確信する》
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