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第3章 ~よう
ナイ⑦
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――sideルピカ
私はリン様たちの話についていけなかった。ただ話の断片からでも伝わるアピスの悪意だけは分かった。もやもや?ザワザワ?形容しようのない感覚が増幅する。そんな中で一つの言葉が浮かび上がった。
<じゃあ、エンターテイナーは?>
アピスは集合体のような表現をしていた。本当なのかどうなのか分からないと普通はなるが、リン様が本当だと言っている。
つまり、女王蜂や細菌のような種単位での意識。
とても人間的とは思えないが、『少しでも残れば勝ち』だなんてクソゲーにもほどがある。ハッキリ言って裁ききれない。国家…だ。個人を裁けても、国レベルで裁くことは難しい。何と言っても、アピスの組織内で中立やレジスタンスが出てくるも、それすら全てアピスだ。
怒りの矛先を計画を実行したやつだけにぶつけて、それでお終い?
<リン様をここまで…ここまで迷惑かけて、エンターテイナーは助かって、結局、アピスの思い通りってか?ふざけんなよ…>
自分が殺意が呑み込まれかけていたことをリン様と目が合って気付く。
「す、すみません」
リン様は何も言わずに小さく頷く。
「ねぇ、エンちゃん。あなたはどうなの?」
「どうって?」
エンターテイナーは明らかにわざと聞き返す。
「…わたしの味方になんでなるの?」
そんなの分かっている。ここにいるみんな、互いの心の内は分かっていても、声に出したくなっているんだ。リン様は真偽も分かるし、味方内の連携も円滑になる。エンターテイナーは良心に付けこむため。
「話したまんまだよwアピスが生き残るためだよ。手助けは情報提供だけでも大きいでしょ?あ、安心してよ。僕からちょっかいかけることないよ。情報は僕を介さずに共有されてるんだ。裏切るわけじゃないんだし、一緒にいていいでしょ?」
「そうだね…」
全て本当なのだろう。故に、歯がゆい。敵意を向けようがない存在。法律上間違ったことをしていない嫌いなやつのように、手の出しようがないし、リン様に進言する要素がない。唯一いけるなら、不快感ってところを全面に…
「そんなに追い出したいって思ってるなら助言するけど」
心を読んだような切り出しについビクッと反応してしまう。
「追い出すんなら、コイツでしょ?」
エンターテイナーは私を指さす。
何を言っているんだ………??
いや、その通りかもしれない。
さーーっと血の気が引く。確かに、足手まといで、アピス側に利用されてもおかしくない。あいつはそういったデメリットはないと証明されたようなものだ。その事実は知っていた。が、この流れで言われるのはマズい。
足手纏いはいいのに、生きたがりはダメなの?
利益がなければまだ反論できたが、身内だぞっていうのを前面に出す他、追い返せない。
「ルピカは、エンちゃんを仲間にしたくないの?」
「え…」
心が読まれた。その能力も把握していたが、苦いタイミングだ。
「なにが心配?約束事決めたらおっけー?」
「………」
『おっけー』と言う単語が脳裏で明滅する。リンらしくなくて、ある意味、リンらしいと腑に落ちる。ずっと言葉を探っていた自分がなぜだかバカバカしく思えた。グルバン様にお仕えしていた頃は言われたことだけをしていたし、リン様にお仕えしていた頃は、『決められたことをするだけ』でこれっといった能力を求められなかった。
<そう…>
知識も、悩みも、能力も、何一つ叶うことはなく、全て見透かされていた。少しでも役に立てたのだから良かったのだと、もう一つの体のように思えてもらって幸運であると、仕事に努めていた。が、今は違う。助言なんて本来ないし、手伝えることも、本当に足手纏いだとしても、そこじゃない。
「私は…そやつが隠し事をしているように思えてならないのです」
「……話したらいいと思う。わたしが見とくから」
「リン様…」
リン様が『見とく』ということは真偽は任せていい。あとは少しでも情報を引っこ抜く。リン様が聞き出せないことを聞くしかない!!
「痛み入ります!ですが、リン様はリン様で情報の整理をしていてください。視界にさえ入れておけば、分かりますかね?」
「ううん、流し聞きでいい。ごゆっくり…?」
リン様は少し分かっていないように返す。微笑ましい気持ちを胸にしまい、向き直る。少々、ドスの聞いた声を意識する。
「取り調べといこうか…」
「怖いなぁ…犯罪はしてないんだけどなw」
「…私達に隠し事をしているな?」
「私達…って、誰達の事?」
「コイツ…!」
へらへらとした態度、おちょくるような言葉選び、うようようねうねと陽炎のように揺らめく衣装・容姿と……。考えたいことを邪魔してくる要素が多すぎる。
「まぁ、しているね。でも、言えない」
「は??」
「仕方ないだろ?言えないことくらいあるさ」
「…せめて、どれくらい被害かくらいは言えるよな?」
「そうだなぁ。リンが死ぬのとそれ以外が死ぬのがある」
「……それの詳細も…言えないんだろ?」
「そうだな」
「少しでいい。ヒントでも、何でも、くれないか…?」
「それは無理だな」
「じゃあ。じゃあ…質問にイエスかノーで反応するだけってのはどうだ」
「意味のない足掻きだね」
「…やってはいいんだな?」
「好きにするといい」
心がないんじゃないか?ロボットや洗脳、操られている可能性も考えてはいた。が、そういうわけじゃないらしい。だからと言って終われない。聞けること全て、聞き出してやる――
私はリン様たちの話についていけなかった。ただ話の断片からでも伝わるアピスの悪意だけは分かった。もやもや?ザワザワ?形容しようのない感覚が増幅する。そんな中で一つの言葉が浮かび上がった。
<じゃあ、エンターテイナーは?>
アピスは集合体のような表現をしていた。本当なのかどうなのか分からないと普通はなるが、リン様が本当だと言っている。
つまり、女王蜂や細菌のような種単位での意識。
とても人間的とは思えないが、『少しでも残れば勝ち』だなんてクソゲーにもほどがある。ハッキリ言って裁ききれない。国家…だ。個人を裁けても、国レベルで裁くことは難しい。何と言っても、アピスの組織内で中立やレジスタンスが出てくるも、それすら全てアピスだ。
怒りの矛先を計画を実行したやつだけにぶつけて、それでお終い?
<リン様をここまで…ここまで迷惑かけて、エンターテイナーは助かって、結局、アピスの思い通りってか?ふざけんなよ…>
自分が殺意が呑み込まれかけていたことをリン様と目が合って気付く。
「す、すみません」
リン様は何も言わずに小さく頷く。
「ねぇ、エンちゃん。あなたはどうなの?」
「どうって?」
エンターテイナーは明らかにわざと聞き返す。
「…わたしの味方になんでなるの?」
そんなの分かっている。ここにいるみんな、互いの心の内は分かっていても、声に出したくなっているんだ。リン様は真偽も分かるし、味方内の連携も円滑になる。エンターテイナーは良心に付けこむため。
「話したまんまだよwアピスが生き残るためだよ。手助けは情報提供だけでも大きいでしょ?あ、安心してよ。僕からちょっかいかけることないよ。情報は僕を介さずに共有されてるんだ。裏切るわけじゃないんだし、一緒にいていいでしょ?」
「そうだね…」
全て本当なのだろう。故に、歯がゆい。敵意を向けようがない存在。法律上間違ったことをしていない嫌いなやつのように、手の出しようがないし、リン様に進言する要素がない。唯一いけるなら、不快感ってところを全面に…
「そんなに追い出したいって思ってるなら助言するけど」
心を読んだような切り出しについビクッと反応してしまう。
「追い出すんなら、コイツでしょ?」
エンターテイナーは私を指さす。
何を言っているんだ………??
いや、その通りかもしれない。
さーーっと血の気が引く。確かに、足手まといで、アピス側に利用されてもおかしくない。あいつはそういったデメリットはないと証明されたようなものだ。その事実は知っていた。が、この流れで言われるのはマズい。
足手纏いはいいのに、生きたがりはダメなの?
利益がなければまだ反論できたが、身内だぞっていうのを前面に出す他、追い返せない。
「ルピカは、エンちゃんを仲間にしたくないの?」
「え…」
心が読まれた。その能力も把握していたが、苦いタイミングだ。
「なにが心配?約束事決めたらおっけー?」
「………」
『おっけー』と言う単語が脳裏で明滅する。リンらしくなくて、ある意味、リンらしいと腑に落ちる。ずっと言葉を探っていた自分がなぜだかバカバカしく思えた。グルバン様にお仕えしていた頃は言われたことだけをしていたし、リン様にお仕えしていた頃は、『決められたことをするだけ』でこれっといった能力を求められなかった。
<そう…>
知識も、悩みも、能力も、何一つ叶うことはなく、全て見透かされていた。少しでも役に立てたのだから良かったのだと、もう一つの体のように思えてもらって幸運であると、仕事に努めていた。が、今は違う。助言なんて本来ないし、手伝えることも、本当に足手纏いだとしても、そこじゃない。
「私は…そやつが隠し事をしているように思えてならないのです」
「……話したらいいと思う。わたしが見とくから」
「リン様…」
リン様が『見とく』ということは真偽は任せていい。あとは少しでも情報を引っこ抜く。リン様が聞き出せないことを聞くしかない!!
「痛み入ります!ですが、リン様はリン様で情報の整理をしていてください。視界にさえ入れておけば、分かりますかね?」
「ううん、流し聞きでいい。ごゆっくり…?」
リン様は少し分かっていないように返す。微笑ましい気持ちを胸にしまい、向き直る。少々、ドスの聞いた声を意識する。
「取り調べといこうか…」
「怖いなぁ…犯罪はしてないんだけどなw」
「…私達に隠し事をしているな?」
「私達…って、誰達の事?」
「コイツ…!」
へらへらとした態度、おちょくるような言葉選び、うようようねうねと陽炎のように揺らめく衣装・容姿と……。考えたいことを邪魔してくる要素が多すぎる。
「まぁ、しているね。でも、言えない」
「は??」
「仕方ないだろ?言えないことくらいあるさ」
「…せめて、どれくらい被害かくらいは言えるよな?」
「そうだなぁ。リンが死ぬのとそれ以外が死ぬのがある」
「……それの詳細も…言えないんだろ?」
「そうだな」
「少しでいい。ヒントでも、何でも、くれないか…?」
「それは無理だな」
「じゃあ。じゃあ…質問にイエスかノーで反応するだけってのはどうだ」
「意味のない足掻きだね」
「…やってはいいんだな?」
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