解放

かひけつ

文字の大きさ
104 / 136
第3章 ~よう

ナイ⑧

しおりを挟む
☆sideシン
オレはリンと最後の作戦タイムなることをどこか予感しながら、話し合う。

 〔リン…どうする?8人もヤバイやつがいるってのは計算外じゃないか?〕

 「強いのは…『理を司る神の申し子』、『最強ザ・ワン』、『パーフェクトボディー』かな」

 〔なんでそんな強いのかは謎だな…。あと、あんなにバリエーションあるのも〕

 「後で聞くよ」

 〔…そうか。ここに侵入して他に増えた情報は?〕

 「誘導された。これからはいる部屋の方やもっと潜って最下層も考えたけど、ここ以外は殺意が強め」

 〔海の親和力も露骨にこの辺りだけ弱めにされてたもんな…〕

 「うん。エンちゃんはある意味スパイだね」

 〔!…そうだよな〕

 「だから、壊さないといけない」

 〔リン…〕

なんとなく、『殺し』ではないと分かった。リンこそ、壊されないでくれよと強く思う。

 「ルピカ…終わった?」

 「おおよそは…」

 「時間ないっしょ~~。さっさと行こーよ―」

 「エンちゃん。『ネームド』の強さの秘訣教えて」

 「それはマチマチだし、ひみt」

 「心読ませて」

 「見れるものなら」

リンが集中していくのが分かる。が、ガクンと姿勢を崩して両手をつく。

 「リン様!」

血がポタポタと滴る。

 「こんなコンディションで来ちゃいけませんよ~~。ってか、勝つ気ある?」

嘲笑うような口調から一変、扉のノブの上で足を組んで、底冷えするような声を出す。先程までの空虚なピエロとは、まるで別人。間違いない、こいつもアピスだ。

 「…『ネームド』は…ここには8人いるみたいね」

 「リン様!無理しては!」

 「へー。よー頑張りますわ..」

それは一瞬の出来事だった。

ふわっ……

実際に音が聞こえたわけではない。四つん這いで苦しんでいたはずのリンが、時間や空間の法則を破った異常な速度で『エンターテイナー』の前まで手を持っていく。本来発生する抵抗や物理法則を嘲笑うように何も起きない自然な動作。

ピキィ…

 「これでどう?」

その末にやったのは、『エンターテイナー』の顔の前で手の平を横に振っただけ。傍からは、そうにしか見えない挙動。何かが割れるような音が聞こえた気もしたが、空気の様子からも音はなかったハズだ。小さな【波紋】の痕跡を見る程度が限界だった。

 「何をした…?」

『エンターテイナー』が初めて驚愕の感情を浮かべる。リンは簡単に応える。

 「発信機の破壊…?」

 「そんなものがあったのか!?」

 「あと、『神出鬼没』の2つ名は剝奪しちゃったかも」

 「まじか…よ?」

 「……」

ルピカの頭がパンクしてる。オレもだ。

 〔…説明してくれ〕

 「ん。エンちゃんの脳にいったデータを外部に転送されてた。それに経由で【瞬間移動ワープ】してたから、たぶん、もうできない」

 〔後半が分からんな…。データが漏れてることと【瞬間移動ワープ】は無関係じゃ…〕

 「なるほど…。大方、『最強ザ・ワン』か……。僕を躍らせていたってとこか…ハッ……」

 「うん」

ゆっくりと事態を飲み込む。つまり、『エンターテイナー』の感覚とかが他のアピスの元にデータとして送られ、遠隔で発動していたと……?

 「そゆこと」

 「??」

リンは頷いている。ルピカは未だに理解できていないため、簡単に説明する。

 「、エンちゃんを監視して、【瞬間移動ワープ】させてたってこと」

 「…なるほど」

ルピカは。「なぜ分かったのか」、「どういう理屈か」という問いを飲み込んでいた。前者は記憶から推察できたのだろうと、後者はリンも分かっていないと理解したのだろう。オレでも分かるレベルの答えにはルピカも当然辿り着く。

 「それは…まぁいいや。今からのメンバーはどうするんだ?」

 「そんな軽く流せるか?!普通……」

ルピカが言いたくなるもの分かる。どれだけの人生の深みがあるかはオレらは分かっていないが、信じてたものこれまでを失うのは精神的にキツイものだ……。

 「だーーーかーーーらぁ。生き残りたいだけだって。別に『ネームド』のどいつが死のうが、一人もアピス同種がいなくなろうが、生きてさえいれば……!」

 「………」

 「納得いかない?」

 「…正直、まだ不安で…」

 「だよね。だから、はい」

********************

それは[『エンターテイナー』の生まれてから今まで]を要約したようなもの。

********************

 「…う、嘘は…」

 「ない。でしょ?」

 「そーだよ。疑い深いなぁ~~」

 「……」

急に流し込まれて、頭を押さえているルピカにリンは手を添える。

 「ごめん。きつい?」

 「いえ、お気になさらず…」

 「…分かった。エンちゃん一緒でも、いい?」

気持ちゆっくりめで喋るリンに改めて成長を感じる。

 「…分かりました…。根まで真っ黒ってわけでも、なにか裏で糸引いてたりってわけでもないってことですね…」

 「今は大丈夫」

 「自分は、大丈夫ですから。早く行きましょう」

 「やっと信じてくれた~~。最初からこうしてくれて良かったのに」

 「これでよかったと思う」

 「…根拠はなーーんだ」

 「なんとなく」

 「ないんかーーい。明確になんかあるんかと思ったわw」

 「その態度が紛らわしいんだよ…!」

 <…正直、ルピカの気持ちもすごい分かる>

生存戦略生きたがりとは思えない嫌われ煽り言動。おそらくは、嫌われるような言動こそしているけど、実際に傷害や明確な敵対行動をとったのは、他のアピス。そう、こいつに大した罪はない。

 所謂、『嫌味なヤツ』ってだけ。

実害がなければ、裁けやしない。『罪人じゃないやつ』をリンの手元に送ってストレスを与えたいに違いない。

 「とりあえず。僕とリンとシンと~」

 「ルピカも」

 「why?」

 「いいから」

 「そこははっきりしておk」

 「いいの」

 「はぁあああ。もっと知性高い感じで来ると思ったのになんか違うんだよなぁ…」

 「リン様への侮蔑か?」

 「あーもー悪かった悪かった。他、霊は来るのか?」

 「入れないようにしてるんだろ?『エンターテイナー』お前が」

 「入らないだけだろ?理由とかあんのか?」

 「作戦会議で、こうすることにした」

 「だから、理由は?」

 「言い方!」

 「…成長のため。お母さんやお父さんとはきっとお別れになっちゃう。メハも見てるから…。死ねない。この戦いの後も、しばらくは…って…」

下を向いていたリンはゆっくりと顔を上げる。

 「それだけ」

 「…リン様」

 「へーー…。まー、メンツは決まったかな?僕、リン、シン、ルピカだけかな?」

 「ん」

 「んじゃ、開門と行きますか」

正直オレも『エンターテイナー』を好きになり切れないせいでしっくりは来ないが、扉は開く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

処理中です...