解放

かひけつ

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第3章 ~よう

ナイ⑤

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☆sideシン
【ゲート】を抜けた先は、アピスの本拠地の真上。つまり海上。自由落下!!

 「…ぇえええええ!!」

……ザパーーン!

 リンとルピカが通れるほどの穴を作る。

 <海に穴開けるって…神話的だな……>

 アピスが仕掛けたであろう『海水』の親和力を物ともせずに海を穿つ。

リンとルピカに足場はない。万有引力定数に従って加速落下する。

 「…フゥ……グ……!!」

ルピカは本拠地への突撃と察して、口を押える。それでも、声は漏れるし、気絶は何度もしているが、常人にしては頑張っている方だ。

 リンが加速させながら落下するんだから、耐えられる人間はそういない。

あっと言う間に、建造物の真上まで到着。アピスの拠点だ。拠点に対して、リンは足で【波紋】を起こす。落下のエネルギーを無駄なく伝導させ、物質が、空間が歪む。リンにダメージはない。

グニャン!!トッ…ドン!

拠点の天井を歪曲させ隙間を作り、さらりと侵入。

 侵入成功だ。

異能で扱いにくい固体に対しての達人的アプローチ【波紋】。親和力の高いものに対しても有効であるため非常に有用だ。

 <何と言っても…>

侵入できたのはでかい。親和力が明らかに高い拠点の周りの『海水』をするりと抜けられた。かなりハードな死地を乗り越えたのだ。

 <だが、相手はアピス。何を考えているかは謎…!>

一見ただの秘密基地のような何の変哲もない廊下。警備員が近寄ってくるが、アピスではなさそうだ。複数名の一般人を確認して、どこかホッとする

 <なぜホッとした??一般人がいるなら、下手に名声が下がるを作りたくないとするはずだ。なら…、アピスなら、どうする?>

 〔リン!〕

 「ん」

 「侵入者!シyi!@!!」

ドン!!

魂抜こんばつ】を【波紋】と同時に行う。親和力が非常に高い『魂』に対して、異能ができるだけでもすごいが、時間がかかったり抵抗されやすいのがネックだった。だから、本来は【時間】を遅くしたり、【波紋】を用いたりと条件が厳しいのだが、

 <こうも簡単に実践すると…は??!>

【魂】を抜かれたハズなのに。まだ攻撃は届いてこそないが、明らかに身体を肥大化させ、あらゆる場所から幾本いくぼんもの手が生える。改造人間だとは読めていたが、ここまでするか…!!

ドドドド、ドン!!

リンがやったのはとんだ荒業。【魂抜】と【波紋】の連打。みるみるうちに弱っていき、リンが攻撃されることはなかった。他の警備員らしき改造人間も同様に処理する。リンは一か所に纏めて、問う。

 「…どうしたい?」

 「…死にたい」

 「なんで俺がこんな目に…」

 「殺してくれ…」

 「あの人には逆らえない」

一人の口から何人もの声がする。きっとケイトが科学の乱用を止めたのは、行き着く先に生命を冒涜させる禁忌があったからだろう。だから、止まった。グルバンも暴走はしたが、根本的な目的は蘇生。どこの人類も望む…願いだ。

 これは違う。

兵器となってしまった彼らを簡単に戻す術はない。リンは

 「また後で聞く」

 「へーーーそういう判断できるんだ」

それは明らかにアピスの声だった。

 〔お前どこから!!〕

 「ここ、ここ~」

リンの肩に乗った小さな小さな人形のようなソレは、シルクトップハットにステッキに口髭、スーツを着こなす紳士をかたどっていた。だが、声も、顔もアピスだ。

 「ようこそ、我が基地へ」

明確な敵意は……ない。だが、嫌な胸騒ぎが起きるのは必然であった。ナニカの予兆を感じ取ったようにリンも、ルピカも静まり返る。ここは、アピスの庭だ。
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