解放

かひけつ

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第3章 ~よう

ナイ③

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☆sideシン
山頂のお茶会。リンとルピカを椅子に座らせたケイトは、アピスの土人形を作って問いかける。

 「まず、アピスの行動はなんの意味があったか」

 「こちらの活動を制限させつつ、善人アピール。こちらが下手に勝っても誤解とくのも大変だし、大義名分は取れたから行動しやすい…。これ…おいしい」

 「公表したのは、こちらから、その手をさせないってのもあるじゃろうな。じゃあ、ミラボールの脅威は?」

ケイトはリンに微笑みかけながら、ミラボールを取り出す。ケイトの微笑みは、好きなだけ食べていいと言っていそうだが、リンは食べるのを止めて、眉間にしわを寄せる。

 「圧倒的普及率とリンク機能、と電子機器との最先端。ホログラムから電話、ゲーム、買い物、何から何まで、デバイス統一を起こしかねない程の異常な数と全デバイスに強制P2Pリンクで電脳世界の支配。位置情報の独占による世界規模のマッピング。一つでもやばい。全部乗せ。構造不明」

 「時間の流れを遅くしたフィルムで覆うことで回線遮断を試みるも」

 「アピスが飛んでサーバー役して、対策済み。点移動してきた原理も謎」

 「爆破の原理もそれの応用でしょうね…」

ミラボールをふよふよと空中で泳がせたかと思えば、真っ二つに異能で割く。分解した部品を踊るように取り出し、部品を再度組み直し、ミラボールを再構成する。

 「パッと驚く技術が入っているわけでもない。まぁ最適化したら、リンクとホログラムくらいはできるだろうねぇ」

バキッ!

ミラボールを粉々に破壊し、逆再生のように元に戻す。

 「ミラボールがアピスである可能性は限りなく低いときた…」

 「ん」

 〔さらっと恐ろしいこと、言うなぁ…おい…〕

 「さすれば、異能を持ちのアピスを無力化できたのが一番の戦果なんかねぇ?」

 「『霊体』を縛るのは有効的。ただ、アピスの親玉(?)が見捨てたのは、まだ戦力があるから……。アピスたちに妖精がのも印象的。嫌々、一緒にいるみたい」

その話は聞き覚えがあった。電波塔の時も、リンがそう言ったから確信が持てたんだ。

 〔ソレの理由なら…知ってるぞ〕

 「……」

2人は口を閉ざす。当ててしまうからもしれないから、言い始めたオレの肩身が狭まるとでも言うのだろうか。割とあり得るんだよなぁ…。

 〔アピスは『隣人』を人質にして妖精を従わせている。ルール違反禁忌を何個もやって、理不尽を実現してる。『瞬間移動』もそのせいかだと思う〕

妖精を複数従え、クローン媒体も沢山ある。まるで兵器。龍児と闘っていた時とは、スケールが違う。

 「そうじゃな…『瞬間移動』アレは…物質の再構成じゃない。『トンネル効果』みたいなもんじゃからのぅ」

 「…だよね」

知らない情報出てきたんだが??

 〔な、なんで『トンネル効果』って……?〕

 「小さい粒子とかで起こる現象…それに似てる感じだったから、たぶんそう」

噛み合っているんだよな??

 〔…リンやケイトもできるのか?〕

2人は目を合わせて頷く。

 「無理ね。原理が理解わからないもの」

 <???>

それがトンネル効果ってことじゃないの?とは飲み込む。

 「どう異能を使ったら、あぁなるのか…ね」

 〔なるほど…〕

でも、思う。リンを山頂ここに飛ばした似た原理じゃないのかと。

 「【ワープゲート】と『瞬間移動』は別物ぞ。【ゲート】は『時空』の応用で移動時間をほぼゼロにしてるだけじゃ。タクシーみたいなもんやね。でも、『瞬間移動アッチ』は自然現象のように、『空間』を操作した形跡はない」

 〔…ほぅ?〕

 「『座標』こそ見てるみたいだけど、異能は別のとこに使ってるみたい。結果は『瞬間移動』、そうなる仕掛けに異能を使ってる。おそらくね」

 〔…なんとなく分かった〕

本当に、どちらも大概だ。

カチャン…

ケイトはティーカップを置き、リンに切り出す。

 「はて、アピスが逃げたのは?どう考える?」

 「手の内を曝したくないのと意味がないと思ったから。お母さんの力は脅威に思われてたと思う」

 「正しいと思うわ」

 「でも、お母さんも決め手があったわけじゃない。悪手はわたしの選択肢がなくなること。利害一致で手を引いた」

 「あってると思うわ」

 「……ついていけない」

 「まぁ、無理あるな」

ルピカとグルバンが肩を並べているのが、オレから見たら新鮮で少し嬉しい。それはさておき、

 〔情報戦果はこんなもんかな?〕

 「異議なし」

 「こんなもんじゃな」

 〔これからどうする?〕

 「ば、場所なら知ってます…」

 「海底じゃろ…?」

 「は、はい」

 「親和力が浸透しきっていて、わてでも中は知らんよ」

 「…右に同じ」

 「海面まで【ワープゲート】作るけどいいかしら?」

 「ん」

 「わ、私の記憶ではエレベーターで病院まで行けてたんですが……」

 「『記憶』見るぞ?」

 「あ、お願いします…」

 「ふむ。これも例の応用みたいね」

 「あー。エレベーターと『瞬間移動』か…。なるほど」

 「え…そうだったんですか……?」

 「つまり、直接連結するルートはないし、かと言って【トンネル】もできない」

 「『海水』をどけて、直接建物に…」

 〔目途は立ったな…〕

話が一度途切れる。これはお茶会の終わりを意味していた。

 「ルピカは…どうしたいの?」

 「私はカーセ家に強い恩義があ」

 「責任負わなくていい」

 「…そ、そんなつもりじゃ!」

 「もし、ルピカがわたしたちと無関係だったら、参加しないでしょ?」

 「足手纏いだからですか…?」

 「……」

 「たとえ仕事じゃなくだっても人間性に惹かれています!アピスやつの素性を知っていたら、早いうちに手を打たないといけないことくらい分かります…!」

 「うん」

ルピカは義憤に満ちた顔つきから、メッキが剝がれるように涙の気配が溢れ出る。

 「……ただ…関係がないだなんて、そんな悲しいこと言わないでくださいよ!!私にはもう…この居場所ここしかないんです!!」

 「…うん」

 「足手纏いなのは分かっています!大切なものを失うかもしれないのに『何もしない』なんてできないし、使い捨てで良いから役に立ちたい!!」<盾になるとか、活躍とかいう次元じゃないのは分かっている。でも、奇跡的にリン様が死ぬを阻止できたら…、もし、戦線復帰までの時間稼ぎができるのなら……死んでいた命捧げていい!!>

言っていることと『想って』いることが同時に聞こえる。ルピカの強すぎる『想い』は異能として表出しそうなほど粗ぶっていた。

 「わかるよ…その気持ち」

 「あ…あぁ…!」

リンは受け止めることを選んだ。

 「一緒に行こう」

 「ありがとうございます…」

 「しておるな…リン」

 「うん…」

ケイトが【ゲート】を作っていた。アピスの拠点に一番近い浜辺だそうだ。ルピカも、リンも【ゲート】をくぐる。嫌な予感は唐突に来るものだ。

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!

。初期微動なんだ。コレで、だ。異常事態なのは一目瞭然。まさかと思って、【ゲート】をくぐり抜けてみる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

 浜辺でも地震が起きている。

オレとケイトは揺れを体感することはないし、冷や汗だって出ない、そのはずなんだ。


 


激しい振動は地球が鳴いているようだ。誰もが直感する。

 これは…前触れだ…。

始まったら、止められない終末の合図。そう思わずにはいられない程の……
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