4 / 11
4_なにはともあれ!
しおりを挟む
4_なにはともあれ!
「なにはともあれよ」
朝。登校時間……、いつもより三十分早く。
桜園学園の最寄り駅、私鉄の桜花駅で。
僕は家からの通学電車から降りて、改札から出たところで待っていた光海さんと落ち合った。
「軍資金と対人能力を得るためにも。アルバイトしなさい、正時君。できる時間的余裕はあるでしょ? 君は帰宅部って言ってたじゃない」
ふむ。他校の生徒に言わせると、意外なことに。
僕らの桜園高校は生徒のアルバイトを禁止していない。
校長の言うには、禁止事項は少ない方が人材というものはよく育つので。
犯罪や自分を痛めつけるようなものでなければ、よく働きよく遊べ、という方針でアルバイトを許可しているそうな。
「行くわよ? 私お腹空いたし」
そう言って、光海さんは僕を先導していって。
妙にお洒落な年季の入った喫茶店に入った。
「おはよーございます♪」
まだ空いている店内に入ると。マガジンラックからスポーツ新聞を取り、店員にそう声をかけると、四人席に向かう光海さん。僕もついていく。
「あら? 浅見ちゃん。いつもありがとうね~」
品のあるおばさまな店員さんが、テーブルに来て注文を取る。
「ブレンド。モーニングセットね。今日はタマゴサンドで頂戴、宮坂さん」
宮坂さんというらしい、おばさま店員に注文をする、光海さん。
「はい、いつものね。マスタード多めのバター塗っておくわ。それから、彼氏君は?」
は? そんな風に店員の宮坂さんに云われて、僕はなんだか頬っぺたが赤くなるのを覚えた。いや、ちがうんだけど。違うんだけど、この状況。普通に見たら、僕が光海さんの彼氏に見えてもおかしくない。そう考えると、なんだかちょっと照れるものがあった。
「宮坂さん。私がこんな、経験不足のお坊ちゃんと付き合うと思うの?」
テーブルに置いたスポーツ新聞の競馬のページを見て。スマートフォンを操作しながら。光海さんは宮坂さんにそう言うと。
「……そうね。浅見ちゃんは、いつも。年上の大人の男性が好きだったわよね」
そんな事を言う店員の宮坂さん。
「まあ、いいか。取り敢えずこの笹倉君には、コーンスープとトーストのセットでも出してあげて。それから、会計をこれで先にやっておいてね」
財布から、クレカのゴールドを出して。宮坂さんに渡す光海さん……。
なんで16歳か17歳の女子高生の光海さんが、ゴールドのクレカなんて持ってるんだろう?
「あと。時間が早いから、今なら店長が手すきでしょ? ちょっと呼んでくれない? 宮坂さん」
そんな風に言いだす光海さん。
「あら? ようやくこの店で働いてくれる気になったの? 浅見ちゃん?」
ちょっと嬉しそうに。そう言う宮坂さん。
「そうね……。そうよね。実は、私じゃなくて、この後輩君を使って欲しかったんだけど……。面倒を見る為にも、私も少しバイトに入ろうかな」
メガネをくいっと押し上げて、そういう光海さんは。そのしぐさが凄く似合っていて、まあ相当に魅力的なんだけど……。
僕は何を考え始めた?
僕と光海さんが仲が良くなって来たのは。僕が蔵山水樹さんという、大きな恋愛的攻略の目標を持っているからで。
心理の研究が、まあ言っちゃなんだけど生き甲斐と言っていた、光海さんの楽しみと一致しただけの話なんだけど。
何を考えている? 僕よ、僕自身よ。
まさか、好みでもないメガネを掛けたこの先輩女子を。
好きになり始めているんじゃないだろうな?
なんてことを自分の心に問うても、なんかはっきりした答えは返ってこない。
でも、なんだろう。
この女子と、一緒にいる時間が心地好くなり始めた自分には。
気が付き始めた僕だった。
* * *
「いいよ。今日の夕方から働きに来てくれよ」
橋本さんという、この喫茶店『ウィル・ベルジュ』の店長さんは、カラッと笑って。僕をアルバイトで使って欲しいという光海さんの頼みを聞き入れた。
「女の子にモテたいんだろ? えーと、笹倉君?」
大人な落ち着いた態度でそう言う、橋本さん。
「なんていうか、特定の相手に。モテたいだけなんですけどね」
僕が頭に手をあてて。かくかくしかじか、つまりは失恋したんですというと。
橋本さんは、右手を僕に差し出してきた。
「ん」
「え?」
「握手だ。君は男になるための第一段階。『失恋』という経験をした。だったら君はもう、私たちの仲間さ。フラれるのが怖くて、うじうじしている子供達とは一線を画する行動をした。君はモテるぞ、今後。顔だって悪くない。喋りに知性もある。この店で働いて、お客さんを相手に。対人スキルを磨きなよ」
そう言って、僕にウインクをして。
「じゃ、今日の夕方。待っているよ。笹倉君。それに、浅見さん」
自分の肩をトントンと叩くと、店の奥に戻って行った。
「なにはともあれよ」
朝。登校時間……、いつもより三十分早く。
桜園学園の最寄り駅、私鉄の桜花駅で。
僕は家からの通学電車から降りて、改札から出たところで待っていた光海さんと落ち合った。
「軍資金と対人能力を得るためにも。アルバイトしなさい、正時君。できる時間的余裕はあるでしょ? 君は帰宅部って言ってたじゃない」
ふむ。他校の生徒に言わせると、意外なことに。
僕らの桜園高校は生徒のアルバイトを禁止していない。
校長の言うには、禁止事項は少ない方が人材というものはよく育つので。
犯罪や自分を痛めつけるようなものでなければ、よく働きよく遊べ、という方針でアルバイトを許可しているそうな。
「行くわよ? 私お腹空いたし」
そう言って、光海さんは僕を先導していって。
妙にお洒落な年季の入った喫茶店に入った。
「おはよーございます♪」
まだ空いている店内に入ると。マガジンラックからスポーツ新聞を取り、店員にそう声をかけると、四人席に向かう光海さん。僕もついていく。
「あら? 浅見ちゃん。いつもありがとうね~」
品のあるおばさまな店員さんが、テーブルに来て注文を取る。
「ブレンド。モーニングセットね。今日はタマゴサンドで頂戴、宮坂さん」
宮坂さんというらしい、おばさま店員に注文をする、光海さん。
「はい、いつものね。マスタード多めのバター塗っておくわ。それから、彼氏君は?」
は? そんな風に店員の宮坂さんに云われて、僕はなんだか頬っぺたが赤くなるのを覚えた。いや、ちがうんだけど。違うんだけど、この状況。普通に見たら、僕が光海さんの彼氏に見えてもおかしくない。そう考えると、なんだかちょっと照れるものがあった。
「宮坂さん。私がこんな、経験不足のお坊ちゃんと付き合うと思うの?」
テーブルに置いたスポーツ新聞の競馬のページを見て。スマートフォンを操作しながら。光海さんは宮坂さんにそう言うと。
「……そうね。浅見ちゃんは、いつも。年上の大人の男性が好きだったわよね」
そんな事を言う店員の宮坂さん。
「まあ、いいか。取り敢えずこの笹倉君には、コーンスープとトーストのセットでも出してあげて。それから、会計をこれで先にやっておいてね」
財布から、クレカのゴールドを出して。宮坂さんに渡す光海さん……。
なんで16歳か17歳の女子高生の光海さんが、ゴールドのクレカなんて持ってるんだろう?
「あと。時間が早いから、今なら店長が手すきでしょ? ちょっと呼んでくれない? 宮坂さん」
そんな風に言いだす光海さん。
「あら? ようやくこの店で働いてくれる気になったの? 浅見ちゃん?」
ちょっと嬉しそうに。そう言う宮坂さん。
「そうね……。そうよね。実は、私じゃなくて、この後輩君を使って欲しかったんだけど……。面倒を見る為にも、私も少しバイトに入ろうかな」
メガネをくいっと押し上げて、そういう光海さんは。そのしぐさが凄く似合っていて、まあ相当に魅力的なんだけど……。
僕は何を考え始めた?
僕と光海さんが仲が良くなって来たのは。僕が蔵山水樹さんという、大きな恋愛的攻略の目標を持っているからで。
心理の研究が、まあ言っちゃなんだけど生き甲斐と言っていた、光海さんの楽しみと一致しただけの話なんだけど。
何を考えている? 僕よ、僕自身よ。
まさか、好みでもないメガネを掛けたこの先輩女子を。
好きになり始めているんじゃないだろうな?
なんてことを自分の心に問うても、なんかはっきりした答えは返ってこない。
でも、なんだろう。
この女子と、一緒にいる時間が心地好くなり始めた自分には。
気が付き始めた僕だった。
* * *
「いいよ。今日の夕方から働きに来てくれよ」
橋本さんという、この喫茶店『ウィル・ベルジュ』の店長さんは、カラッと笑って。僕をアルバイトで使って欲しいという光海さんの頼みを聞き入れた。
「女の子にモテたいんだろ? えーと、笹倉君?」
大人な落ち着いた態度でそう言う、橋本さん。
「なんていうか、特定の相手に。モテたいだけなんですけどね」
僕が頭に手をあてて。かくかくしかじか、つまりは失恋したんですというと。
橋本さんは、右手を僕に差し出してきた。
「ん」
「え?」
「握手だ。君は男になるための第一段階。『失恋』という経験をした。だったら君はもう、私たちの仲間さ。フラれるのが怖くて、うじうじしている子供達とは一線を画する行動をした。君はモテるぞ、今後。顔だって悪くない。喋りに知性もある。この店で働いて、お客さんを相手に。対人スキルを磨きなよ」
そう言って、僕にウインクをして。
「じゃ、今日の夕方。待っているよ。笹倉君。それに、浅見さん」
自分の肩をトントンと叩くと、店の奥に戻って行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる