解放

かひけつ

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第3章 ~よう

■⑪

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《sideメハ
Ⅱ▽が言いたいのはきっとこうだ。それらの作品は論理的な面白さを忘れ、社会の倫理観にガチガチに規制されてしまっていると。

 <余計な思惑は、作品を腐らせるだけだと…Ⅱ▽はきっとそう言いたいんだ…>

 「そう」

そこで察してしまった私は、声が出なかった…。

 <だって……喋る必要なんてなくて、心が読めるんだよね…?>

それを肯定するかのようにⅡ▽は頭を縦に振る。

 「と、とりあえず。『啓蒙』はあのままにしておくね…」

 「ぅん」

Ⅱ▽は片手でタブレットの電源を落とし、元の場所に戻す。

 「それで…さ、Ⅱ▽はいつから心が読めてたの…?」

 「生まれた時…から…?」

悲壮感を纏ってるようにも、何も考えてないようにも見えて少々不気味さを覚えてしまうものだった。

 <どの年齢であっても、人の心が読めてしまったら、気が狂っても仕方ない…ってあ、やば>

心が読まれているということに対してシュミレーションしたことがなく、つい思ってしまう。

 「平気だよ…」

 「あーーその、どっちがかな?」

私が地雷を踏んだと思ったことに対してなのか。心が読めても平気だったということなのかが明確ではなかったから。

 「…どっち、も」

 「は、はは。そ、そっか…」

未だにテンポがつかめず、たどたどしくなってしまう。勘繰ってしまうのは、これまでに汚い人間をあまり近くに置かないようにはしていたはずであっても、そういう人間の心を読んでいてもおかしくないという点だ。

 「そういう、もの、でしょ…。みんな」

 「え…?」

 「清も、濁も、あるよ。そういう、ものでしょ」

活動時間が制限されていて対人の経験が少ないのが原因かもしれない。

 <関係ない>

世の中を知ったかで語りたがる年頃かもしれない。

 <そうじゃ…なぃ…!>

電脳世界での合理的な無茶といい、現実世界での有り余る余裕は、子供じゃできるわけがない。

 「……」

 <目が見えないのはずなのに、臆せず無駄なく歩けるのも、言ってしまえば悟った坊さんのすること。心まではっきり読めてしまう…。リンに、私がすべきことって……>

 「遊ぼ」

Ⅱ▽の手にはトランプが握られていた。

 「……あのね。分かってると思うけど、Ⅱ▽はスゴイ能力を持っていてね。折角の才能なんだし、もっとさ」

 「いい。わたしが、いなくても、世界は、回る」

何も言えなくなってしまう。まさか、精神年齢が自分を上回る子の面倒を見るとは夢にも思ってなかった。

 〈ケイト様的にはリンのために私を作ったわけで、想定はしてたんかもだけど、私の役割も大してないのかもしれないです…〉

トランプの綺麗に混ぜたⅡ▽はそれを四つに分ける。私に三役やってくれと暗に言っていた。渋々、それに従うのだが、忘れもしない。その瞬間にⅡ▽は言った。

 「わたしは、わたし。……アイム…ヒアー…」

と、そこで画面は落ちる》
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