解放

かひけつ

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第3章 ~よう

ナイ⑥

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☆sideシン
ソイツはよく言えば気さくだった。

 「んだよ、反応悪いなぁ~。驚かせガイってのが、ないじゃないか」

 「……」

 「あ、なんで俺が出張ったか知りたいか?!」

 「…見張っててね」

リンは小さなアピスを無視して霊にお願いする。

 「思ったより少ないなぁ。もっと大勢で来るか、神レベルまで耐性上げた霊を連れてくるかと思ってたよ。やっぱり、霊を入らせない仕掛けが待ってることに気づいてたってことかな??」

こいつにはデリカシーや遠慮がないらしい。アピスほどの悪意があるわけでもなく、ぺらっぺら。おしゃべりな記者に似ている。

 「何しに来たの?」

 「…リン様、こんなやつ無視しましょうよ」

 「案内だよ案内。来た時には門番がのされてたけど、こっちから手を出しちゃったし気にしなくていいぜ。いやぁ、強いねぇ~かっこよかったよ、うんうん」

 「なんで…?」

 「り、リン様!」

 「よくある話だろ~?家の主が話し合いの相手を出迎えるのはさ…ってそんな警戒するなって、降参!まじ、なんもしねーって!」

 「ルピカ」

 「リン様?!こんなやつ信用しちゃ!」

 「敵意はないし、嘘言ってもないよ」

 「……」

 「よくある話だって…。マナー悪い客が屋敷に来ても出迎えはするだろ?死んでもいいか、死なない奴に案内させて、どんなやつか確認したいんだ。話が通じるなら案内と共に主の元に、通じない奴だと案内は殺され主に会えない。な?古典的なやり方さ」

 「わかった」

 「うれしー。分かってくれると思ったよ、うんうん」

 「いいんですか?」

 「だって情報の横流しとか、わたしに敵対する気とか、ある?」

 「ないないない。あるわけない」

 「ほら」

 「…シ、シン様はどうお考えでしょうか…?」

 〔リンが言うから考えはあると思うし…今のとこ嘘はないらしい…〕

 「…そうですか…」

 「そうそう、衝撃の、サプラーーィズにはなったかな?」

 <再会…?>

いつ会っていたかによっては、情報が筒抜けかもしれない。ケイトとリンの特訓中かもしれない。

 「…いつ会った?」

 「さっきだよ、さっき。まさか、グルバンの殻にケイトを入れてくるなんて…ネェ~」

 <あの場に居合わせたのか…>

なら、大した問題はない……?

 「リンは、分かったみたいだけど、神様のために頑張っちゃおっかな」

ゴキゴキググュ……!

 「伸縮自在!百面相!千変万化!分かるか?俺もアピスだって!!」

背丈、服装があっと言う間に変わって、見慣れたアピスに変形する。オレに向かって、煽って来たアピスを思い出す。

 あの場に居合わせた…違うよな……

 〔お前が芝居を打った張本人か!!〕

 「やっと分かってくれた?!おせーーよ」

グッダン!!!

ルピカがアピスの胸倉を掴んで壁に打ち付ける。充血した目が、本気だと物語っている。

 「お前だけは…!!」

 「…ルピカ…止めて。そのアピスは命令されただけ」

 「リン様……!こいつは、カーセ家に泥を塗ったんです。誰から命令されてたって、こいつさえいなければ…!」

 「似たやつがやってた。そうだろ?『役割』があるだけで、『個』ってのはさほど大事じゃない…」

ルピカの目の前からアピスは消え、その背後に現れる。

 「いい加減わかるだろ?『アピス』は『国』だ。大国なんだ。血筋も力もない愚民は引っ込んでろ」

 「話を聞き入れない王なんて…長くは続かないよ」

 「フフッ、だよねーーーーー。だから、唯一選択肢のあるリンちゃんだけは、謁見しないと、ネ♪」

 「私は…会うことすらできないのか…?」

 「さぁ~~、アウトオブ眼中ってヤツだよ。好きにするといい」

 「……」

そのアピスからのルピカの扱いはぞんざいで、居ても居なくても変わらないと言っているようだった。

 「呼び方は…?」

 「よくお聞きしてくれました!吾輩、『神出鬼没』『演出家』『エンターテイナー』とまぁ肩書多くありますが、お好きにお呼びください!」

 「ん。エンちゃんで」

 「リ、リン様!?」

 「オーケーオーケー。エンちゃんね。折角だから、お仲間も紹介してあげるよ」

ゴクリッ…

オレかルピカが息を飲んだ。願ってもない情報だ。少しでも、情報が欲しい…。嘘や惑わされる類じゃなければ、だが。

 「そんなにガッツくなってw。仲間と言っても、一人一人なんて言わないよ。『ネームド』の話をしよう。まずそうだな。『理を司る神の申し子』って自称するやつがいる。異能を勉強し続けたやつだ」

 「いやに中二っぽいな…」

 「仕方ねぇーだろ!精神年齢が低いのは?」

 <こいつ…食えないな…>

リンも少し苦い顔をしている。感情が読めないのだ。嘘は言っていない。が、ソレが『カプセル』を取り巻く世界的常識に対してか、アピスがクローン量産するに当たってのことか。情報が増えていることには変わりないので聞かざるを得ない。

 「お次は『スペシャリスト』。まぁ『エンジニア』の方が合ってるけど、彼失くしてここまでの勢力はない。なんてったって、古参だからねw」

 「古参…?」

 「そうそう、グルバンに許可を得て数体のスペアを用意できたが、なんもしないわけないだろ?お勉強させ続けたのが『スペシャリスト』だ。肉体を虐め続けたのが『パーフェクトボディー』の異名を持つ男に、俺達が増えるになった『オリジナル始祖』、最強個体と言わしめる『最強ザ・ワン』。特にこの辺りがヤバイね」

 「…」

 「……」

『エンターテイナー』は指を一つ一つ指して見せながら話す。それをひらひらと振って主張する。

 「この辺のやつらは数十年先の武力でも御せない強さがある」

 「ちょっと嘘…?」

 「あーー誰だと思う?」

 「『オリジナル始祖』…」

 「さっすがー、隠せないかw。『オリジナル始祖』ならとっくに死んでるようなもんだし」

 「へ…?」

 「あー、戦力的にねwだって、昔から酷使してるから、そりゃあ限界来るよねってだけで」

 「『オリジナル始祖』がいないとクローンが増やせないとか…?」

 「まっさかー。もうデータ取れてるし、生かす価値なんてないよw」

 「じゃあなんで?」

 「勘違いするなよ。僕たちは、家族でも何でもないんだ。『オリジナル始祖』はついでで生かしてるだけ。俺らの共通命令は『アピスのために全てを捧げろ』だよ。個の命なんてどうでもいい。誰か一人でも、アピスが生き残ればいいんだ。生存競争で勝ちやすくするためにデータを統合したり、特化学習、適応したものが『ネームド』だよ」

 「なるほど…」

 「あと…分かってる?数十年先の武力も通じないの意味」

 「それぞれが、世界征服できるほどの力を有しているってことでしょ…?」

 「うんうん、大正解~。他にも、『不義アウトロー』、『人間的合理性スマート』、『不死アンバランス』そして、『神出鬼没エンターテイナー』である僕を含め、『ネームド』は9人いる」

 「…」

場の空気を完全に握っている。『エンターテイナー』を自称するだけのことはある。

 「だーけーーど。安心して欲しい。半数は敵対しないって!そして、対峙するのは2人とかじゃなかろうか…。こんな情報、僕以外からはないっしょww」

ニコニコと浮かべる笑みは、アピスのこれまで見てきた顔と似て非なるいやらしさがあった。
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