解放

かひけつ

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第3章 ~よう

器⑦

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☆sideシン
リンは一息に戦況報告をする答える

 「全国民に捜索させ、善人アピール、好感度稼ぎ。たぶんミラボールからホログラムを出すだけじゃなくて、機械系統の通信統合…巨大ネットワークができてる。その上、地上の情報を細かくデータ化。妖精の力使ってそうだから、異能なしで妨害は不可能。複数体確認されるアピスの中身こそほぼ一緒だけど、異能はばらつきがある。軽く、中身を見たけど、アピスのために全てを捧げよって言ってた。統率か、洗脳か…。プログラムされてるのかも。裏切りや説得、改心は見込み薄」

ケイトは小さく頷く。

 「だから…」

ッッ―――――――――――――!
ギギギ…ギ

 「まず、連絡を絶つ」

 「よろしい」

 「国外は?」

 「いないわね」

 「わかった」

リンはまずケイトがやったように時間を限りなく遅くした膜を、都市を囲うほどの規模でだ。それを三か所で形成している。空間把握はリンやケイトの方が精度が良いだろう。オレはこの辺に使われているというざっくりしか分からん。

 要は時間的に介入できないフィルターかけることで通信妨害をしていると。

同時に、アピスたちの身体を寸分違わず座標指定し、【時間】を限りなく遅くする。親和力があってか僅かに抵抗するが、それを物ともせず静止させる。厳密には違うのだが、静止したと言っていいレベルの仕上がりだ。

 だが、ここで終わらない。

リンの眼が言っている。これは下準備。手術で言うところの麻酔。リンは彼らの【魂】を引き出す。行動不能になったアピスをゆっくり、ゆっくりと【風】で持ち上げ、パネルの前に集める。傍から見れば、アピスがひとりでに浮いていったように見える。何十人と集まるんだから、奇妙なことこの上ない。【魂】を半分引き抜いた上で、霊達の協力で戻れないようにしている。完璧な無力化だ。

 「え、なになに?イベント??」

 「また、王様が??」

 「ったく、なんだい次から次と」

ざわつきは波及する。透き通った『声』はあっさりと浸透する。

 「お騒がせしてすみません。アピスが暴走を止めるため、拘束しました。空中にいるアピスはみなクローンです。改めて、あとで説明します」

 〔………〕

ケイトの修行で変わってしまったかもしれないと思っていた。実際、心身ともに変化はある。まともな声明であったが、感情味の薄いリンらしくもあった。ただ誠意は、断定するわけじゃないがリンの持つ博愛は、本物なんだ。

 〔お疲れ…リン〕

 「ん…!?」

 「んまぁ、予想通りだね」

アピスの『声』が聞こえたのだ。

 「はーーーい。注目。またまた義妹のリンが変なことをみんなに伝えたみたいなんだけどさ。クローンなわけないじゃん?ww実はこれサプライズ用だったんだよねw」

ボカーーン!!

アピスのクローンが爆発する。ただ凄くファンシーで、紙吹雪が大量に散る。そりゃあ、もう雪や雨を思わせるほどの……

 「こっちが爆弾本命なんだよね」

またしても、リンの周りにだけ聞こえるような『声』がする。オレでも即座に理解する。紙吹雪の一つ一つが小型爆弾だとでも言いたいらしい。いい加減にしてくれ。

ギギギ…ギ

リンはアピスのクローンにしたようにすべての紙吹雪の時間を止める。

 「あぁ、ミラボールも爆弾になれるんだった♪」

ミラボールの時も止める。街中のミラボールの座標を完璧に把握し他を巻き込まない精密さ。簡単にできたもんじゃない。

 「建物にもあったなぁ」

 「人の持ち物に仕込んだりしたなぁ」

 「生物に埋め込んだりしたもんなぁww」

爆弾らしきものが見つかる度に時を止める。止める。止める。

 「おかしい…。アピスはここにいなかったはずだったし、爆弾もさっきまでなかった……」

リンは息絶え絶えに、爆弾処理を行う。

 「時間の壁作った程度で勝った気になるなよ。前回のは勝たせてやったんだよ」

ルピカは心配そうにリンの背中をさする。ケイトは冷たく言い放つ。

 「このままでは、反撃は無理じゃな」

 「……」

 「ダラダラと続けるのかい?」

 「お母さん、お父さん手伝って!」

 「言葉にしなさい」

 「お父さんのクローンを受け皿にして、お母さんが異能の指示を出して」

 「バン」

リンを通してケイトが異能を使用する。空間と空間をトンネルのように繋げる。

 「させるかよ」

 「リン」

アピスが妨害するために取り出したレールガンを、竜巻を起こす勢いで破壊する。が、一瞬とはいえ構えさせてしまう。人々の視界に入らないように配慮したため見つかっていなかったが、注視されては…まずい。

 「話は聞いた」

ビュゥウオオ!!

砂埃が巻き上がる。リンとトンネルを覆い隠すように!!

 「頼ってくれてありがとう。ここは任せてくれ!!」

 「グルバン…さま」

グルバンのクローンが姿を現し、ルピカは恐縮と感嘆の織り交ざった声を上げる。クローンの背後にいるグルバンの霊の眼が全てを物語っていた。数瞬のアイコンタクトだったが、通じ合えた気がした。オレ達は、みんなで乗り越えるんだ。
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