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第3章 ~よう
心がか④
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☆sideシン
「僕は喋っていたか??」
「は…????」
「…たぶん、もう一人のほうだった」
「り、リン様??」
「……は…ははは。やっぱりそうか…」
「ど、どういうことですか?」
「…僕は…『エンターテイナー』だ。色々と演じなければならない。そのスキルは意識的にオンオフしていた。さっきのジャングルで僕は声を出していない」
「…初耳の『ネームド』を熊から聞いた。2つ名は【真霊】。仲良かっただって…」
「………」
『エンターテイナー』は一瞬驚く。が、思い出したと顔に現れ、苦い思いを滲ませるように引きつる。白状する。
「…知らなかった。数秒前までは」
「そ、そんなこと!!」
「アピスなら…できるかもね」
「だ、だって、【深侵砕打】で『エンターテイナー』の体に何もなくなったんじゃ…」
「【深侵砕打】は…異物をはじき出すもの…。『エンターテイナー』とアピスの細胞は一緒だから、新しく同化されたら手が打てない」
「じゃあ…どうやって…」
「蚊とかヒルの逆…?は、ハハハ。記憶が変わっていく…書き換えだ……。9人だと思っていたアピスは10人いて、僕はただの『張りぼて』で…。多重人格…ってか?は…は…ははは…」
初対面時にあんな余裕と不敵な笑みを見せていたとは思えないほどの落ち込みようだ。『エンターテイナー』という名前を嘲笑うような仕打ちだ。
「エンちゃん…ルピカ…わたし行くね」
リンは『メガネ』を作り出す。
「これ…戦ってるとこ映しとくから…あとは自己判断で」
「リン様!ついて行っても…」
「…ごめん。次の階の相手に…先にやらなきゃいけない人がいる」
「~~~っ…はい。待っておきます…」
「ありがと。…エンちゃん…ルピカ…待っててね」
「……」
「同情も、励ましも違うかなって…」
「……」
「ごめん。行かなきゃ」
ダッ!
「いってらっしゃい…」
リンは階段を降りていく。弾丸のように早く、無音で降りるのは超人さを浮き彫りにしている。オレは…リンの元にいなきゃいけない。
〔オレもリンの傍に行くな…。何もできなくてすまない〕
「…リン様をお願いします…」
深々と頭を下げられると少々困るものだ。
〔…想いは預かって行くからな〕
「…ありがとうございます」
ポタポタと零れる彼の涙は…無力感からだろうが、そんなことを味あわせたくて連れてきたわけじゃないハズだ。
〔十分、役に立ってるさ…〕
「…………」
彼は頭を下げ続ける。それ以上かける言葉なんてオレにはないから…大人しくリンの元へ行く。『エンターテイナー』もある意味被害者だが、アピスだ…。不思議と裏切るやつには見えなかった。だが、二人してこれ以上かける言葉が見当たらないのだ。ケイトなら違ったかもしれないが、ここはもう進むしかない。ある部屋から不穏な空気が流れている。気を引き締めていくしかない。覚悟を決めよう。
「僕は喋っていたか??」
「は…????」
「…たぶん、もう一人のほうだった」
「り、リン様??」
「……は…ははは。やっぱりそうか…」
「ど、どういうことですか?」
「…僕は…『エンターテイナー』だ。色々と演じなければならない。そのスキルは意識的にオンオフしていた。さっきのジャングルで僕は声を出していない」
「…初耳の『ネームド』を熊から聞いた。2つ名は【真霊】。仲良かっただって…」
「………」
『エンターテイナー』は一瞬驚く。が、思い出したと顔に現れ、苦い思いを滲ませるように引きつる。白状する。
「…知らなかった。数秒前までは」
「そ、そんなこと!!」
「アピスなら…できるかもね」
「だ、だって、【深侵砕打】で『エンターテイナー』の体に何もなくなったんじゃ…」
「【深侵砕打】は…異物をはじき出すもの…。『エンターテイナー』とアピスの細胞は一緒だから、新しく同化されたら手が打てない」
「じゃあ…どうやって…」
「蚊とかヒルの逆…?は、ハハハ。記憶が変わっていく…書き換えだ……。9人だと思っていたアピスは10人いて、僕はただの『張りぼて』で…。多重人格…ってか?は…は…ははは…」
初対面時にあんな余裕と不敵な笑みを見せていたとは思えないほどの落ち込みようだ。『エンターテイナー』という名前を嘲笑うような仕打ちだ。
「エンちゃん…ルピカ…わたし行くね」
リンは『メガネ』を作り出す。
「これ…戦ってるとこ映しとくから…あとは自己判断で」
「リン様!ついて行っても…」
「…ごめん。次の階の相手に…先にやらなきゃいけない人がいる」
「~~~っ…はい。待っておきます…」
「ありがと。…エンちゃん…ルピカ…待っててね」
「……」
「同情も、励ましも違うかなって…」
「……」
「ごめん。行かなきゃ」
ダッ!
「いってらっしゃい…」
リンは階段を降りていく。弾丸のように早く、無音で降りるのは超人さを浮き彫りにしている。オレは…リンの元にいなきゃいけない。
〔オレもリンの傍に行くな…。何もできなくてすまない〕
「…リン様をお願いします…」
深々と頭を下げられると少々困るものだ。
〔…想いは預かって行くからな〕
「…ありがとうございます」
ポタポタと零れる彼の涙は…無力感からだろうが、そんなことを味あわせたくて連れてきたわけじゃないハズだ。
〔十分、役に立ってるさ…〕
「…………」
彼は頭を下げ続ける。それ以上かける言葉なんてオレにはないから…大人しくリンの元へ行く。『エンターテイナー』もある意味被害者だが、アピスだ…。不思議と裏切るやつには見えなかった。だが、二人してこれ以上かける言葉が見当たらないのだ。ケイトなら違ったかもしれないが、ここはもう進むしかない。ある部屋から不穏な空気が流れている。気を引き締めていくしかない。覚悟を決めよう。
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